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【書評】本当に”使える”哲学の学び方「武器になる哲学」山口周著

僕が初めて哲学に出会ったのは高校生の頃です。

図書室にあった「ツァラトゥストラはかく語りき」というメンヘラ臭満載のタイトルに目を奪われ、借りて読んでみました。

もちろん内容を理解できる訳もなく、返却期間まではアクセサリーとして女子の前で表紙が見えるように持ち歩くだけでした。

大学生になりもう一度哲学を勉強したいと思い、ラッセルの「哲学入門」、大井正さんの「世界十五大哲学」、小川仁志さんの「哲学用語辞典」などを読み漁り、哲学に触れているというナルシズムだけは立派に育ちました。

弟にドヤ顔でキルケゴールの半生を語るヤバめな大学生活でした。

今回は、哲学を学びたいけど入門書で挫折してきた私のような方々にうってつけの本をご紹介致します。

山口周さんの「武器になる哲学」です。

この本は、人生の悩みや意思決定に実際に役立つ哲学のみを扱っています。

私達の具体的な悩みに対して、哲学だったらこんなふうに考えますよ。という事が分かる本です。また、哲学の歴史には触れず、50個の哲学コンセプトがオムニバス形式で書かれているため、興味がある部分だけ読んでも楽しめます。

個人的にはプロローグの「なぜビジネスパーソンが哲学を学ぶべきか」の部分が特に印象深かったので、簡単に内容を紹介させていただきます。

ビジネスパーソンが哲学を学ぶ理由は4つあると筆者は述べています。

1.状況を正確に洞察する
2.批判的思考のツボを学ぶ
3.アジェンダを定める
4.二度と悲劇を起こさないため

1つずつ見ていきましょう。

1.状況を正確に洞察する

筆者はコンサルティングを行う際、哲学のコンセプトを目の前の状況に当てはめて物事を考える事が多いそうです。

例えば一見新しいと思えるアイデアも、弁証法の枠組みを使う事で「古いシステムの復活」という捉え方も出来るようになるといったように。

目の前で起きていることがどのような動きで、これから何が起きるのかを深く考える上で哲学が役に立ちます。

2.批判的思考のツボを学ぶ

新しい考え→否定→再提案の連続で進化してきた哲学と同様に、ビジネスにも批判的思考が必要です。

特に変化が大きい現代において、今までの考え方を批判的に捉えて何かを「終わらせる」スキルを、哲学から学ぶことができると筆者は述べます。

3.アジェンダを定める

ビジネスに大事なイノベーションは、課題を解決する事から生まれます。

疑うべき常識を見つける選球眼、課題を設定する力を哲学から学ぶことが出来ます。

4.二度と悲劇を起こさないため

過去に起きた悲劇から教訓を学び取り、悲劇を起こさないための教訓を哲学から学ばなければならないと筆者は述べます。

哲学をどのように学ぶべきか


また、本書では私達が哲学に挫折してしまう理由と、そうならないための心構えも教えてくれます。

筆者は哲学を、まずざっくりとした2軸で捉えます。

問いの種類…Whatの問いか、Howの問いか

What…世界はどのように成り立っているか?
How…私達はどのように生きるべきか?

Whatの問いとは、

・世界は「火」「水」「土」「空気」で出来ている
・神の見えざる手によって経済は動いている 

などといった事です。これは現代では否定されていたり古くなってることが多く、あまり参考になりません。

我々は原子の存在も、国家の介入の必要な事も既に知っており、Whatからの問いに対しては「ふ~ん」としか思えないわけです。

学びの種類…アウトプットからの学びか、プロセスからの学びか

上記の知識は、いわば先人たちのアウトプットを学んでいるに過ぎません。
しかしだからといってエンペドクレスやアダム スミスから学ぶことはないのか?

そうではありません。筆者は、プロセスからの学びの必要性を訴えます。

彼らの主張を通じて、当時その世界にどのような課題があり、世界をどう捉え、どのようにその考えに至ったかを知ることこそが重要だといいます。

以前出口治明さんの「本の使い方」でも同様のことが述べられていました。古典を読む意味は、先人の思考の追体験にこそあるという訳ですね。

この本を読んで、私も分厚くて敬遠していた哲学や経済学の原著を読むようになりました!

本書のメインは実際の50のキーコンセプトですが、そちらの内容は是非本書を手にとってお楽しみいただければと思います。

それでは!



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