翻訳ってどうやるの?

1.なぜ翻訳の方法を書くのか

先月末に事務所を移ったので業務のガイダンスを受ける機会があったのですが、国内事務所だと翻訳作業の方法が共有されていないというか、そもそも翻訳作業の方法論がないように感じました。また、翻訳作業の方法をある程度固めている会社もそんなにないのかな、なんて思いました。
そんな中、いきなり翻訳業務を任された人は結構困っているかもと思って、簡単にでも方法論を共有できた方がいいかと思い、書きました。
ちなみに、ここで紹介する方法はネットで完結するものが多いので、在宅勤務の方でも使える方法だと思います。

2.翻訳作業を頼まれたら、まず何する?

初めて翻訳作業をやることになったら、何から手を付けるべきでしょうか?いきなり翻訳を始める?下準備から?

私は、翻訳の目的の確認から始めるべきだと思います。

翻訳を頼まれたなら、翻訳すればいいじゃん、というのも悪くはないです。しかし、翻訳の目的次第で、翻訳の進め方が決まりますので、個人的には確認すべき事項だと思います。

例えば、翻訳の目的が会社内で英語で書かれた文書の内容を把握したいことであれば、英語のニュアンスや細かい表現に時間をかけるよりも、間違っていない範囲で大筋の翻訳が必要という趣旨と考えることもできます。この場合、時間をかけて丁寧にではなく、必要なレベルで早めに翻訳が欲しいという方向で作業することになるかと思います。

別の例で、翻訳の目的が取締役会で決議を得る重要な取引なので契約書の日本語訳を準備したいということであれば、時間が許す限り正確に翻訳することが求められていると考えられます。

このように作業量や作業の質などにも影響があるので、「この翻訳は何に使うんですか?」程度でも確認しておくと良いと思います。

3.翻訳開始...?

翻訳の作業方針が決まったら、実際に翻訳作業に入りますが、すぐに自分で翻訳をするのはちょっと待ってください!ちょっとした下準備があるだけで効率が全然違います。それでは、下準備に進みます。

まずは、翻訳を用意します!

コイツ何言ってんだ?3分クッキングじゃねんだぞ?という話なわけですが、ここでの翻訳はGoogle翻訳やDeepL、T-4OO等を使って作成する翻訳のことです。前の事務所では下訳と呼んでいましたので、以後、下訳と言います。
なぜ下訳を用意するのでしょうか?もちろん、一から翻訳するよりも圧倒的に効率が良いからです。仮に微妙な翻訳だったとしても、下訳がないよりも絶対的に効率がいいですので、下訳の用意だけは絶対にやってください

ちなみに、下訳を作成するにあたって、私がおすすめするのはDeepLです。Google翻訳よりも性能が良いのは明らかなのですが、個人的な感想では、短文であれば、有料の翻訳ソフトであるT-4OOやみらい翻訳よりも性能がいいと思います。語の選択の適切さや表現の自然さは、かなりすごいです。あと、会社として翻訳ツールを禁止されている場合があれば、利用には注意してくださいね。

次に、参考にできる翻訳を探します。

先に下訳を作成したのは、この準備のためでもあります。仮に英語→日本語の場合、英語で内容を確認するよりも、日本語で大雑把にでも内容を確認した方が時間がかからず、参考資料を見つけるのも早いです。
なぜ参考資料があるとよいのかというと、各分野ごとの独特な表現方法をネットで見つけるのには時間がかかる上に、最初のうちはどの表現が自然であるのか判断できないからです。要するに、参考資料で自然な表現のストックを持っておくことが今後の作業の効率化につながります。

ちなみに、参考資料が社内で見つからない場合には、ネットで業界団体や官庁が出している外国人向け資料を参考にするのが良いです。プロの翻訳者の方が作成しているだけでなく、専門分野のバックグラウンドを持つ方が見ていることも多いので、適切な表現であることが多いです。

4.まだ翻訳開始しません!

翻訳を始めるまでに色々作業を行いましたが、ようやく翻訳です!といっても、下訳があるので、実際の作業は下訳の修正です。そこで、どのように下訳を修正するのかを説明します。

まず、原文を読みます。

いい加減、作業させろという声が聞こえてきそうですが、効率化と正確性の確保のためには必要な作業なのです...
原文の理解がないと正確な修正はできませんし、仮に最初に原文を読まなくても後で絶対読むので、先に読んで理解を固めておいた方が作業は早くなります。また、原文の理解が甘いと、翻訳漏れや適切な表現の選択ミスが起きます。特に、翻訳漏れはめちゃくちゃ痛いミスです。正直他のミスはカバーできますが、翻訳漏れだけはカバーできないミスなので、要注意です。

よし、原文を読んだら、次こそ作業でしょう!

