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主役は<漢江>!◆「漢江の怪物」(3)ポン・ジュノ監督の反骨精神

STOP THE WAR!
NO NUCLEAR WEAPONS!

【↑トップ画像】グエムルは追手をのがれ、広大な漢江を自由に泳ぎ回る。

最後の最後まで、漢江づくしのサスペンス

<グエムル>は、人間を食用とする<怪物>と化して<漢江>の岸辺で憩う家族やカップルに次々と襲いかかります。
 
そして、<漢江>の岸辺の小屋で売店を営む主人公(扮するはソン・ガンホ)の一人娘(コ・アソン)が<グエムル>に拉致され、<漢江>の側溝に身を隠す娘を家族が一丸となって奪い返そうと、逆襲に転じるストーリーは、まるで<漢江>そのものが主役であるかのような印象を抱かせます。
 
ここで、<漢江>が主役となって登場する場面をいくつかご紹介します。

(↑)姪を救出するため、漢江の側溝に入ろうとするペ・ドゥナ。
(↑)グエムル捜索のため、危険をかえりみずに漢江の橋の点検用通路を渡る。
(↑)姪を助けようと、漢江の河岸の草むらを必死に移動するペ・ドゥナ。
(↑)グエムル撃退のため戒厳令下の漢江に軍隊と警察が出動する。北朝鮮との戦闘を想定した演習さながらだ。
(↑)アメリカ政府のフェイクニュース(ホルマリン投棄を隠ぺいしたウィルス説)に煽られ、漢江を疾走する韓国政府の細菌部隊と防疫要員を乗せた高速艇。

<反骨>と<ブラックリスト>

ポン・ジュノ監督は、1980年代の軍事独裁政権打倒の民主化運動世代であり、保守政権から長い間、危険人物指定のブラックリストに載せられていたと言われています。
 
したがって、アメリカに対してはもちろん、アメリカと軍事同盟を結び、国民を抑圧してきた保守政権に対し<反骨精神>をうかがわせるプロローグに始まり、最後まで映画「グエムル」には社会批判の意識が貫かれています。
 
ですから、<グエムル>は単なる怪獣映画には終わらず、朝鮮戦争後の3世代家族のキャラクターもくっきり描かれていて(*次回)、何回観ても飽きのこない作品になっているのだと思います。
 
(つづく)


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