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ばあちゃんからの電話

午後の日差しがじりじりと刺さるのが気になりながらも、
頭が重くて吐き気が止まらず
ベッドから起き上がることができないでいました。


どうしようと考えているうちに目を閉じては、
また天井を見上げてを繰り返しているうちにスマホが鳴りました。

眼鏡をはずしているのでぼんやりとしか見えません。
漢字の羅列に見えた表示に、
私はとりあえず電話に出ました。

「・・・もしもし?」
「言わないとだめだって!!!!」

電話口から飛び出してきそうなはっきりした声に、
まどろんでいた目もパッと開きます。

「ばあちゃん・・??」

私がそう言うか言わないかのうちに
ばあちゃんはまくしたてます。

「子どもできたんだって!?
 なんで報告にこないの~!
 今度は大丈夫だから!体大事にして!・・」

次々としゃべっているばあちゃんの声を、
ただ「うん、うん・・」と聞いているうちに勝手に電話は切れた。


ばあちゃん、相変わらずだな・・。
少し元気になった気がして、
私はそのまま母親に電話をかけようと
母親の名前を通話履歴から探しました。

ばあちゃんから久しぶりに電話がかかってきたと言ったら、
母もびっくりするよねと考えて
私はハッとしました。

 「あっ・・・ばあちゃん死んでるじゃん・・・」


夢?なんだったのだろうと
スマホを見ても履歴には何も残っていませんでした。

ただ、はっきりとばあちゃんと
電話で話しをしていた記憶だけはあります。

そういえば電話の名前はなんだったのだろう。
漢字・・・、戒名?

不思議な出来事だったけれど、まったく怖くはありませんでした。
一度流産してしまって、もう一度宿った命。

一度めの時、妊娠がわかったタイミングで
みんなに知らせてしまってダメになってしまったことから、
妊娠がわかっても誰にも親にすら報告していませんでした。

ばあちゃんは、母方のおばあちゃんで、
私にとっては唯一おばあちゃんと呼べる存在でした。

女孫である自分に、たくさん親子お揃いワンピースを作ってくれて、
死ぬ間際まで私の彼氏は誰か、
将来結婚する人は・・・子どもは・・・と
気にしてくれていたばあちゃん。

ガランとした静かな四畳半のミシン部屋を見て、
ばあちゃんがいなくなった寂しさを感じたこと。

ばあちゃんを思い出すと、
閉じ込めていた箱の蓋が開いて風に飛ばされるように
たくさんの想い出が楽しそうに飛び出してきます。

ばあちゃんとの想い出がもう一つ増えたんだ・・。
私はそう思って、母にばあちゃんから電話がかかってきたよ、
妊娠しているよと電話をかけました。

実話です。
ちょうど親友や、所属していた団体でも妊娠が重なっていた時期でした。
同じ時期に妊娠することができて、
みんなとママになれると喜んでいた時に流産してしまい、
一人だけ取り残されたような悲しみと、
失った悲しみと焦りがありました。

自分が殺してしまったのかとも思っていたので、
すぐの妊娠は嬉しくも、人に話すのは控えようとしていた時でした。
ただ、悪阻がひどくここで実家や周辺に話しをしたことで、
この後入院になるのですが、とても助けてもらうことができました。

そして、ばあちゃんですが、実は妊娠中もう一度出てきます。
今度ははっきりと姿が見える形で。
今でも覚えています。それはまた明日。

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