見出し画像

【毎週ショートショートnote】放課後ランプ(娘)

朝一番に教室に着くと、銀のランプを机に置いた。曽祖父がエジプトで買ってきた骨董品だ。

欲に塗れた手で幾度となく擦られてきたのだろう、かなり黒ずんでいる。

先人達を責めるつもりはない。私も自らの欲を満たすために、ランプの精を呼びだしたのだから。

ランプの横腹に指を添えてゆっくりと撫でると、先端から赤紫の煙が立ち昇った。

煙は隆々と筋肉の塊に変化し、髭を携えた魔神が姿を現した。

私を見下ろし、(また金にならない客が来た)とでも言いそうに辟易としている。

「ヨージー、今日もお願い」

魔神は髭を捻って、頭を掻いた。

「『3年間、教室で過ごす時間をなくして欲しい』というお前の願いは叶えてやるが、本当にこのままでいいのか?」

「いいの、やって」

魔神が指を鳴らすと、時計は一瞬で午後四時を指した。オレンジの夕陽がランプに反射している。

こうして、私はクラスメートに会わずに学校生活をやり過ごしている。

学校は嫌い。

でも、放課後の部活があれば生きていける。



【毎週ショートショートnote】放課後ランプ(母)と連作です。

#毎週ショートショートnote

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?