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ペライチ小説~天獄~

ここは<天獄>
天国と地獄の中間地点。エンマ大王が天国と地獄どちらに行かせるか悩み抜いたが決めることができず、行き場のない人たちが来るところ。
ここでは今エンマ大王がどっちに送るか判断を決めかねた人たち、つまり<天獄人>が数百人一緒に暮らしている。
 
結局どっちへ行くのか。
最終的に決めるのはココで生活をしている天獄人の投票制になっている。
ここで一緒に生活をしてみて相応しいのは天国と地獄どっちなのか、一緒に生活をした天獄人が天獄人に最終判断を下す。
 
ここ「天獄」はそんな天獄人が戦々恐々ビクビクとしながら生活を送っているので、とにかく平和。ここで問題を起こせば地獄行きが決定してしまうため、住民全員が大人しく暮らしていて、天国よりも平和な場所と一部の間では呼ばれている。
 
きょう判断を下される天獄人は50代の男。ここでの生活は2年に及んだ。
若い頃は刑務所のお世話になるなど、一通りの悪さをしたが、晩年は生活を改め、社会の為に進んで地域貢献をし、周囲から惜しまれてこっちの世界へと旅立った。
 
ここ「天獄」での生活が始まってからも自分を律し、晩年と同じように周りと調和をして生活を送っている。しかしここで暮らす天獄人の中に若い頃にこの男から被害を受けた相手がいた。
その天獄人は男の悪行を忘れておらず、そしてそのことは周囲にも知られていて、全員が若い頃の悪行も、今の更生した姿も知った上で判断を下すことになる。
 
投票直前、判断を下される50代の男に天獄人たちへ話しをする場が設けられ、自分の今の気持ちを告白することが許されている。
『この度はこの様な機会を設けて頂き誠にありがとうございます。きょうでここ「天獄」からもお別れをして新たな場所へ行って参ります。ここでお世話になった方々への感謝の気持ちを決して忘れることなく私はこれから先どこへ行っても周りの為に貢献する所存であります』
拍手やリアクションはなく、なんとも不気味な時間が静かに流れる。
男の最後の言葉が言い終わるといよいよ判断が下される。
果たして・・・。
 
50代の男は今、「天獄の2階」にいる。
ここは「天獄」の投票で天国行きの票数と地獄行きの票数が同数だった天獄人が生活する場所になっている。ここには今数百人の天獄人たちが暮らしていて、自分の投票の順番を待っている。この「天獄の2階」の部屋の奥には3階へと上がる階段があるが、誰も近づく者はいない。
 
 
 

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