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【書評】脱ITオンチのはじめの一冊「いまさら聞けないITの常識」岡嶋裕史著

様々な領域にまたがり、変化の激しいITに関する知識をアップデートし続けるのは大変です。

ガチガチ文系の私にとって、知識が体系立ってないと不安です。土台が無くフワフワした知識は、すぐに頭から無くなってしまうんじゃないかと…。

この本は、現代に必要なITの知識が、包括的に、かつ過去から未来へのつながりを意識できるようにまとめられています
僕のようなサーバーとクライアントの違いも分からなかったIT音痴でも、これからのビジネスに必要なITの知識を身に着けることが出来ます。

最初の章ではITのトレンドの変化について書かれています。筆者によると、ITは社会の流れに大きく影響を受けながら変化を続けているそうです。

経済の根源である希少性(Scarcity)をどのように解消していくかのアプローチが、独占から共有へと変化するとともに、ITも所有から共有へ点から空間へと変遷しています。

シェアリングエコノミーの台頭により車が所有から共有へ、ソフトウェアがパッケージ型からクラウド型へ移行していきました。

同様に、PCは巨大な筐体からモバイル化へ、キーボードでの操作(CUI)から手軽なマウスでの操作(GUI)へと変化しています。

この変化を押さえておくだけで、現在のITの立ち位置が分かります。

また、次の章ではITを使った業務改革について、日本でIT化が進まない問題点や今後の流れを説明しています。

我々は、業務のシステム化=IT化だと考えていますが、ITを用いないシステム化もあるとの事です。そこを曖昧にしてしまっている事が、業務改革の妨げることがあります。

上からの指示で「これもIT化!あれもIT化!」と騒いでITを導入した結果、かえって現場が混乱し、大失敗に終わる例は多くの企業で見られます。

ITは万能ではなく苦手な分野もあり、システム化の中でもITを使う部分と使わない部分を判断する必要があります。

例えば、ハンコを押す作業をシステム化する!となった場合、目的は何か?を考える必要があります。

部署間で書類を回す際に、ハンコをデジタル署名に変えることで生産性が向上すればよいのですが、ハンコを押す事それ自体が重要な場合、それぞれの部署がITシステムを導入したにもかかわらず、受け渡しの際に電子ファイルを紙で印刷→ハンコを押す→PDFにしてファイルで次の部署へ渡すといった非効率が生じてしまう事になります。

ITリテラシーが欠如しているがために、多くの日本企業ではこういった事を恐れて誰も改善に踏み切らずIT化が進まないといった悪循環が起きています。

最近では、システム化が浸透した結果、ソフトウェアの標準化が進みました。なかでも、ERP(Enterprise Resource Planning)で、会社の仕組み自体をソフトに合わせて作り変える動きがあります。複雑な業務の手順を、ERPに沿って可視化すれば(それ自体が非常にタフな仕事ですが…)、組織全体の最適化がはかれます。

最後に筆者は、これからのIT人材の育成に触れています。

来年度より、小学校でプログラミング教育の必修化が始まりますが、全員がコードを記述出来るようになって何の意味があるの?と思う人もいるでしょう。全員がプログラマーになる訳ではないですしね。

しかし筆者によれば、プログラミング教育の本質はそこではないと強調しています。プログラミング教育とは、今後ますます重要になってくる、答えのない問題を解決するという行為そのものだからです。

プログラミングで行うことはざっくりいうと、問題の発見→現実とのギャップを把握→解決策の思考→実行というフローを繰り返すもので、プログラミングそのものが論理的思考を高める訓練なのです!

普通なら黙って見過ごしてしまうちょっとした不便や不自由に目を向け、理想と現実を把握し、差分を埋め、解決していく…こういったプロセスをみんなが踏んでいけば、世の中が良くなっていくと筆者は期待しています。

また、これは子供だけではなく大人にも当てはまる事で、リカレント教育の重要性についても述べています。腰を据えた学びが必要な大人が、日々の仕事に追われて学ぶ機会を得られない事に警鐘を鳴らしています。

こういった事実に気づいた我々が少しづつでもITを学び、成長していけば、今後一緒に働くことになるITネイティブの子供達といい相乗効果を発揮して働くことが出来るのではないでしょうか?

本書は他にも、IT最先端のキーワードであるIoT, AI, ブロックチェーンについても解説しています。

最後に索引もついているので、ITの辞書的な役割として手元に置いておきたい一冊です。

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