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メタモルフォーゼの縁側・1巻を読んでの等身大の感想

超今さらですけど、話題になった「メタモルフォーゼの縁側」を読みまして。すごく気になってたんです。なので冒険心も相まって買ってみました。1巻でテーマがまだ見えてないので、等身大で感想を書いてみます。

メタモルフォーゼの縁側・1巻のあらすじ

雪さんは75歳。夫を既に亡くしていて現在は一人暮らしだ。お気に入りの喫茶店に行くと潰れていたので、1年ぶりくらいに書店に入る。料理本を買おうとして店員に書架の場所を尋ねる。教えてもらった後にふらっと漫画を見てBL漫画の表紙が美しくて惹かれてしまい、購買する。

家に帰って、仏壇に今日の報告をしてから、寝る前にBL漫画を読む。「懐かしいわ〜、昔はよく読んだわね」なんてひとりごちながら。男性同士のライトなBLのシーンが出てきて「あら、あらあらあら、あら〜」なんて言いながら、読み終えてしまう。

一方、雪さんのレジを担当した女子高生のうららはかなりBL好きだったが、学校で馴染めずにいた。推しの話をしている同級生を見ながら「私も誰かと好きなものの話をしたい」とは思いつつ、何か好きなもので大声で盛り上がる自分を想像できない。なんと声をかけていいかもわからない。

雪さんはその後、すっかりハマってしまい、別の書店で2巻を買って、3巻をうららが働く書店に買いに来る。しかし3巻はなく、取り寄せに。入荷されてから、うららが雪さんに手渡す際に、この漫画のシナリオや概要を説明してあげる。雪さんはうららもこの漫画を好きなことを知って、お茶に誘う。

歳の差、58歳のBL友だちができるわけだ。

オタクは誰かと話したい、でも誰でもいいわけじゃない

テーマが「歳の差58歳のBL友だち」と、かなり突飛なので少し敬遠していたのだが、決して派手ではなく、とてもリアルに話が展開していく。雪さんはお気に入りの喫茶店に入れなかったからBL本を買うことになったわけだ。2巻は別の店で買っている、という部分もそう。偶然性によって、うららと友達になるまでの経緯がぐんと現実的になっている。

個人的に食らったのはうららの学校生活だ。その他の人からすると「オタク」って、いっしょくたにまとめがちだけど、そうではない。周りの推しがかなり元気なオタクであり、うららはどちらかというと家で1人で楽しむタイプだ。しかし誰かに話したい。ただ自分がわいわいと話す光景は想像できない。

つまり誰でもいいわけじゃない。「この人のここが素敵」とか「この作品のここが素晴らしい」を真面目にちゃんと話し合いたい。インドア派が自分の内的な部分から解放されて、誰かとつながるまで、の描き方が「わかる。わかるぞ」と甚く共感できる。

75歳のBL事情

また雪さんのBLの読み方をよく描けたなと思う。だって、誰も知らなかったでしょう。75歳が連載BLを追いかけるところ。よく想像ができているのだ。

雪さんが漫画に集中するのは定期検診の待合時間だったりする。いつもはもう答えを覚えたクロスワードをするけれど、今日は……とBL本を楽しそうに取り出すわけだ。

また雪さんは、追いかけている漫画が1年半に1冊ペースでしか発刊されないことを知る。すると「生きている間に完結するかしら」と自分の寿命を85歳として、計算をするシーンがある。仏壇に「90歳までがんばります」と会釈をしつつ、うららに他のおすすめ漫画を問う。75歳になると、ゴールが決まっていないエンタメには易々と手を出せない。ここに、なんというか、無常感があるわけだ。これはすごいですよね。視点がサブカルですよね。

1巻だけでは絶対に終われない漫画

そりゃもう、2巻も3巻も買いですよ。1巻だけでは絶対に終われませんもん。

75歳の雪さんがどのように人生の終末期に臨むのか。うららとはどんな関係になるのか。気になって気になって、早く2巻を読みたくなる。その背景には、決して嫌らしくない、あくまで淡々とした、少女漫画らしい現実的な描写があるのだろうと感じています。

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