精神覚醒ノ肥後虎 ACT.25 誘い出せ

あらすじ


 斬鬼郎と赤石はミドリを見つけたことを鎌切夫妻に報告した。
 鎌切の妻は仲が悪いにも関わらず結婚した理由を話す。
 誰に止められない夫婦喧嘩が始まり、虎美たちは退散する。
 そんな中、赤石が鎌切の夫が捕まったという報告が来てしまう。

 うちと斬鬼郎さんは刑務所で鎌切の旦那さんと面会した。

「なーして捕まったとですか?」

「喧嘩の最中にヒートアップしてしまって……新聞紙で妻に手を出したら、通報されてしまい傷害罪の容疑で捕まってしまったよ……」

「それで捕まるなんてな……」

 ただくだらない喧嘩したのに、捕まるとは……。
 夫婦喧嘩は犬も食わないのに、警察は食うのか?

「喧嘩しただけなのに捕まるなんて……最悪だ……」

 旦那さんの無念さをうちは感じる。 

「ミドリにどんな顔をすればいいんだ……? 帰ってこないのは、ワシだってショックだ……。ワシだって娘をちゃんと育てたはずだ……勉強に協力したあげたりしたのにな……こんなワシの姿を見せたくない……」

「そうなんですか……」

「なぜワシが捕まらなきゃならないんだ、ただ新聞紙で叩いただけなのにな……」

「お父さんの無念さ、うちにもひしひしと伝わってきます。ばってん、事件性が無ければここから出られると思います」

「ありがとう」

「今度は奥さんに会いに行こうかと思います」

「あいつは怒るとすぐヒステリックになるからなァ、人格否定の口撃をしてくる」

 うちらは刑務所を出て、鎌切家に向かった。
 家に入ると涙ぐむ鎌切家の奥さんがいた。

「これで私のストレスは消えたわ。家の恥で、冷酷人間が捕まったらこの家は平和になるわ……! そしてミドリは戻ってくるわ……!」

 被害者面全開の奥さんにうちは頭に血が上る。

「なーして被害者を完全に気取っとるとですか! 旦那さんは……旦那さんはくだらん喧嘩しただけばってん、捕まったとですたい!」

「この態度が行けないんだ!」

 斬鬼郎さんも喝を入れた。

「こげん様子やと戻ってこんですと! ミドリちゃん喜ぶんですか!? ホントは家族思いの優しい子かもしれんですよ」

 奥さんの表情が変わった。
 怯えた感じだ。

 同じ頃、ミドリはというと……。

「お前のせいでバトルで勝利が出来ないのはだろうが!」

「いいや、人のせいにすんな!」

 喧嘩する2人の前に、ミドリが立ち止まる。

「喧嘩なんかしないで! 両成敗よ!」

 2人に対して、ミドリは手に持った鉄の棒で殴りかかる。

 彼女はこれまでも、喧嘩する人たちに対して暴行を働いていた。

「うわッ! もう喧嘩しません……すみません」

 それを青山が側から見ていた。

「もう行きすぎた行為はやめにしないか?」

「何よ? もう! 私はケンカが嫌いなのよ!」

「もう見損なったぞ!」

 仲間から冷たい態度を示された。
 見限られたようだ。

 時間は過ぎて、夜11時の箱石峠。

 ここにうちと飯田ちゃん、赤石さんがいた。
 うちは何か訪ねた。

「赤石さん、ミドリちゃんを誘うために何かありますか?」

「ミドリは家庭環境の影響で喧嘩に敏感だよ。過去に喧嘩する人に対して幾度も暴行を働いてきたらしい」

 うちの頭に閃きが走る!

「飯田ちゃん」

「何よ」

「うちの作戦に協力してくれん?」

 それば実行したのは30分後。
 ようやく箱石峠にミドリちゃんらしき緑の影が来る。

 うちと飯田ちゃんは変な喧嘩を始めていた。
 彼女らしき少女が見つめる。

「ミドリちゃんば見つからんとは、あんたのせいたい!」

「何で私のせいにするのよ! あなた本当は探す気ないでしょ!」

 ミドリちゃんらしき、特攻服を着た少女が来る。

「喧嘩両成敗よ!」

 うちの顔をめがけてミドリちゃんが鉄パイプで殴りかかろうとした。
 白羽取りで受け止める。

「これはお見通しばい!」

 うちは殴り合いが得意だ。
 新体操で鍛えた運動神経でどんな奴でも倒したからな。

「あんた、鎌切ミドリちゃんか? 写真で見たこつある顔ばい!」

「そうよ……私が鎌切ミドリよ……!」
 
 掴んだ鉄パイプをミドリちゃんの方に向ける!

「あんたばおびき寄せるためにわざと喧嘩をしたとばい」

「さぁ、大人しく家に帰って欲しいわ」

 そして、ある挑発をする。

「帰らんなら、バトルすっばい! クルマ同士でな!」

「いいわ。クルマのバトルなら、自信あるわ。私は18だけど他の子より2年早く走っているから負けないわ」

 ミドリちゃんがルールを決めた。

「コースは私のホームコース、やまなみハイウェイの下り1本でどう?」

「断る理由はなか。あんたが負けたら家に戻って来ると条件付きや」

「了解だわ。明日そこで待っているわ」

 飯田ちゃんがルールを聞いて、心配する。

「場所は相手のアウェーだけど、大丈夫なの? 相手はオーラが見えたから覚醒技超人だわ。虎美が乙姫で生徒会長たちを倒したとはいえ……」

「心配なか。実はうちは箱石峠以外のバトルでも勝ったこつあるけん」

 悪質取材班、大竹との最初のバトルのことだ。
 オケラ山下のミルクロードで追いかけられたけど、逃げきった。

「けど、コースは相手のホームよ。コースの熟練度なら相手が上よ」

「作戦は考えとくよ」

 深夜0時、うちはエクリプスと共にやまなみハイウェイという峠ば走る。
 ハイウェイと名前がつくけど、峠だ。

「ここが明日の舞台か……」

 コースは直線と高速コーナーが多い高速コースだ。 
 きついコーナーが少ない。

 前のバトルで馬力を下げられたけど、それが終わると元に戻った。
 現在のエクリプスは410馬力だ。

 翌日。
 午後7時の鎌切家。
 部活を終えたうちは鎌切の奥さんに訪ねた。

「奥さん、今日のうちとミドリちゃんのバトルば見て貰えませんか?」

 うちは土下座して頼み込む。

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