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メロンはかぼちゃ

小さい頃から
食べ物への執着心が強かった私に
親戚のおじちゃんは
毎週のようにごはんに連れて行ってくれたり
美味しいものをくれたりして
かわいがってくれた。

その日もおじちゃんからお母さんに電話がかかってきて「おるか?」と私に代わった。

「メロンいるか?」

当然だ。いるに決まっている。
いらんというわけがあるまい。

私は喜んでお母さんと車に乗りおじちゃんの家を目指した。玄関のドアを開けると光り輝く桐の箱がおじちゃんの横に鎮座している。

わあ~。

ズシリと重い桐の箱。
上モノだ。

半分に切って、スプーンでほじくって食べたいなあ。なんて考えたりして、私はうれしくて桐の箱を抱えて持ち帰った。




かぼちゃ


中に入っていたのは紛れもなくかぼちゃだった。だまされた!おじちゃんはそういうヤツなのだ。子どもをだまして喜ぶ大人なのだ!!!

またしても図られた。
一度ではない。このようなことは何度もあった。

私は浅野内匠頭のような面持ちでそっと桐の箱を閉じるしかなかった。無念。この無念はらさでおくべきか。今一太刀。。


後日このショックの様をお母さんから聞いたおじちゃんはまた連絡してきた。

「かぼちゃいるか」


んもう!まだこないだのがのこってらい!
そういう私を置いてお母さんはかぼちゃを取りに行った。

でも冷蔵庫に入っていたのはベルファニーの袋に入ったメロンだった。
※ベルファニー:広島に本社を置いていたスーパー。現在のフレスタ。ロゴがかわいい。

それ以来、おじちゃんと私は、メロンのことをかぼちゃといい、かぼちゃのことをメロンと呼んで笑った。


おじちゃんはいつも決まってへんこつ亭に夕方17時からまだ開店していないのに押しかけて「一杯ひっかける」。おじちゃんの友達のひーちゃんが営む小さな居酒屋で、おじちゃんの行きつけのお店だった。お店がいっぱいになるとひーちゃんはよく「とっちゃん、もう帰ってくれ。」と、うだをまくおじちゃんに言った。

私も小学校のころから塾が終わるとここにお母さんと妹と一緒に行き、おじちゃんが「一杯ひっかける」のに付き合った。

私が今の会社に入社したころ、いつものようにへんこつ亭で一杯ひっかけていたおじちゃんは「お前に彼氏ができたらここでわしのツケで飯を食わしたる!」といった。まだまだできんじゃろうけどな!とメロンをかぼちゃと言った時のような悪い顔で付け加えた。

おじちゃんは長い間、癌を全身に患っていてそれからしばらくしてなくなったが、最後の私の誕生日には辞書みたいに厚いステーキをくれた。

メロンじゃないんかい!

めろんめろんめろんめろめろめろめろん
このジャケ、銀座千疋屋で撮られたのは有名な話。千疋屋のマスクメロンのパフェ、また、たべた~い!


おじちゃんが亡くなって2年後、私にも旦那ができたが、おじちゃんがツケで食べていいといった約束は果たせなかった。

そうだ、またしても図られたのだ。
メロンの無念すら晴らせず、おじちゃんは遠くへと行ってしまった。

おじちゃんはまた私をだまして喜んでいるだろうか。

亡くなって何ヶ月かしてGoogleマップに一杯ひっかけに行く途中のおじちゃんが写っててなんだか泣けた。


今度地元に帰ったときは旦那と一緒にあのへんこつ亭で17時から濃~ぉい焼酎の水割りを一杯ひっかけながら、

かぼちゃの話でもしようじゃないか。



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へんこつ亭
084-926-5904
広島県福山市昭和町7-8
https://tabelog.com/hiroshima/A3403/A340308/34009147/

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