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「オムツと呼ばないで」利用者全員のオムツを外せた理由

皆さんが最も受けたくない介助って何ですか?
食事、入浴、更衣、整容など色々な介助がありますが、多くの方は排泄介助を挙げられるのではないでしょうか。排泄介助は「尊厳を守る介助」と言われることもあります。それだけ配慮が必要な介助だってことですね。

特別養護老人ホーム潤生園(以下、潤生園)では40年前から続く排泄介助についての取り組みがあります。今回はそんなお話です!

私は人間でなくなった

潤生園は小田原福祉会の事業所第1号で43年前に開設しました。そんな潤生園では昔からオムツのことを「マット」と呼ぶ文化があります。そのため「マット交換」という単語が職員間でよく交わされるわけですが、そのことを知らない入職当時の私は、「なんて頻繁にベッドマットを交換する施設なんだ!」と勘違いしてました・・・。

実はこの始まりは40年近く前のある女性の一言でした。

「オムツをつけたことで私は人間でなくなった」

衝撃的な一言。一体この「オムツ」という言葉を耳にするたびにこの女性がどれだけ傷ついたことか、当時の職員達は女性の悲しみを忘れることができませんでした。そして自分達のケアを変えていこうと動き出しました。

そのときのことを会長はこう語ります。

「言葉には魂が宿ります。私たちは『人は人として存在するだけで尊い』という理念を掲げています。潤生園の創立の思いに込めた『真心の介護で潤し、天寿を全うして頂きたい』をどう伝えるべきか。そういった中でオムツ交換ではなくマット交換という言葉にしようと職員達と話し合って決めました。

教えてくれてありがとう!

もちろんオムツの呼び方を変えただけで取り組みは終わりません!

次に排泄感覚のあるご利用者には、コールを押してもらえるようにお願いしました。(当時は措置入所の時代で、ご利用者は脳梗塞の後遺症で半身麻痺の方が多く、ベッド上で寝たきりにされオムツをつけられる時代でした)

しかしご利用者は一向にコールを押してくれなかったんですね・・・。その背景には「自分の排泄の後始末を他人にやってもらうことは申し訳ない」という気持ちがあったのだと思います。

そこで、職員達は「コールで教えてくれたらみんなで喜んでいこう!」と決め、教えて下さる方が現れた時には、職員全員が心から喜び感謝を伝えました。当時のご利用者はこの対応を受けて次のようにお話しされたそうです。

「いつも自分は『ありがとう』と周りにばかり言っている。ここにきて、初めて『ありがとう』と言ってもらえた」

このことがその方にとって、どれだけ大切なことだったか。職員達はこの取り組みが生きる意欲に繋がったと確認しました。

そして徐々にコールで教えて下さるご利用者も増え、排泄のタイミングを把握できるようになったことで、結果としてなんと・・・

ご利用者全員のオムツを外すことができたんです!確認ですが、これは令和の現在の話ではありません。まだ措置制度の時代です。

今、受け継がれるもの

それから40年以上が経ち、職員の入れ替わりもありましたが、これらの取り組みは今でも続いています。

しかし、ただ単に対応だけが受け継がれたわけではありません。

「人間の温かさ」を大切にし、「相手の気持ちを第一にケアをする」という姿勢こそが、脈々と受け継がれ続けてきた潤生園の文化です。先輩達から受け継がれて来たものをこれからも大切にしていきたいと思います!

最後に

今回は排泄介助に関するお話しでした!次は毎年開催されている事例研究発表会について書きたいと思います!今年は記念すべき10年目であり、KOMIケア理論を学んで3年目になるため、例年以上に素晴らしい発表になること間違いなし!

では、また!

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