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古屋兎丸の「Palepoli」はマンガの可能性を拡げた名作
古屋兎丸といえば何を描いた漫画家か。「帝一の國」「ライチ光クラブ」……いやいや「Palepoli」でしょう。いつ読み返しても新しい、とんでもない4コママンガ「Palepoli」だろう。
リスクを承知で断言します。Palepoliは、発刊以来、絶対に古くならない作品。たぶん200年後の人類も、200年後の言葉で新しいって感動するはず。
今回はそんな「Palepoli」の魅力について書く。
人生のベスト5冊に絶対入る作品
「Palepoli」は昔、友人に勧められて読んでびっくりした。心からぶったまげた。ライチを読んでも帝一を読んでもいまいちピンと来なかった古屋兎丸を心から崇拝せざるを得なかった。
最後まで一気に読み終えて、とんでもなく興奮して、やむなく手を合わせて拝んだのを、もうそれはそれは鮮明に覚えているんですよ。
で、1年後くらいになぜか古本屋で表紙が違うパターンのも買って、読んで、そのときはなんか悔しかったんですよね。「俺がやりたかったわこれ!」ってなったんです。どうにかして俺が描いたことにできないかな〜って考えて青林堂に電話しかけたところで「くそ!やっぱ無理だ!」つって、ナックルの握りでiphone放り投げました。
よくマンガは手塚以後以前、大友以後以前、浦沢以後以前みたいに分かれるが、Palepoliは明らかに独立した作品である。人生で5冊選ぶとしたら絶対に入るよ。見たことないもの。
Palepoliの革命的描写を挙げてみる
とか抽象的な言葉でいわれても、何がすごいんだか分からんですよね。では、具体的に衝撃を受けた描写を列挙します
没のおばけ
没のおばけは今作でシリーズ化されているもので、漫画家のもとに没のおばけがきて落書きしたり邪魔したりする話です。この4コマ目ですよね。衝撃でした。一気にメタファクションまで階層が上がるこの感覚。漫画を2次元から4次元まで成長させた表現は本当に痛快で、すこし恐ろしさすら感じる。
名作騙し絵シリーズ
バカボンとか
ドラえもんとかを騙し絵にしているんですね。ダリが後期にリンカーンやガラの騙し絵を描いたみたいな。痛快で見ていて気持ちがいい表現。過去作品のパロディはこの他にもあって……
サザエさんとかもいじってます。子ども向けアニメを大人向けとしてリメイクするユーモアがとにかく素晴らしいですよね。
読者の視点系
読者とキャラの目が合うのって怖いよね。これも没の神様シリーズと同じでやはり2Dから4Dに昇華しているのがおもしろい。私の視点で見てるので、まるで読者が4コママンガに入る。このあたりは以前書いたドキドキ文芸部とかにも通ずる。
私はもう10年以上前に熊本の展示会で見た江口寿史のこの4コマが忘れられなくて……
4コマ目でハッとするのよね。あ、鏡のこっち側から見てるんだ!って。Palepoliにはこうした描写がいくつもある。
大袈裟すぎる緊張と緩和
これもう4コマとして最強だろうと。絶対笑うだろもう。卓越した画力があるからこそ、このハイレベルな緊張と緩和が成立するんだろう。このFATHERもシリーズものだ。
キリストいじり
キリストはこの漫画の随所に出てくる。そして毎回思っくそいじられる。キリストの絵もめちゃめちゃ上手いからこそシュルレアリスムが完成しているのだろう。
Palepoliは吉田戦車の不条理ギャグ漫画を芸術の域まで押し上げた
不条理・ナンセンスギャグマンガの歴史って蛭子能収をはじめ、ガロの漫画家がなんとなく作り出して本格的に吉田戦車でヒットして榎本俊二らに受け継がれてきたという系譜がある。
しかしまだPalepoliほどに完成されたナンセンスギャグを見たことがない。発想がどこまでも飛んでるし、何より画力が明らかに秀でている。ナンセンスや不条理漫画の共通点って絵が下手というか、ヘタウマな部分なんだろうが、古屋兎丸ほどの画力を持ってすれば、ここまでリアリティが出るのだ。
リアルがあるから不条理が生まれるわけで、リアリティが濃いほど不条理感も増す。これはシュルレアリスムとの関係が深いと思うのは私だけだろうか。
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