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精神覚醒ノ肥後虎 ACT.16 「学園ナイターレース」

 あらすじ

 生徒会ら麻生北の生徒とレースが決まった虎美たち。
 突如沙羅子からFTOとS.S.Tと呼ばれる全身タイツを借りることになった。
 苦戦する虎美だったものの、乱入してきたランティス乗りとの戦いで慣れたのだった。
 そして戦いの日がやってくる

 日は過ぎ、5月21日の土曜日。
 学園レースの日がやってきた。

 うちはS.S.Tから解放されて自由の身となり、同時にエクリプスは戻ってきた。
 代車のFTOは沙羅さんに返した。
 クルマの帰還は1人の家族が戻ってきた気分だ。

 17時になると、麻生北の生徒が乗るクルマたちが乙姫へ向かい始める。
 参加する人々は皆、学校の制服(男子はあかい学ラン、女子はセーラー服)の着用が厳守された。
 うちら自動車部もいる。

 移動中に出来事が発生する。

 後ろから来る見たことのあるランティスが、うちら3台のクルマを追い抜いていく。

「さっきの仕返したい!?」

 ランティス野郎やった。

「フン、バトルではお前たちにリベンジさせてもらうからな。今度は負けるわけに行かないぜ」

 ランティスは猛スピードで走っていき、うちらを引き離していく。
 そんな出来事もあったけど、自動車部は無事会場へ到着する。
 
 乙姫は普段レジャースポットで使われとる観光地だ。
 ペンションが沢山立ってある。
 今回はレースのために学校がお借りして、生徒たちの戦場となっている。

 コースは周回方式であり、3ラップ制。
 もし事故をはじめとするトラブルがあっても、学校側は保証せんらしい。
 スタートは夜19時だ。

 到着すると、配布された紙に名前とクルマや型式、仕様を書く。
 さらに抽選でスタートの順位やゼッケンの番号を決める。
 うちが21位と555番、飯田ちゃんが24位と913番、ひさちゃんが25位と333番やった。

 うちらの前に1台のクルマが来る。
 ケンメリだ。
 会長が降りてくる。

「待ちに待ってたとよ。
 私やって覚醒技を持っとるけんな
 覚醒技は「タイの刃流」と言うて、コーナリングに特価した覚醒技たい」
 
「今日、勝たせてもらいます。
 あーたが覚醒技超人だと聞いても手ば引きません」

 互いの身体から覚醒技のオーラが出る。
 刀の刃のように鋭かった。
 しかし、うちの方も負けていない。

(前以上にすごくなっとるなぁ……。走りの腕がありそうなオーラたい。将来的にはかなりのドライバーになりそうばい。私が負ける可能性が出てきたとよ……)

 菊池会長はうちのオーラを見て、考えた。

「俺もいるぞ」

 聞いたこつのある声が聞こえた。
 彼は不二岡現八郎、前にひさちゃんをさらった奴たい。
 まさか参加しとったとは……。

「会長が覚醒技超人であっても、学園最速は俺だ。俺は学校一のレーサーだからな。会長も叩きのめす」

「それがどうしたん? こん前、うち相手に負けたくせに大口叩くばい」

 不二岡の自信過剰な言葉にひさちゃんは笑いだす。

「ウェフフフ、どこが学校一なん? 虎ちゃんに負けたくせに」

「虎美、こいつと戦ったことあるの?」

 飯田ちゃんには不二岡とのバトルについて話した。

「へぇ……こいつと戦って遅刻したの……」

「ひさちゃんば誘拐してうちにバトルば挑んできたけんなァ。勝てたばってん……」

 話は置いといて、時間が過ぎる度に乙姫にクルマが集まってくる。
 18時55分になると開会式と選手宣誓が始まった。
 終わると、ドライバーとクルマは抽選で選ばれたスタート位置に着く。

 スタート時の順位
 全45台

 会長・菊池鯛乃(KPGC110)
 5位
 番号:1
 
 副会長・山中ルリ子(SA22C)
 7位
 番号:2

 書記・大内胤子(A57C)
 18位
 番号:3
 
 加藤虎美(D27A)
 21位
 番号:555

 ランティス乗りの不良(CBAEP)
 23位
 番号:14

 飯田覚(CXD)
 24位
 番号:913

 森本ひさ子(BG8Z)
 25位
 番号:333
 
 不二岡現八郎(MA61)
 28位
 番号:38

 スタートのカウントは、レースに参加しなかった生徒会の人によるストップウォッチで行う。
 時間は60秒だ。
 数字が59秒、58秒、57秒、と1秒ずつ数字が減っていく。
 
 クルマのエンジンが吠える。

 30秒、20秒、と徐々に時間は経過していく。

 そして10秒を切った。

 10
 9
 8
 7
 6
 5
 4
 3
 2
 1
 GO!!

