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わざと一駅早く降りて歩く時に聴きたい曲

FMラジオ局 J-WAVEによる大学生・専門学生コミュニティ「WACODES」。

WACODESメンバーがシチュエーションに合わせて選曲し、プレイリストを作るこの企画。音楽やカルチャーが好きなWACODESの選んだ音楽が、日常の名もなき瞬間を彩ります。

今回のシチュエーションは

「 わざと一駅早く降りて歩く時に聴きたい曲」

シチュエーションに合わせたエッセイとWACODESによる選曲理由を合わせてご紹介します。

〈各駅停車〉

余韻が残っていた。終電間際の代々木上原駅。携帯をポケットに入れて、本を取り出す。新書カバーを買いたいと思っているが、そのカバー代で新書を買えてしまうため、結局先送りにしたままだ。

ーーお待たせいたしました。1番ホームに急行藤沢行きが10両編成で参ります。次は下北沢に止まります。危険ですから、黄色い点字ブロックの内側までお下がりください。

到着した電車は既に満員だった。人が乗れるスペースはもはや残されていないように見えるが、人々はみんなお構いなしに乗り込んでいく。身をよじり、どうにか本を読む空間を確保した。

 効率という言葉が世に氾濫しています。経済効率が重視され、いかに無駄を省いて生きていくかが重要視される社会になりました。心の調整弁であった人生の余白は、次第に「埋められるべき対象」としてその姿を変えていったのです。
 そうした余白の色付けはやがて、生活の充実と結びつけられるようになりました。予定が外出と同義に扱われ、「予定があること」と「充実した生活」が等式で結ばれるこの社会では、心を休める時間はもはや存在しません。常に何かに追われ、他者からの視線を意識しながら生活していかなければならないのが現代なのです。

ーーまもなく下北沢、下北沢です。下北沢の次は、経堂に止まります。井の頭線はお乗り換えです。

逃げるように電車を降りてエスカレーターへ向かった。「エスカレーターでは立ち止まろう」というポスターが掲示されているその横を、スーツを着た男性が駆け上がっていった。

乗り換えた各駅停車は驚くくらいに空いていた。右から3番目の席に腰を下ろし、再び本を開いた。

 忙しいことが一種のステータスとなるこの社会で、人々はいつも急いでいます。なぜ急いでいるのか、その理由を知っている者はいません。ただみんなが急いでいるから自分も急ぐ。みんなが余白を埋めているから自分も余白を埋める。そのようにして心の”あそび”が失われ、ますます窮屈な世界が構築されていきます。
 SNSは私たちの世界を一変させました。他人の取り組みや行動が可視化され、私たちは常に比較対象と同居することを余儀なくされています。良い意味で井の中の蛙になれたあの頃とは違うのです。自分より上の存在が嫌でも視界に入ってしまうがために、自分への自信を失ってしまう人が少なくありません。「自己肯定感」や「コミュ障」という言葉が広く普及したのも、これと無関係ではないでしょう。終点がどこかもわからなければ、正しい道がどれかもわからない。そんな中で競争させられ、焦らされ、訳も分からず急いでいるのが今の私たちです。

ーーまもなく世田谷代田、世田谷代田です。世田谷代田の次は梅ヶ丘に止まります。

 終わりのない効率の追求は私たちをいっそう画一的な存在へと変化させました。「自分らしさ」「個性」という言葉が称揚される一方で、効率性という単一の基準が幅を利かせ、私たちはますます同質的になっています。
 効率を求め、余分なものをカットした先に一体なにが残るのでしょうか。無駄を徹底的に排除するのであれば、生まれた瞬間に死ぬのが最も合理的だという結論が導かれてしまいます。人生に終わりがある以上、この世のあらゆる事物は究極的には無駄なものです。それを認識した上でどのように人生という暇を潰していくか。そのような発想の転換が今の私たちには必要なのではないでしょうか。

気づいたら一駅早く降りていた。
線路沿いの道をゆっくりと歩く。

各駅停車でもいい。
時には乗り換えても、一本見送ってもいい。
自分のペースでゆっくり、確実に進んでいけばいい。

高架を走る急行列車は、なぜか忙しそうに見えた。


書いた人:ぎんじ(9期)
ひとこと:燦然と輝くドコモタワーを見るたびに、その余裕を代々木上原の電波に回してくれと思っています。

〈選曲理由〉

・In The Stone / Earth Wind & Fire
Live at Velfarreという六本木でのライブを収録したアルバムの1曲目。このアルバムを聞くために何回も遠回りして帰ってます。初めて聞いた時は美しくて自然と涙が出ました。
by 琥珀

・Do Nothing Day / Candace, Jeremy
生活の速度を落としておきたいので
by ザズー

・No matter / EXO
思わず歩き出したくなるような春の雰囲気に、この曲の弾むリズムが似合うと思ったから。歌詞も、「どこでもふっと出発してみよう 心行くまま」というような、前向きなエナジーに溢れているのも選曲理由の一つです。
by スプリングウーマン

・グッバイ・アイザック/ 秦基博
勇気づけられるし、思わずリズムを刻んでしまう爽快な一曲!「そう試されてる いつまで運命に逆らえないまま?」という歌詞が刺さります。
by ぎんじ

・Teach Your Children / Crosby, Stills, Nash And Young
優しいメロディが、歩いてる自分と気持ちいい春の景色とがゆっくり溶け込み合うときにぴったりです
by k²

・満ちてゆく / 藤井風
外の空気を吸い込みながら、足元に力を込めて歩きたくなります🎧この世界には素晴らしい景色がたくさんある🌙
by chisato

・ミッドナイトバス / ラッキーオールドサン
一駅とは言わず、何駅でも先を照らしてくれる曲です。
by ゆうしょう

・横顔 / 大貫妙子
すきなひとのことを想いながら歩きたくなる曲です
4210

・SAMPO / くるり
あなたのための春なんです!
by けい

・Sister Ray / The Velvet Underground
17分だからちょうど良い
by ナマ

・ミュージック / サカナクション
生暖かな春の夜道に、イヤホン爆音で聴きたい曲です。
by のりたま

・Glue song / Beabadoobee
春っぽくて可愛い曲☘️
by KIKI

・Young Folks / Peter Bjorn and John
歩くからにはテンション上げないと。
気分は、アッパー・イースト・サイドに住むお騒がせセレブ。
who am I?
That's one secret I'll never tell.
You know you love me…
XOXO,
P.S. わざと1駅前で降りたら、stranger things のFinn君と偶然遭遇しました!!
by 脳内花畑

・STAY TUNE / Suchmos
少し早歩きに軽快に歩くのにぴったり。
すごい有名な曲だけど、やっぱりいいよね。
早くしないと電車の扉が閉まっちゃう!
by POLLEN

・Cruel Summer / Taylor Swift
これから気温が上がる中で聞きたい曲です
by みく

・TOGETHER! / JANNNABI
천 번을 접어야지만 학이 되는 슬픈 사연 🕊
by 4年間ありがとう

#WACODES#プレイリスト


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