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突発的な短編マガジン

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1話完結の短編です。
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#即興小説

弔いと殺蚊

 夏の訪れを感じるバリエーションは色々あると思うけれど、今年は、部屋に蚊が飛んでいたパターンだった。
 プンプンと、視界をちらつく仇。
 躍起になって殺そうとしたけれど、何度パチンと叩いても逃げられる。
 そこに意思はないと分かってはいても、あざ笑われているような気持ちになった。
 自分をもっと強く見せれば、殺せるのではないか――あるいは、作り声で雰囲気が出て、殺すまで叩き続ける執念が芽生えるので

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余裕の象徴、あるいは、スマホに電気を食べさせること

 僕たち人類がスマホの電池切れの心配から解消されたのは、いまから600年ほど前のことだった。
 空中に電気が浮かぶようになり、スマホはそれを自力で捕食し、呼吸するようになった。
 いまやスマホの性能は、1回の食事でどれだけ長く使えるか――腹持ちの良さで全てが決まる。
 スマホは魚のような存在で、空中の電気を求めて、常に口をぱくぱくと動かしている。
 そういうのが可愛くて仕方がないようなタイプの金持

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