 カウントが0になると、クルマは一斉にスタートした。
 エンジン音が響きあいながら、走り出す。

 緩いS字を2つ交えた直線を通り抜けていく。

 乗馬クラブ前の左中速コーナーに入ると、事件が起きる……。

「飲み物の恨みは怖いぜ!」

 野郎のランティスが森本さんのファミリアのリアフェンダーにプッシュした。

「わあ!」

 クルマが不安定な状態になっているコーナリング状態を狙ってぶつけてくるとは、許せない……。

 虎美に連絡をした。

「虎美は先に行って! 私は森本さんをランティス野郎から守りにいくわ!」

 今回のレースでは、私たち自動車部はトランシーバーで互いに会話できるようになっている。

「了解たい!」

 しばらくは順位を上げることを二の次にして、野郎退治を優先することにする。
 だって同じ自動車部だから。

 あのランティス野郎に挑むのは私だけではなかった。
 虎美がかつて倒したセリカXX乗りの不二岡が挑む。

「森本を倒すのは麻生北で頂点に立つ俺だ!
 邪魔はさせない!」
 
 不二岡のセリカXXはランティスにパッシングしてバトルを挑む。

「させるか! <パワフル・タックル>!」
 
 オレンジのオーラに包まれたランティスは物凄い速さでダブルエックスの後輪にプッシュする!

「くっ……うわァ!」

 ダブルエックスはスピンをしてしまう。
 こうして彼は私たちの近くから姿を消した。

「ざまぁみろ! 俺の邪魔をするからこうなるんだ。引き続き森本を狙うぜ」

 もう1人の邪魔者が現れる。
 私だ。
 SVXはランティスにパッシングする。

「新たにSVXが邪魔しに来たか!? 森本の仲間か。仲間を助けに来たのか、手助けは反則だぜ」

「森本さんへの妨害はさせないわ
 ラフプレーは退場よ!」

 バトルは右寄りのS字からの突き当たりの右ヘアピンに入る。
 ここからクルマ2台分走るには限界なほど狭い道だ。

「こっちだってFFから4WDにしている。
 ターボまで積ませた。
 SVX相手でも、あのダブルエックスみたいにしてやるぜ!」

「森本さんの妨害は許さないわ。さっさとバチに当たりなさい!」

 この狭い道でランティスはプッシュをしかけてくる。
 しかし私はこれを巧みなコーナリングで回避した。
 ランティスは失速し、距離は離れる。

 再び距離を縮めて接近すると、またプッシュをしてくる。
 これも回避した。

「くそ、当たらない! こうなったら……!」

 ランティスはオレンジ色のオーラに包まれる。
 
「今度こそ食らわせてやる!
 <パワフル・タックル!>」

 物凄い速さで、3度目のプッシュを仕掛けようとした。
 私はそれが来ると、透明なオーラを発生させる。

「山崎ノ槍柱流<どこでも曲線>!」

 ヘッドライトと気配を消してプッシュを避ける!
 
「ありゃー!」
 
 ランティスはコースからはみ出て、草むらに出る。
 こうしてランティス野郎はリタイアとなった。

「ここで一生動物たちの仲良くしなさい」

「ふぅ……助かったとよ。ありがとう森本さん……」

 森本さんを邪魔する者はいなくなった。

「虎美はどうしているのかしら。
 順位を上げて、追いつきましょう」

 一方、飯田ちゃんとひさちゃんを置いてきたうちは、順位を上げとって17位となっていた。
 ペンションロワ前の突き当たりの左ヘアピンを抜けていく。

 直後の右側のS字セクションば通ると、1台のクルマと遭遇する。
 銀のアメ車を思わせるデザイン……三菱のギャランGTOだ。

「大内書記のギャランGTOたい!」

 そんギャランGTOはうちのエクリプスと同じ音ばしとった。
 ただし、ターボ音は聞こえんかったばってん。

「加藤さんのエクリプスが来たばい。
 私の覚醒技もギャランGTOも強力なんよ。
 つきてこれるん?」

 書記との勝負が始まった。

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