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【VOICE vol.4】キーマンが語る“ソフトバンク式”育成術

ジュントスで働く人々の魅力を掘り下げるnote。vol.4では、昨年から新たに取り入れられた採用・育成方式をテーマに、技術・メンテナンス部部長の香田裕と代表の朝稲啓太が対談。教育方法のこだわりから今後の展望にいたるまで、それぞれが思い描くジュントスの“今”と“未来”を語り合ってもらった。

1)10年かかる人材育成を1年で

-まずは簡単に香田さんの社歴などを教えていただけますか?

香田:20代後半でジュントスに中途入社して、もうすぐ20年になります。今の役職になってからは9年目ですね。

-昨年から設計部門に新しい採用・育成方式が取り入れられたそうですが、そのきっかけを作ったのが香田さんなんですよね?

香田:きっかけと言えるかはわかりませんが…。毎月定例で役職者が集まってミーティングを行うのですが、そこで社長に「何かやりたいことある?」と聞かれて、「10年かかる人材育成を1年でやりたいです」と言ったのが始まりだったと思います。

-それはまた大胆ですね!10倍速で育成することになりますよね。

香田:工事でも設計でも、この業界は「背中を見て学べ」という風習が根強くて、私自身、入社した時からそれがずっと嫌だったんですよ。何かわからないことがあった時、先輩に「どの本を読んだらいいですか?」と聞いても、「緑の本」としか教えてくれない。それで本棚を見たら緑だらけなんです(笑)。だからよく緑の本を片っ端から読んでいました。

朝稲:そもそも人材育成に関しては、全部門においてテコ入れが必要だと感じていて、数年前から私の中でいくつか構想はあったのですが、かと言って、それをこちら発信で強制的に社員にやらせるのも何か違うなと思っていて。なので、香田が自主的に声を上げてくれたのはよかったですね。それで、まずは設計部門の採用・育成の考え方から見直そうという話になり、着目したのがソフトバンクホークスの「三軍制度」でした。

香田:三軍は、二軍のさらに下の育成選手で構成される非公式のチームで、プロ野球界ではソフトバンクホークスがいち早く取り入れたシステムですが、これを建設業の採用にも応用することはできないかと考えたんです。

2)「育成枠」として原石を磨く

-具体的にはどういった採用・育成方式になりますか?

朝稲:いわゆるドラフト指名上位のような人材だけではなく、ある特定の分野に長けていたり、突出した個性があるような人材を「育成枠」として採用し、個性に合わせた教育プログラムを検討、いち早く現場で活躍できる人材に育てるといった仕組みです。香田と話し合いながら、何年かトライアンドエラーを重ねて基準が定まり、本格的にスタートしたのが昨年の4月からですね。

香田 :おそらく一般的な会社は、最初何週間か研修を受けた後、先輩について業務を少しずつ覚えていくというような流れが多いと思いますが、ジュントスの「育成枠」は完全に業務と切り離した状態でトレーニングを行います。最初から業務に携わる方法にももちろん利点はあると思いますが、例えば5年間などの中期的スパンで考えた時、実務の中で覚えていくのと、最初に集中的に勉強してデビューするのとでは、生産性が圧倒的に違います。本人にとっても、ある程度わかる状態で業務を始めた方が不安も少ないですし、この部分は自分一人でできるという役割がある方が、自信やモチベーションにもつながります。

-工事部のトレーニングセンターができたのが今年ですよね。人材育成のテコ入れが始まったのは設計部門の方が少し早かったということですか?

朝稲:そうですね。とは言っても、育成の概念自体は設計も工事も同じですよ。とにかく「反復トレーニング」だよね。

香田:そうです。基本的な考え方は同じで、アプローチが全然違うという。

3)個性を武器に変えてデビューする

-なるほど。では具体的にどんなトレーニングなのか教えてください。

香田:橋にはさまざまな種類がありますが、最初から全部をやるのではなく、まずは1種類の設計をやって、完璧になったら2種目に進むというやり方でトレーニングしていきます。ジュントスでは年間200ほどの橋を設計するので、題材には困らないんですよ。ソフトバンクホークスでは単に打ったり投げたりする練習だけではなく、それを最新の技術で振り返るという方法を取り入れています。設計も同じで、数をこなせば経験値は上がりますが、それを時々振り返ったり、見直すことでさらに自分なりの型が身につき、難しい内容でも応用が利くようになると思っています。

