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突発的な短編マガジン

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1話完結の短編です。
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2021年9月の記事一覧

会見に至る病

 僕は一刻も早く傑作を書いて、ポー像を手に入れたかった。大学の授業中も、食事中も、風呂の中でも、いつもミステリについて考えていた。
 だから、運転中に警察官に呼び止められたときでさえ、『殺人事件でもあって、検問中なのかな?』と思った。僕の一時不停止だった。
 免許を取って三日目。エドガーアランポー賞を獲るより早く交通違反を犯すなんて、許されない。罰金は七千円。そんな金があるなら、小説添削講座に申し

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あの赤い板について(•ಲ•ʔ⋚⋚)و

 かごの中から見える世界は、八畳半の部屋の半分にも満たない。でも、僕にとってはそれで十分だし、さして見たいものもない気がする。
 元はと言えば、外の世界から来たはずなのだった。
 どこかの国で生まれて空輸されて、ペットショップのガラスケースの中に並べられて、そして赤ちゃん時代の旬を過ぎ、生後六カ月という殺処分ギリギリのところで、珍妙な人間に飼われた。
 そういう経緯は知っているものの、記憶にはない

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