人が本を買うのはなぜか

 躊躇なく本を買う理由、それは元を取れると確信しているからである。
 要は、値段以上の「何か」を本を買うことで得ることができているという確信があるのである。
 この「何か」について説明するのは非常に難しい。
 僕はテーマパークに入るのに払うお金はもったいないと思うのだが、本に対してはそう思わない。なぜかと言えば、テーマパークは娯楽だからだ。娯楽というものは楽しまなきゃいけないものだ。僕はそれは嫌いである。
 つまり本に払われるお金というものは、その自発的な個人の活動に対してのお金なのである。
 テーマパークというものはなぜかいつも混んでいる。テーマパークを貸し切りにして、自由に遊んでいいよ、と言われてもあまり面白くないだろう。テーマパークというものは本質的に他人の真似をしたい、という欲望に支えられて成立しているからである。
 一方の「本」はといえば、そこに「真似」の要素はほとんどない。本屋が繁盛しない理由も実はここにある。「読書」というのが絶対に真似できない行為であるがゆえにそこには「金で買えない価値」があるのである。
 つまり読書することで、人はより自分らしく生きられるということだ。人が本屋に通う時のウキウキした気持ちの大半はこれで説明できるのではないだろうか。

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