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第8回講義 静岡県ラグビーフットボール協会安全対策委員長 海野祐生先生

📚はじめに

 2023年3月22日(水)20時30分より、2022年度最後となる第8回目の講義が開催されました!今回は順天堂大学スポーツ健康科学部のご出身で、現在は静岡県ラグビーフットボール協会安全対策委員長などでご活躍されている海野祐生先生に、「静岡県内におけるラグビー安全対策の取り組み」「BLSの重要性」「安全対策制度作りとスタートアップ」「ご自身のキャリア」などのテーマでご講義いただきました!🏉オンライン形式で、学生や講師の先生方が参加しました。

✅海野先生について

 本学スポーツ健康科学部スポーツ学科を卒業後、柔道整復師、AT(アスレティックトレーナー)の資格を取得され、ラグビーの現場を中心に活躍されています。静岡聖光学院の中高ラグビー部をはじめ、これまで静岡県代表、ユース日本代表などのトレーナーを務め、ワールドカップやラグビーリーグワンのメディカルスタッフとしても活動されました。

✅海野先生ご自身のキャリア(大学入学~現在)

 実家が接骨院を営んでおり、父親は器械体操のトレーナーをしていた。自身も小中高とスポーツに取り組んでいて、怪我をしたときに診てくれたのはいつも父親だった。これがスポーツ医学およびトレーナーに興味を持つきっかけとなり順天堂大学に進学した。
 卒後は柔道整復師の専門学校へ進学。自身もやっていたラグビーの怪我にも対応できるように柔道整復師を選んだ。専門学校に通いながらスポーツクラブでの仕事をし、静岡聖光学院ラグビー部にも関わるようになる。
 高齢者に対する機能訓練にも興味があったため、神経内科クリニックに就職。その後、接骨院の院長として就職すると共にAT養成講習を受講する。
 ラグビー東海代表のトレーナーを務め、2009年に自身で「スポーツ堂接骨院城北院」を開業。日本代表のトレーナーも務める。2015年に静岡県ラグビーフットボール協会安全対策委員長に就任。

✅ラグビーの安全対策

ラグビーの競技特性

 ラグビーはタックル・スクラムなどの身体接触のプレーが含まれるコンタクト競技であり、他のスポーツと比べて外傷が発生しやすく重症化しやすい。
 7人制と15人制があり、フィールドの大きさは同じだが試合時間やルールに違いがある。また、全競技の中で唯一、オンプレー中にトレーナーがピッチ内に入ることができる競技である。

日本ラグビー協会における安全対策の取り組み

安全・インテグリティ推進講習会
 年度初めにチーム登録をする際に受講が必須となる。講習内容は安全性、脳震盪・外傷および障害対応マニュアル、頸髄損傷の防止など…。

セーフティアシスタント(SA)講習会
 
ラグビーのピッチ内に入る際に必要な資格。日本国内独自の制度でトレーナーやドクターも取得している必要がある。ルール上、SA取得者がチーム内に1人以上いなければならない。

🖊上記2つの講習会はオンラインで受講することができます。SAは15歳以上であれば誰でも取得できる資格です。近年はラグビーに普段関わりのない人の取得も増えています。
 興味のある方はぜひチェックしてみてください!

ラグビー外傷・障害対応マニュアル
 
他競技にも参考になります!

静岡県ラグビー協会における安全対策の取り組み

安全対策委員長としての役割
 ・安全対策関連の講習会開催
 ・小中高の試合時における、ドクターやトレーナーの配置
 ・公式戦時のバックボード設置
 ・試合前のSA認証確認
 ・登録チームに頚椎カラーの常備を要請
 ・県内開催の大会の担架要員
 ・トレセンのトレーナー手配             など…

 都道府県によって対応にばらつくものもある。
 静岡県内各地にメインとなる6カ所のスタジアムがあり、小中高生の公式戦、大学ラグビー、女子ラグビー、リーグワン、日本代表、W杯などの試合が開催されている。そこでの担架要員は医療系資格もしくはAT資格保有者(学生含む)で集めるように対応している。
 静岡県の担当ドクターは7名(うち5名がPHICIS Lv.2取得)、トレーナーは6名(柔道整復師・鍼灸師・AT)。公式戦やイベントでは必ずドクターおよびトレーナーを配置している。
 担架要員の確保は難しいが、試合前に対応の指導や練習などの教育を行っている。教育は、特別なことはなく当たり前のことをする。メディカルスタッフにだけでなく、全体(運営)にも内容を共有する。

