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第3回夢先生レクチャー リヴァプール渡邊元範先生

1.講師の渡邊先生

リヴァプールFCのHPより

 2022年3月29日(火)20時より、第3回夢先生レクチャーがオンラインで開催されました‼️👏
 今回の夢先生は、イングランドのプロサッカーリーグ、プレミアリーグのリヴァプールFCで、メディカルチームのマッサージ・セラピストとしてご活躍されている、渡邊元範(わたなべもとのり)先生です🏴󠁧󠁢󠁥󠁮󠁧󠁿🏃‍♂️事前に塾生たちから寄せられた質問をもとに、ご講演いただきました‼️

2.講義内容

リヴァプールでの仕事とは?

 リヴァプールのメディカルチームは、ドクター・フィジオ・セラピストの3つに大きく分かれている。フィジオは管理やリハビリを担当し、セラピストは怪我をしていない選手に対するケアを担当する。選手の異常などがあればドクターとフィジオで怪我の可能性を検討する。そして、選手と状態について話し合い、また上司と相談して練習可能か故障者リスト入りするかなどを決めていく。フィジオやセラピストは、選手とのファーストコンタクトをとる重要なポジションである。
 イギリス内のリヴァプールに関わるスタッフの数は約950人いる。その中で一軍のメディカルチームは、ドクターとアシスタントは常勤・非常勤合わせて2名、フィジオとセラピストは8名、スポーツサイエンスが7名、メンタルコーチ1名の総勢18名で、リハビリ・GPS・フィットネス・アセスメント・データといった部署に分かれている。

この仕事にやりがいを感じるときは?

 選手に関する情報の共有ができること。個人の仕事だと1人の選手しか見られないため物足りないが、チームだと情報共有ができる。
 そして、やはりチームが優勝した瞬間にはやりがいを感じる。また個人的には、今までできなかった治療ができるようになった、これまで治らなかったものが治った、ずっと説明できなかったものができるようになったなど、不可能を可能することができたときはやりがいを感じる。

海外に渡ったきっかけ・この仕事に就いたきっかけは?

漫画「Jドリーム」と世界地図

 漫画「Jドリーム」でトレーナーの仕事を知り、好きなスポーツに関わることができる仕事があることを知った。子どもの頃から、世界地図を見ていて日本の小ささを感じ、将来はアメリカなどの海外に行きたいと考えていた。流行りの野球やアメフトには詳しくなかったが、プレミアリーグをテレビで観たのをきっかけにそこで働きたいと思うようになった。
 アメリカでATC(全米公認アスレティックトレーナー)を目指そうとしたが、アメリカでは毎年約100人の日本人がATCになると聞き、他の人と同じになりたくなくてアメリカでATCになることはやめた。20代でイギリスへ渡り、30歳までにプレミアリーグで働くという目標を立てた。
 イギリスで働くなら、現地での医療資格取得が必要と考え、大学に入学し、ボルトン・ワンダラーズFCでのインターンも経験した。実際に目のあたりにして現地の人には勝てないと感じていたが、ある時イギリス人と対等に働く日本人を見て、自分にもできるのではないかと思うようになった。その後、帰国して日本で鍼の資格をとって、2011年に再びイギリスへ渡り、現在に至る。

英語力は?

 渡英当時、英語はほぼ喋れていないです・・・笑

学生のときに努力したことは?

