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ジュウ・ショのサブカルマンガマガジン

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マンガについてサブカルチャー的な視点から紹介・解説。 学術書とか解説本みたいに小難しくなく、 極めてやさしく、おもしろく、深ーく書きまーす。
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2020年12月の記事一覧

浅野いにおという「サブカルメンヘラ生産工場」について

浅野いにお先生の漫画の世界には、ありとあらゆるコンプレックスが飽和している。さらに強烈な入子構造がある。最終的に「結局、私は何者なのだ」と謎の哲学的な感覚を覚えさせるのが特徴だ。 基本的に浅野先生は斜に構えて人を描くので、主人公はみな自己承認欲求が足りない。なので、周りの普通の人をなんか危ない人のように見ている。 例えばジャニーズオタクは「盲目的なミーハー女」だし、公園の営業マンは「暑いのに仕事で辛い思いをする男」だ。主人公はそれを俯瞰的に見るわけだが、実は主人公こそが最

メタモルフォーゼの縁側・1巻を読んでの等身大の感想

超今さらですけど、話題になった「メタモルフォーゼの縁側」を読みまして。すごく気になってたんです。なので冒険心も相まって買ってみました。1巻でテーマがまだ見えてないので、等身大で感想を書いてみます。 メタモルフォーゼの縁側・1巻のあらすじ 雪さんは75歳。夫を既に亡くしていて現在は一人暮らしだ。お気に入りの喫茶店に行くと潰れていたので、1年ぶりくらいに書店に入る。料理本を買おうとして店員に書架の場所を尋ねる。教えてもらった後にふらっと漫画を見てBL漫画の表紙が美しくて惹かれ

「にんじん大好き!」が少女のトラウマになる理由

ようやく買いました。松本洋子先生の「魔物語」。これ今Amazonで4,400円ですよ。どうしちゃったんだよ日本は。 なかよし史に残るトラウマ付録オムニバスとして名高い今作ですけど「にんじん大好き!」がもう今読んでも怖い。 怖いというかえげつない。講談社はいったん編集会議のメンバー見直して、マジで。ロシアンルーレットでもしながら会議してるタイプのサイコのあつまりなんかな? ちょっとまずはざっくりあらすじを書かせてほしい。 ※今回は閲覧注意とさせてください。特に心臓に持病

漫画家・山田花子が描いた弱者の世界の素晴らしさについて

山田花子 というこれ以上ないほど記号めいた名前の漫画家を知っているだろうか。本名は高市由美、圧倒的で誰も真似できない世界観を持つ、まごうことなき天才だ。 彼女の作品はまさに唯一無二のギャグ漫画だ。ここまで人間を見ている漫画家は稀有である。社会的弱者はもちろん強者も読むべき作品なので、かつて山田花子が暮らした東中野にてきちんと文章を書きたい。 山田花子の24年を書いてみる 山田花子は1967年に誕生する。ちなみに姉にはガロの編集者として根本敬や蛭子能収、ねこぢるなどの作品

「ボボボーボ・ボーボボの澤井啓夫の父は国文学者(名誉教授)である」というB級ホラー

「その人がどんなニンゲンかを知るためには、周りの友人を見るといい」とはシュルレアリスムの創始者・アンドレ・ブルトンの言葉だ。 わたし個人的にはその両親がどんな人かを知るといい、という説もまた信じている。人の脳みそは3歳までに形成されるらしい。また10歳までに感覚や価値観なんかが決まってしまうともいわれる。 今回は親が育てる環境と子どもの育ち方について「ボボボーボ・ボーボボ」の作者・澤井啓夫を例に考えてみよう。 ボボボーボ・ボーボボというこれ以上ないくらいのアホマンガ

古谷実という作風が逆転し過ぎて病気か?といわれた漫画家について

古谷実といえば「稲中卓球部」のイメージが強いはずだ。あの奇妙奇天烈なコロコロコミック的ギャグはもう圧巻。とにかく終始アホがふざけまくる。一向に止まらん。あのギャグ漫画でブレイクした漫画家である。 しかし2作目の「僕と一緒」、3作目の「グリーンヒル」から少し不穏な空気を漂わせ始め、かつ巻数も短くなり4作目の「ヒミズ」で一気にダークサイドに堕ちる。 稲中のファンはその後の作品を見て「おいどうした古谷! お腹痛いのか? 休め!」と思ったに違いない。そのあまりの方向転換に「古谷実

古屋兎丸の「Palepoli」はマンガの可能性を拡げた名作

古屋兎丸といえば何を描いた漫画家か。「帝一の國」「ライチ光クラブ」……いやいや「Palepoli」でしょう。いつ読み返しても新しい、とんでもない4コママンガ「Palepoli」だろう。 リスクを承知で断言します。Palepoliは、発刊以来、絶対に古くならない作品。たぶん200年後の人類も、200年後の言葉で新しいって感動するはず。 今回はそんな「Palepoli」の魅力について書く。 人生のベスト5冊に絶対入る作品 「Palepoli」は昔、友人に勧められて読んでび

【誰得】土日で買った漫画を紹介します【フェス】

基本的に土日は100%近く、書店で読み物を買う。ちょうど本棚を新調して、さらに棚を無印で追加注文したこともあって、最近はまた拍車がかかっているように思う。 今回は土日企画として先週と今週で買った本を紹介する。胸を張って「誰が読みたいんじゃ」という企画をする勇気。誰得フェスを開催する。 丸尾末広『天國』 丸尾末広先生の画業40周年企画として、ついこのあいだ出た作品。まず珍しい金帯ですよ。そして表紙の題字も金抜き。日本のマンガ界を牽引してきた丸尾先生へのリスペクトを感じます

江口寿史のイラストまとめ! 現代の美人画の歴史だろ

小学生のころは野球をしていて、ドカベンやアブサンなどの野球マンガを読んでいたんですけど、そのなかで偶然「すすめ!!パイレーツ」を買ってもらったのを強烈に覚えている。 いやもう何考えてたんおとん?ってくらい野球しないマンガ。ドカベン、あぶさん、すすめパイレーツで並べたら水島新司から殺されるぞ俺。 いやもちろん野球にはまったくいかせなかったのだけれど、登場人物の梶野望都に完全に一目惚れしたのは覚えてます。それから私は江口寿史が描く女の子に夢中なので、今回は自己満足的に江口寿史