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「にんじん大好き!」が少女のトラウマになる理由

ようやく買いました。松本洋子先生の「魔物語」。これ今Amazonで4,400円ですよ。どうしちゃったんだよ日本は。

なかよし史に残るトラウマ付録オムニバスとして名高い今作ですけど「にんじん大好き!」がもう今読んでも怖い。

怖いというかえげつない。講談社はいったん編集会議のメンバー見直して、マジで。ロシアンルーレットでもしながら会議してるタイプのサイコのあつまりなんかな? ちょっとまずはざっくりあらすじを書かせてほしい。

※今回は閲覧注意とさせてください。特に心臓に持病がある方、15歳以下の方はご遠慮を。

にんじん大好き!のあらすじ

主人公はたかしちゃん。まだ小さい男の子です。

ある夕食でたかしちゃんはにんじんを残してしまいます。すると「にんじんも食べなさい」と叱るママ、「嫌いなもんを無理に食べさせなくてもいいやん」とフォローするパパ。でもパパまでママに怒られてシュンとしてしまいます。

たかしちゃんは神様に「にんじんを食べられるようにしてください」とお願いします。

すると次の日の食卓はすべてにんじんになっていました。グリルの上にもサラダボウルの上にも、すべてのメニューがにんじんになっていたのです。

たかしちゃん呆然。「ママが嫌がらせしてる!」と思いますが、ママは「どうしたの?大好きなハンバーグよ!?」と。

たかしちゃんが勇気を振り絞ってにんじんに齧り付くとなんとハンバーグの味ではないですか! 他のにんじんはパンの味!食べるまで料理が分からないのは難点ですが、当てっこゲームみたいで楽しい! とたかしちゃんはいろんなにんじんをぱくぱく食べます。

そしてついに本物のにんじんを食べられるように! ママに褒められるたかしちゃん。うれしいね! やったね!かみさまありがとう!

ただ、その後、たかしちゃんはテレビで食レポ番組を見ますが、どれもにんじんに見えるんですね。で、究極道で散歩してる犬とかもにんじんに見えてくる。この辺りからちょっと不穏な空気。

で、ある朝起きるとベッドの隣に巨大なにんじんが見えるわけです。もうそのころたかしちゃんは、にんじんが大好きなのでぱくっと食べるんですね。しかもこれが美味。「こんなにおいしいにんじんなんてはじめて!」と感動する。

でお腹いっぱいになったたかしちゃんが1階に降りると、巨大なにんじんが新聞を読んでる、まぁそれお父さんなんですけどね。

で最後のカットがたかしちゃんの部屋の真俯瞰カット。身体中を食べられたお母さんが絶命しているわけです。

「こんなおいしいものあったんだ」にもうトラウマが全部集約されてる話

トラウマすぎるでしょう。これが1993年の「なかよし」ですよ。だれと なかよし なんだおい。講談社おい。

いや、もうこの怖さは最後のたかしちゃんのセリフに集約されていると言っていいんじゃないですかね。人間の味に超感動するんですよ。こんな幼子が。死ぬほど無邪気な顔で。

最後のカットはショッキングではあるけど、怖くはなくて、少女漫画史においてカニバリズムって意外にも親和性が高いものです。小坂理絵さんの家族の食卓とか、山﨑さやかのマイナスとか。

ただこれ幼くて可愛い子どもが親を食べちゃう。しかも無邪気で、人肉美味宣言かますっていう、ものすごい業を背負っちゃう展開が怖い。同じ年齢くらいの子が読むと、かなりきついですよね。ニッコニコなのよね。このシーンどんな顔で描いてたんやろ。

あとたかしちゃんの咬合力がクロコダイルレベル

あとたかしちゃん、歯茎がアレだよね。超絶強靭だよね。これお母さんの顔の右半身いっちゃってるからね。頭蓋骨ごとぱくついちゃってるからね。顎がもうクロコダイルですよね。

しかも返り血を浴びてないですからね。これ、相当なスピードで噛み切ってますよ。パクじゃないよね。ックっ!くらいのスピードでいってますからね。

まぁ確実にトラウマ漫画ですんで、おすすめはできないけど、当時の少女漫画カルチャーもなんとなく分かるのは楽しいです。このほかも小坂理絵先生、犬木可奈子先生、小野不由美先生などなど、当時のホラー少女漫画をもっと掘りたい気持ちになりました。

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