精神覚醒ノ肥後虎 ACT.26 4WDクーペ対決

 あらすじ

 虎美と斬鬼郎は刑務所に入っている鎌切の夫に面会へ行った。
 2人は喧嘩しただけで捕まった彼を見て、無念さを感じるのだった。
 妻にも会いにいき、被害者ぶる彼女を見て叱責する。
 その後、虎美は箱石峠にも出向く。
 赤石にミドリを誘い出せる方法を尋ね、覚と協力する作戦が思い付く。
 それを実行すると彼女を誘い出すことに成功し、バトルを申し込む。
 やまなみハイウェイという相手のコースで行われることになった

 5月26日の金曜日の夜10時。
 ついにバトルの時間となった。
 うちはやまなみハイウェイを登りながら、コースの特徴を見ていた。

「高速セクションが多か……」

 改めて走ると、高速コースだと感じる。

 スタート地点である牧ノ戸峠駐車場前へ着くと、ミドリちゃんらR.G.Bのメンバーがそれぞれのクルマと共に待っていた。
 鎌切の奥さんの姿もある。

 着くとうちはエクリプスから降り、彼らと顔を会わせる。

「奥さん、来てくれたんですね。絶対勝ちますから」

「勝って娘を更正させてよね」

「待っていたよ、虎美君」

「お前とは初対面だったな。俺は青山氷河、R.G.Bのメンバーだ」

「加藤虎美です」

「お前の名前は知っている。赤石から聞いたからな。今回のバトルはメンバーの暴走を止めたいからお前を応援する」

 飯田ちゃんのSVXとひさちゃんのファミリア、斬鬼郎さんのFC3Sが来て、クルマからドライバーが降りる。

「虎美、ここはアウェーよ。相手のほうがコースの熟練度がある。あんたの方が不利かもしれないわ」

「わしゃ不安たい……ビクビクするばい……」

「相手の地で勝てるのか!?」

「大丈夫たい。勝ってみせたる」

「その自信が命取りにならないで欲しいわ」

 ミドリちゃんとも目を合わせる。

「よく来たわね。さっそく始めましょ」

「ミドリちゃん、お父さんがお母さんに通報されて捕まったとよ」

 ミドリちゃんに衝撃の事実を伝える。

 これば聞いた彼女は一瞬おびえた顔をする。

「喧嘩するから捕まったのよ。やっぱ犯罪よ」

 ばってん、それば聞こうとせん。

「父さんの逮捕にショックを受けんとは、こん親不孝もんがァ! さっさとうちば倒してみい」

 こ親不孝もんに対して挑発的な態度を取った。
 またミドリちゃんの顔が一瞬だけおびえた顔になる。

「さぁ、クルマに乗りなさいよ!」

 ドライバーが乗り込んだ2台はどちらも直列4気筒ターボのサウンドを奏でる。
 バトルを待っているようだ。

加藤虎美(D27A)

VS

鎌切ミドリ(ST205)

コース:やまなみハイウェイ下り

 カウントは赤石さんが努める。
 2台の前に立つ。

「カウント始めるよ!」

 吼えるような2台のターボサウンドが響く。

「5秒前! 4、3、2、1、GO!」

 2台は発進した。
 その様子を自動車部部員2人は見ていた。

「どちらも4WDで直列4気筒のターボ車! 凄まじいスタートダッシュだわ!」

「虎ちゃん……勝てるかな」

「虎美が後攻か……」

 アウェーやけん、相手ば様子の見ながら走るこつにした。

 しばらくは直線が続く。
 低速域の加速ではうちが上だけど、高速域の加速では相手が勝っていた。
 うちのエクリプスは220km/hまでしか走れないのに対し、相手は250km/h以上の速度で走行している。

「高速区間ではこっちが上ね」
 
 最初のコーナー、右高速コーナーが来る。

 ミドリちゃんのST205から萌葱色のオーラが出てきた。

「行くわよ!」

 技を使うようだ。

「マンティスの刃流<マンティス・ブレード>!」

 両腕のカマで斬るカマキリの如く、ドリフトで攻めていく。
 うちとの距離が離れる。

「やるばい! 速かなドリフトばい!」

 クルマ1.5台分の差になる。
 2台は緩いS字ヘアピンを攻める。
 抜けると、合頭山登山口前の左高速ヘアピンが来る。
 麻生北の生徒会の3人がギャラリーしていた。
 ケンメリ、SA22C、ギャランGTOもある。
 
「よくやっとるのう、加藤! ちゃんとあの不良を更正させてほしか」

「と言っても、まだ後攻ばい」

「学園ナイターレースで1位になった実力ばここでも見せてほしか」

 3人は同じ学校の虎美を応援していた。
 2台はそこを通りすぎると、こっからは直線が続く。

 高速域の加速力が優れているST205に離されてしまう。
 
「速かね。あれを使ってついていくばい」

 うちはある予告をした。
 2つの右高速コーナーが来る。
 その2つ目で、その予告を実行をした。

「<コンパクト・メテオ>!」

 隕石が降るようなスピードのドリフトで攻める!

「虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎ー!」

 ミドリちゃんとの距離が縮まった。

「やるわねェ」

 バトルは3連ヘアピンに入る。
 1つ目と2つ目は低速ヘアピン、3つ目は中速ヘアピンになっていた。
 そこにてミドリちゃんはまたあれを発動させ、萌葱色のオーラを纏う。

「マンティスの刃流<マンティス・ブレード>!」

 斬り倒すカマキリの腕のようなドリフトで攻める!
 うちとの距離が離れていった。

「じゃあね」

 その後は長い直線。
 高速域のセッティングが優秀なST205はうちとエクリプスば離していく。

 どれぐらいの差っていうと、100mぐらいの差だ。

「離されるばい!」

 展望台前のコーナー。
 ある人物がギャラリーしていた。
 ST205がそこを通りすぎる。

「あのST205には根に持っている。この前、ボコボコに倒されたからな……今回は加藤を応援しようか」

 不二岡源六郎だ。
 側にダブルエックスも停車している。
 彼はミドリちゃんを恨んでいた

「加藤、離されているな……」

 通りすぎるうちのエクリプスを見て、そう呟いた。

 先を走るミドリちゃんは直線を抜け、ゆるい右からの左U字ヘアピンへ入る。

「どんどん離せば、勝利が見えてくるわ!」

 しかし、こん後ミドリちゃんの様子がおかしくなる。

(ミドリちゃん、お父さんがお母さんに通報されて捕まったとよ)

「なぜ、この言葉が過ってくるのよ……!?」

 ミドリちゃんはうちの言葉を思い出し、パニック状態になる。
 さらに!

「お、お父さん!? 本当に捕まったの!? どうして捕まったのよ!?」

(父さんの逮捕にショックを受けんとは、こん親不孝もんがァ! 親不孝もんよ、さっさとうちば倒してみい)

「私って本当に親不孝な娘なの!? あああああああああああ!」

 ドライバーがパニックになったことにより、ST205が一瞬フラつき出す。
 
「ST205のペースが落ちとる……」

 うちは不思議に思ってしまった……。
 やっぱバトル前の挑発が響いたんやろうか。

The NextLap

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