【短編 G Story】 遺影
玄関のドアを閉めた多佳子は、ここんところ、そう、ひと月ぐらいのことだが、こうやって閉めるたんびに首をかしげながら鍵をかけている。いままでとは、明らかに様子が違っていて、閉めきろうとするのにプラスアルファの力が要るからだ。ドアに加わる圧でキュンと、尻上がり調に擦れた音が残る。開けるとき、弾むようにビョ~ンと開く。その都度(急に、ドアの建てつけ、悪くなってないかしら?)と、彼女の面持ちが心情を表す。
この新しくないアパート住まいが、何年目かに入っている。どうせまた、じきに夫・