朝稲:足並みが揃った状態で学べるのも大きいよね。社員同士でお互いに作業をチェックしたり、どこが間違っていたか話し合える。

香田:そうですね。受験勉強でも、友達と話しながらやると不思議と覚えられたりしますよね。問題の内容だけではなく、シーンとしてインプットされるというか。先輩と作業をするとどうしても答えを求めに行きがちですが、自分たちで答えを導く練習になりますし、トレーニング期間にはすごく重要なことだと思います。

朝稲:育成枠の子たちは個性がしっかりある分、マルチタスクは得意じゃなかったとしても、一つに絞ってあげるとすごい力を発揮するんですよ。その力を極めてデビューしてもらうというやり方ですね。

香田:即戦力になる人材は絶対的に必要ですが、私たちがもっと着目しているのは育成枠からの輩出です。トレーニングの期間が長すぎるとモチベーションを保つのが難しくなるので、いかに早くデビューしてもらうかというスピード感も重要です。

-実際に育成枠から巣立っていった社員さんはいらっしゃいますか?

香田:もちろん。昨年4月に入社した子たちは、もう他の社員と一緒にバリバリやっています。ある分野においてはトレーニングの中で他の社員よりも経験を積んでいる場合があるので、逆に教えていたりもしますよ。また、採用時に光っていた部分とは別の個性をトレーニングで見出して、それを武器に頑張っている子もいます。

4)即戦力となる選手をいかに早く育てるか

朝稲:トレーニングも香田が一人でやっているんですよ。でも課題も見えてきたよね。今はまだ色々と試行錯誤している段階だけど、まずは3〜5年選手を半年で育てたいと思っているので、そのためには体制面、施設などの設備面も考えていかないといけない。

香田:そもそも私が一人で教えているのは、現場で起こりがちな「同じことを聞いても人によって答えが違う現象」を、トレーニングの段階では発生させたくなかったんですよ。育成枠のレベルを一定水準にまで高めるためには、ある問いに対してほぼ全員がAと答える状況を作る必要があると思っていたんです。でも、さすがに限界を感じてきましたね。私と同じ考えを持って教えてくれる社員が増えれば、教育の量だけでなく質も向上してくるし、時間の短縮にもつながるし、そこに施設を強化すれば、私が最初に言った「10年を1年に」も現実味を帯びてくると思います。

-業界の風習に疑問を感じていたとはいえ、はっきり言ってしまえば手間のかかる方法ですよね。どうしてそこまでやろうと思われたのでしょうか?

香田:あと10年したら、私、56歳なんですよ。正直言うと、できたら50代でリタイアしたいという気持ちがあるので、10年も待っていられないんです(笑)。あと、子どもができて意識が変わったのもありますね。子どもって、1日経っただけでできることが格段に増えているんです。その成長を見るのが楽しくて、これって大人もやりようによってはできるんじゃないか?と思ったんですよね。実際にトレーニングを始めてみると、すごいスピードでできることが増えていくんですよ。教える側としても非常に楽しいですし、モチベーションにもつながります。

-朝稲さんは以前のインタビューで、人材に対して「私から何かを求めることはない」ときっぱりおっしゃられていましたが(笑)、香田さんの個人的な採用基準などはありますか?

香田:個人的に思っているのは「野心がある人」ですね。トップに上り詰めたいとか、お金を稼ぎたいとか、たくさんの人を従えて仕事をしたいとか、大きなプロジェクトに携わりたいとか、別に何でもいいんです。何かしらの野心があれば、その先の技術に関しては私たちがしっかり教えます。

-ただ、少し気になったのが、育成のスピードを上げて早く一人前にしてしまうと、かえって、3年いてくれると思っていた人が1年で転職してしまった、なんてリスクはないのでしょうか?

朝稲:もうそれは大前提、想定内です。離職率の課題は今でも少なからずありますし、もし今後数年で人材が入れ替わるサイクルができあがるのであれば、即戦力となる選手をいかに早く育てるか、その仕組みをいかに早く整えるかというだけの話かなと思います。

香田:ジュントスで力をつけて、より高みを目指したいと思ったら、外に出て新たなフィールドで活躍してもらうのも、私は全然いいと思います。変な話、自分の可能性を広げるためのステップとしてジュントスを使いたいという人が増えれば、会社ももっと成長していくのではないかと思いますね。