精神覚醒走女のオオサキ ACT.38「決着」


 あらすじ

 オオサキをリードしたサクラは、新たに装着したローギアードミッションの加速でさらにリードしていく。
 ダウンヒル区間が終わり、バトルはヒルクライムに突入する。
 しかし高速セクションにて、ミッションの弱点が露見し、オオサキとの距離が縮まる。
 だが、サクラゾーンにおける技の打ち合いに勝利し、縮まった距離を再び離していく。
 そこを抜けると、オオサキの能力が発動するのだった。

 ワンエイティのボディを白と萌葱色のオーラが包み込む。
 能力を発動させたおれは閃いた。

「智姉さんがやったように、相手がもしあの状態になったらそれを最近覚えた音技で解除させようか」

 狙おうと考えた。
 現在離されているおれは高速左コーナーを抜け、右中速ヘアピンと左中速ヘアピンを合わせたS字ヘアピンに突入する
 前半の右ヘアピンにて、鉄のようの硬い銀のオーラを発生させる

「小山田疾風流<スティール・ブレード>!
 イケイケイケイケイケイケイケイケェー!」

 超高速のゼロカウンタードリフトで攻めた。
 S字ヘアピンの後に、ナイフの形をした左ヘアピンが迫る。
 ここは技を使わず、同じ走りで攻めた。

 そこを抜けてジグザグゾーンに入ると、小さいもののサクラのJZA80が見えてきた。

「追いついた……!」

 後ろのサクラも、バックミラーでおれのワンエイティを見ていた。

「縮めてきたか……」

 ジグザグゾーンを抜けて第2セクションに入ると、JZA80の上に透明なオーラが発生する。
 ドライバーのサクラはとてつもない集中力を発揮した。

「<チャージ・フロー>」

 フロー状態へと入る。
 明確な目標と即時のフィードバック、特定のタスクへの高度な集中などがあれば起きるものだ。
 その状態に入ったサクラは精神力を回復させ、集中力と操作性を上げていく。

「見つけたよ、葛西サクラ!」

 能力で引き上げた加速力で、サクラのJZA80を煽る。
 そのクルマにつきまといながら、第2高速セクションを駆け抜けていった。

 ハンマーヘッドと呼ばれる、左U字ヘアピンと右中速ヘアピンの複合コーナーに入る。
 サクラの方は黒いオーラ、おれの方は銀のオーラを纏う。

「葛西血玉流<サンズ・オブ・タイム>! 行かせない……行かせない」

「小山田疾風流<スティール・ブレイド>!
 イケイケイケイケイケイケイケイケェー!」

 1km/hずつ減速するドリフトと超高速のゼロカウンタードリフトがぶつかり合う!
 おれは能力で操作性を上げていたものの、フロー状態に入ったサクラも操作性が上がっており、彼女は負けていなかった。

 しかし第1高速セクションに入ると、上がっているクルマ性能でおれは再びサクラを煽りだす。
 ハンマーヘッドの走りを見て考えた。

「あの走りは……フローでパワーアップしている事に違いない」

 能力の影響でおれは頭が冴えており、勘でフロー状態になっている事を見抜く。
 サクラが速くなっているのはこれしか考えられない。

 第1高速セクションが終わって、右U字ヘアピン。
 両者ともドリフトで通過する。

「立ち上がりではこっちが上だ……」

 直後に短い直線へ入り、ここではJZA80のローギアードの加速で離される。

 左U字ヘアピンが迫る。
 ついにあれを使うのだった。
 透明のオーラはワンエイティを包み込む。

「また使う……!  <GTRサウンド>……!」

 ワンエイティのボンネットから出るRB26の轟音が耳を塞ぎたくなる音に変化する。

「イケイケイケイケイケイケイケイケェー!」

 この音がフローに入っていたサクラの耳に入ってしまい、ドライバーのフロー状態が解除されてJZA80の挙動がふらつく。
 それが原因で失速し、ワンエイティとの距離はサイド・バイ・サイドとなる。

「サイド・バイ・サイドはオレの得意分野のひとつだ……」

 この状態は最終ヘアピンまで続く。

「得意分野では負けないぞ……葛西血玉流<ウィル・シー・ヘブン>!」

 黒いオーラを纏い、サイドバイサイドしながらおれを被せようとした。
 しかし……最終ストレートに入るとおれの能力でワンエイティの加速力が上昇したことと、JZA80のローギアード化によるストレートの伸びの悪化が裏目に出て、相手を前に出してしまう。

 このままゴールするのだった。

勝利:大崎翔子

「よっしゃー! サギさんが勝ったべ!」

「DUSTWAYのナンバー2の葛西サクラに2度も勝つとはすごいなぁ」

「このまま赤城最速の雨原芽来夜を倒すかもしれないね」

 プラズマ3人娘はオオサキの勝利に喜ぶ。
 特に熊久保の方は喜びのあまり、何度も跳ねていた。

「糞(シット)ォ! サクラ姉ちゃんが2回も負けたぜェ!」
 
 ヒマワリは姉の敗北に悔しがっていた。
 悔しがるあまり、SW20に乗り込んで誰よりも先に帰っていく。

「これでオオサキちゃんと戦えるのはあたしだけしかいなくなった」

 この後、雨原はFDに乗り込み上の方へ向かった。

「サクラの2回も倒すとは、流石だなオオサキ。私もお前の走りを育てた甲斐があったぞ」

 智は弟子の勝利に誇らしく思うのだった。

 折り返し地点前の駐車場…。
 モミジとウメは、サクラの敗北を上からの情報で知る。

「負けちゃったね……サクラ姉ちゃん」

「今回の作戦は誤算だったわ。やっぱ上には上がいるのよ……」

 スタート地点兼ゴール地点前。
 バトルをした2人はそれぞれのクルマから降ると、会話を交わす。

「オレにはお前に勝つことなんて無理だと分かったよ……前よりも速くなったぞ……」

「いえいえ、君だって前よりも速くなった。中盤の猛烈な追い上げは追うのが苦労したよ」

「そうか……お前はいつか雨原さんを越えそうだな……」

 会話が終わると、サクラはJZA80に乗り込んで帰っていく。
 クルマの中で彼女はこんな事を考えていた。

「あいつは……雨原さんに代わって赤城最速になるかもしれない……」

 予言は的中するのだろうか?
 
 時は過ぎて深夜0時……。
 バトルが終わって帰らない人がいた。

 それは赤城最速、雨原芽来夜だ。
 彼女は愛車FDと共に大沼の月を眺めている。

 そこに師匠、ウメがJZA70と共に来る。

「帰らないの?」

「ウメさん、相談があるぜ」

「何?」

「今度やるWHITE.U.F.Oの交流戦が終わったら、オオサキちゃんとバトルをすると決めたんだ」

 雨原の口から衝撃な一言が来たのだった。

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