 海外で仕事がしたかったので、強いて言えば海外へ行こうとしたこと。そして海外の大学で学んだことが努力だと思っている。学生時代、特に時間配分は考えていなかったが、一番は分かるまでやるということ。私は時間配分は考えず好きに勉強していた。
 皆さんには常に疑問を持って勉強してほしい。ちなみに私の最近の疑問は、ストレングス一辺倒のリハビリは正しいのか?弱まったものに負荷をかけて強くなればそれでいいのか?ということ。私も自分の中の疑問を解いていきたいと思っている。
 資格をとってからは自分の名前で生きていこうと思った。会社などの組織に所属しているのではない、個人として生きてきた。業界は何十年も変わらないはずはない。10年もすれば業界は大きく変わることも頭に入れておくべきである。メディカルスタッフも今の倍以上になっているかもしれない。その中で、日本人は「日本人だから…」という消極的な考えを捨てて乗り越えていくべきである。
 この前、監督と1対1で人生について語ったときがあった。監督もミスをしする。その時に、考えて、自分で再トライして改善しようとするのか、それとも現実から逃げて何もせず成長しないままなのか。おのずと進むべき道が見えるのではないか。

3.塾生からの質問

渡邊さんが求めるドクターの役割とは?

 ドクターがいろいろ動くと現場が慌ただしくなるので、ドシっと構えて要点を押さえた判断をしてほしい。それに加えて、内科系や脳震盪、心臓関係、心肺停止などの救急処置ではドクターでないとできないことやドクターがいるから安心できることがあり、やはりいてくれると助かる。

リヴァプールは体を酷使するチーム?

 リヴァプールの練習回数は他のチームと比べて少ないが、1回の練習の強度は高い。練習は激しくて走る量も多いが、トップチームにいるような選手は今までのキャリアでも怪我が少ない傾向がある。  
 怪我の予防に対しては、積極的な選手もいれば消極的な選手もいる。海外の選手は身体的に恵まれているので、ジムに行かなくても体が大きくなる。

選手・監督・コーチとうまくコミュニケーションをとるには?

 選手や監督・コーチとのコミュニケーションで一番大切なことは、「嘘をつかない」こと。痛みがあることやダメなものはダメと正直に言うこと。監督側の理解も必要だが、選手とメディカルチームの信頼関係が悪くなると取り返しがつかなくなってしまう。
 トレーナーが選手と監督の板挟みになることはある。でもそのときはトレーナーが全てを背負うのではなく、なぜ板挟みになっているのかその原因を探る必要があり、説得力のある、医療資格を持ったドクターなどの協力を得るなど、周囲の助けも得ていくべきだと思う。

渡邊さんから見た日本のメディカルの課題とは?

 トレーナーという名前が曖昧で、何でも屋さんになってしまっている印象がある。海外から見て日本に足りないものは専門性かなと思う。例えば、基本的にPTを主体としても、プラスしてATやアスレチックリハビリテーションなどの資格をとる人もいる。また、日本の救急救命は進んでいると思うので、さらに発展して行ったらいいと思う。
 <参考>フィジオのブログを読むと、どんな資格が必要なのかなどが書かれています。
The role of the “run on” medical team guest written by Chris Morgan  - Rehab 4 Performance

フィジカルの恵まれた海外の選手に日本人選手が勝つには?

 一番は「場馴れ」だと思う。技術面に差があるのではなくて、慣れていれば問題ないことが多いと感じる。例えば、試合中の判断のプロセスの改善は慣れていないと成長しないと思う。あと、「日本人だから…」と消極的に考えてしまうような今の殻を破ると良くなっていくのではないか。

4.学生たちに向けて

 近年、メディカルチームにも女性のスタッフが多くなってきている。皆さんの世代になったらもっと増えていくと思うので、活躍を期待している。
 今皆さんが大学で勉強して後に取得する資格だけでなく、自分の個性を持つことで、際立ったドクター・セラピスト・トレーナー等になってほしいと思う。

5.まとめ

 渡邊先生には、イギリスからオンラインでご講演いただき、実際に海外で活躍されているセラピストのお話を聞ける、貴重な機会となりました✨塾生からの質問にも丁寧にお答えいただき、本当にありがとうございました🙇‍♀️

 4月から新年度が始まりましたね🔅スポーツ医学塾も学生主体となり、新入生も入ってきます🙌今年度は、より活発な活動ができると良いですね‼️

 最後までご覧いただき、ありがとうございました。

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