静岡県のラグビーの強み
 
・チーム数が少ないため会場も少なく手配する人員や備品も少ない
 ・ドクターとトレーナーが連携している
 ・安全対策委員長(海野先生)がトレーナーからの視点を持っている
 ・メディカルと運営およびチーム同士の関係性も良い
 ・県ラグビー協会の安全に対する意識が高い
 ・スクープストレッチャーを3台所有している

トレーナーとしての意識
 
・応急対応の意識を持つこと
 ・AEDの設置場所を把握すること
 ・選手の命を守るという自覚
 ・重症例などが発生した場合は、ドクターとトレーナー間で情報共有
 ・ドクター、トレーナー、チームスタッフ、保護者などとの連携

✅心臓震盪について知る

 試合中に突然心停止となる。
 「コンタクトスポーツだから起こるんじゃないの?」とも言われるが、実際にフットサルでボールが胸に当たって発生した事例もある。心臓震盪は接触の衝撃によるものではなく、心臓の拍動のタイミングによって発生するためどんなスポーツにおいても起こりうる。

✅スポーツの現場に立つうえで大切なこと

 ・テーピングやトレーニングよりも応急対応スキルを身につけてほしい
 ・ファーストエイドの質を上げていくこと
 ・BLS(一次救命処置)を定期的に学ぶこと
 現場での完結ではなく、医療機関搬送のための対応をするように心がけ
る。そして、スポーツ現場の命を守るという自覚を持つ。

 どんな競技、カテゴリーでも安全に対する体制が整っていけばと思う。安全な環境のためのトレーナーが増えるようにこれからも取り組んでいきたい。

✅Q & A

Q:講義でお話にあったような活動を継続していく秘訣は?

A:発信先はトレーナーが多いが安全に対する危機感を持っている人が少ない印象がある。聞いている人が何人いるかは分からなくても、言い続けることはぶらさないようにしている。将来的には他競技にも広げていきたい。

Q:トレーナーには柔道整復師が多い印象だが、PTは活動していないのか?

A:静岡では試合の救護に参加してくれるPTの方はいないのが現状。またPTの方々は外傷に弱いという意識を持っている印象がある。現状では積極的に参加してくれる方は少ないが、こちらとしてはウェルカムです。

Q:シーズン中とオフでトレーナー活動に変化はあるか?

A:(静岡聖光学院ラグビー部の場合)練習は1日おきのため、高強度の練習をやっても次の日オフになる。リカバリーの仕方や練習強度は試合日から逆算してコーチと調整している。
 学生のラグビーは1年を通して試合が続いているため、実は明確なオフシーズンはない。

Q:選手に対する安全対策はあるか?

A:安全なタックルの方法などスキル的な部分は指導者講習会でやっている。安全講習会を受けたコーチ陣から選手に向けた取り組みが行われるようにしている。

📚最後に

🖊学生側講義担当者より
 
静岡県内におけるラグビーリーグワンの試合の担架隊でご一緒できましたご縁で、海野先生にご講義をお願いいたしました。
 貴重なアドバイスをたくさんいただきまして、改めて感謝申し上げます。  
 ラグビーの安全対策に関するURLリンクを以下に貼付いたします。ご興味のある方はぜひご覧ください。
SA取得について:

安全対策関連動画(他の競技でも現場に出る方には非常に有用です): 

World Rugby 安全関連情報:

今後ともラグビーに関わる立場として学び続けていきたいという所存です。              
                          医学部3年 廣瀬凜


 キャリアについて、ラグビー協会の安全対策について、トレーナーとしての心がけなど幅広くお話していただき、オンライン形式ではありましたが、学生にとって学びや参考になることが多かったのではないでしょうか。
海野先生、お忙しいなか有意義なご講義をありがとうございました。

 この講義が今年度最後の講義となりました。また来年度も講義やイベントが開催される予定ですので積極的に参加していきましょう🚩
そして新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます🌸スポーツ医学塾で一緒に学べることを楽しみにしております!

最後までご覧いただきありがとうございました。
                             文責:宮澤

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