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課題と収穫の見えたACL予選…

タイでの集中開催となった今年のACL予選。ヴィッセル神戸は傑志(香港)とブリーラムユナイテッド(タイ)との予選を戦い、2勝2分の勝ち点8で予選首位通過を決めた。

ロティーナ新監督となって迎えた4試合を首位でグループを通過できたという結果、数多くの選手を公式戦の舞台で起用できた選手起用については好材料が見られた。一方で、攻守両面において今後の試合を見越したうえでの課題も散見された。

まずは好材料から。
リーグ戦ここまで4分6敗と10試合勝ち無しの厳しい状況でタイヘ向かうこととなった神戸。そんな中で4試合無敗で本大会予選を首位通過できたことはプラスに捉えてよいだろう。勝ち癖・負けない癖をつけることは中々勝てていないチームにとって重要な要素だ。予選首位通過が既に決まっていたMD6の傑志戦でも最後まで得点を奪いに行く姿勢が選手起用・戦い方から見えた。
そして、選手起用でも新しい・面白い側面が見られた。4月に相生学院高校より加入が決まった日高、今シーズンユースより昇格した尾崎、中々これまで出番に恵まれていなった井上、櫻内といった選手が積極起用されるなどこれから続く公式戦に向けた選手層の厚みを持たせたいという新監督の意図も感じ取れた。特に予選最終戦に公式戦初出場を果たした尾崎は面白い存在であると感じた。CBとして身長が特段高いわけではないものの競り合いの強さ・フィジカルの強さがある。また、ビルドアップ時の球離れもスムーズでSBにつけるパスは強く、正確なボールが多く、ピッチコンディションの荒れを感じさせなかった印象だ。こうして選手も含め、選手の組み合わせについては怪我人の状況も含め、新監督も試行錯誤しているようだが、こうした側面も相まってか、攻守両面では課題が見えた4試合であった。

次は課題を見てみる。
守備のシステム構築を最優先事項としてチームを再構築中のロティーナ新監督。守備における約束事として、まずはブロックをしっかり作り自分の立ち位置をスタートポジションとして戻ることを最優先に90分守ること、無理に前からプレスをかけることなく、前線からのプレスのスタート位置を相手を見て変えること、基本内から外にプレスをかけ、サイドでボールを取り切ることが基本原則であるように見えた。この約束事はACL直前のセレッソ戦から取り組み、少しずつ形として強度も浸透してきているように感じる。ボールを取られて即時奪回できるシーンは少ないもののカウンターを受けるシーンはこれまでよりも減っている。それは各選手が自分の立ち位置・ディフェンスにおける役割を理解し、実行できている結果の表れではないかと思う。MD4のブリーラム戦では上記した形が実となり、無失点で試合をクローズできたのではないか。
また、攻撃ではSB・SHが幅を取り、相手を広げる、外でできた起点から連携あるいはクロスでチャンスを作るかたちが基本ベースのようだ。MD2の傑志戦での郷家、井上の得点はいずれも上記した形が実となり、ゴールとなっている。

ここから見える1番の課題としては、守備の基本原則に固執しているが故、攻守両面におけるトランジションのスピードが遅いことだと考えている。ボールを握れる選手が多いが故の弊害がここに出ている。ブロックを敷いてうまくボールを取れたあとの攻撃への切り換えのフェーズで無難な・リスクの少ない選択が多く、いい攻撃へとつながらないことが多いのだ。上記の守備ベースの戦い方を志向しているため、仕方ないと言ってしまえばそれまでだが、良い攻撃が良い守備へとつながることを考えると攻撃への切り換えでスピードをあげられる選手が鍵を握ると言えるのではないだろうか。山口や中坂、井上、汰木といった選手は攻撃時に1段ギアを上げることのできる選手たちだ。イニエスタ・サンペールといった選手が戦線を離脱している今、1本の縦パスでギアを上げることのできる山口、井上、ドリブル突破で1枚2枚と局面を剥がせる汰木、中坂といった存在はこの課題を解決するキーパーソンではないだろうか。そんな中、今大会で輝きを見せたのは汰木だろう。サイドの幅を取りながら中へのカットイン、外への侵入からクロス供給と幅広いプレー選択ができるようになったことで、神戸の攻撃に幅を持たせることのできる選手だ。MD2の決勝点となった井上へのアシストも、MD3のブリーラム戦でのチーム4点目も外・中の使い分けから相手を攪乱し、しっかりと結果を残した。

攻守におけるスピード感が持てていないということは選手間の瞬間瞬間の振る舞い方のギャップがあるということ、すなわちチームとしてのバランスが取れているとは言えない状況であると言える。私の見解としては課題がまだまだ残ったと捉えているが、新指揮官の元、リーグ戦の再開と共に更なる高み、目の前の一勝を積み重ねていくことを期待している。