違います。

次は、下訳を読みます。

もう作業させろよ、との意見もあるかと思いますが、この作業をしておくと下訳修正作業にかかる時間の見積もりができるので、途中経過の報告や事前の期限設定・期限調整がしやくなるので、やっておいた方がいいです。

ちなみに、翻訳修正の目安の時間ですが、英語がそんなに得意ではない初心者の方であれば、A4で1枚につき、

英語→日本語:1時間

日本語→英語:2時間 

ぐらいかかるかと思います。

5.本当に翻訳の開始

お待たせしました。ここからは、本当に翻訳を行います!といっても、これまでの準備でやるべきことはほとんど終わっています(笑)

説明するまでもないことですが、ここでの作業は下訳を読み、文法の誤りや不自然な表現を修正していくという作業です。細かいテクニックはあると思いますが、この段階に至ったらあとは黙々とミスを見つけては修正していくだけなので、特段言うべきことはありません。

そこで、文法の誤りや表現の修正などに役に立つサイトを紹介したいと思います。

まず英単語を調べるのに使うのは、Weblio英辞郎DMM英会話です。Weblioは検索すると最初に出てきますし英文も出典が明確で参考にすべきか判断しやすいので、よく使います。

英辞郎は、Weblioの訳では物足りないときに使います。無料だと例文の数が有料版よりも限定されていますが、それでも英文の数は多く参考にしやすいです。

DMM英会話の質問コーナーは、ひとつの単語表現について、多くの外国人が回答しているので、単語の相場観等がわかり、結構使いやすいです。

英語の文法の誤りで役に立つのは、Grammarlyだと思います。だと思うというのも、これまで会社のPCではGrammarlyを使うことができなかったので、ほとんど使ったことがなかったからです。実際に使いましたが、確かに文法のミスを指摘し、修正案を出してくれるので便利です。ただし、すべて英語なので、英語に抵抗感がある人は使いづらいかもしれません。

表現方法を調べるのに役立つのが、LingueeReverso Contextです。もちろんこれ以外のサイトも見ますが、個人的によく使うのはこの2つです。なお、LingueeはDeepLと同じ会社が運営しているので、単語の表現の仕方がほぼ同じであるため、DeepLの表現チェックの際にはLinguee以外も使用した方が良いと思います。

6.最後に

以上で、翻訳作業は終わりです。お疲れさまでした。と油断してはいけません。最後に重要な作業があります。それは見直しです。翻訳は確認すべき部分が多いのでどうしても漏れが起こりやすい仕事です。なので、最後に必ず一度は見直してください。おそらく一つぐらいはミスが見つかります。

私のおすすめの見直し方法は印刷してから読むことです。印刷してから読んだ方が何故かミスが見つけやすくなります。

見直しまでしてようやく終了です。本当にお疲れ様でした。

(追加)7.法律英語の翻訳で参考にするサイト

弁護士の方や法律英語を扱う方向けに、法律英語を翻訳するときに参考になるサイトをいくつかご紹介します。

まずは日本法を英語訳する際に必ず用いるといっても過言ではないJapanese Law Translation(日本法令外国語訳データベースシステム)です。こちらは、法務省が日本法を英語に翻訳したものを一覧にしているサイトで、法律の英語表現の確認に必ず利用するサイトです。
法律の英語訳が必要な時に使いますが、Googleで法令名+英語で検索すると、まずこちらのサイトがヒットするので、それを見るのが良いと思います。
なお、注意点は全ての法令が英訳されているわけではないので、業法の英語訳が必要な時などはない場合もあります。

次に、法令翻訳の手引きです。こちらは、法令文を翻訳する際に特に注意すべき事項について法務省大臣官房司法法制部が作成したものです。「あくまでも法令文を翻訳する際のルールを示したものであり、一部、一般的な英文における文法と異なる記載もあります。」と注意書きはあるものの、法律英語を翻訳する際によく用いられる用語の解説がされており、役立ちます。

そして、法令用語日英標準対訳辞書も有用です。こちらも法務省の日本法令外国語訳推進会議が作成したものであり、その名の通り、法令用語日英対訳辞書です。PDFなので、日英どちらでも用語検索が可能なので、典型的な法律表現や法令用語を探したいときには、便利です。

上記の通り、いずれも法務省の日本法令外国語訳データベースシステムの内容です。他にも参考になるサイトはあるのですが、間違いなく第一に参考にすべきサイトはこれらだと思います。

8.終わりに

以上が翻訳作業の方法を簡単にまとめたものです。結構大雑把なので、どこまで参考になるのかはわかりませんが、重要なポイントは書けたのではないかと思います。

読まれた方が何か少しでもヒントを得られたなら、幸いです。



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