精神覚醒ノ肥後虎 ACT.37 ダンガンを仕留めよ
あらすじ
日曜日、動画が人気になった自動車部の前へ1組の親子が来る。
娘を乗せて欲しいと頼まれ、S14の助手席に乗せた。
デモランを開始し、その子を驚かせないように走らせると荷重移動のコツを掴むのだった。
その頃、不二岡をはじめとするダンガン乗りに倒された走り屋の間で「ミニカダンガン被害者の会」が結成された。
ミニカダンガンが青緑のV35型スカイラインセダンを煽っている。
それをテレビで見ていた者がいた。
男子高校生3人と女子高校生1人の4人組だ。
その中で1人だけ大人びた者がいた。
彼がリーダーだと思われる。
「俺たちにくだらん物を見せるとはな……」
「軽なのによくやるっスね」
「けどあたしら麻生南のサウス4に敵わないでありんす」
「見つけたら、俺たちが潰してやろうぜ。どんな手でもな」
「堂番、俺はそいつをターゲットとしない。麻生北の部長と戦うまでは」
後に彼らとは、大きく関わることになるのだろう。
7月11日の月曜日、午後5時。
この日も授業を終え、うちら自動車部部員が部室に集まった。
その前に白いスタリオンがV8スーパーチャージャーの音を奏でながら停車した。
ドライバーが降りてくる。
「お邪魔します」
「誰でしょうか?」
「あなたは……」
入り口を開けると、黒髪ロングと和服を着た女性が現れた。
部長決定戦で乱入してきた相良玉子だ。
「ここですか? 加藤さんの部室は?」
「ここですけど……って相良玉子さん!?」
突然やってきたことに一同驚く!
「お久しぶりです。加藤さん、飯田さん……あと1人は?」
「わしは森本ひさ子です」
ひさちゃんは初対面だったな。
なぜ相良玉子がここに来たのか、聞く.
「なーして、ここやと分かったとですか?」
「あなたたちが人気者になったからです。麻生北高校の生徒だと知ってここに来ました」
うちら有名人になったなぁ……。
「私の店のダンガンと戦いましたね?」
「負けたとです……車に慣れとらんかったけん」
「あなたの本当の腕なら止められると思います。この学校の生徒会長を倒し、他校の不良を更正させた実績を持つ人なら。そのために車に慣れてください」
「そぎゃんこつを知っとるんですか?」
「あなたの活躍は熊本中で噂になっています。あのダンガンは強い奴を探すと言って勝負を挑み、ここの走り屋たちに迷惑をかけています。では」
その言葉を言い残すと、スタリオンに乗って去っていった。
「相良玉子から応援された……」
「けど、あの人はスプリントレースでの相手よ。感心している暇はないわ」
まるで敵から塩を送られた感じだ。
夜10時……箱石峠。
多くのギャラリーに紛れながら、私はダンガン乗りと話をした。
「あなたは熊本中の走り屋にバトルを挑んでいるようですね」
「俺は速い奴と戦いたいだけだ。俺とダンガンの凄さを見せたい」
「あなたの気持ちは分かります。ですが、多くの人に迷惑を省みない行為はやめてください。店のイメージが悪くなります」
彼を止めないと、悪名は私まで響くかもしれない。
翌日、7月12日の火曜日。
朝6時の箱石峠。
うちはS14と共にテスト走行をしていた。
荷重移動のコツを掴むと、この車の運転に慣れてきた。
「操縦できとる」
途中、青いミニカダンガンが斜めの位置に停車していた。
噂の車だ。
ドライバーもいる。
この車の前にS14を停車させた。
運転席の窓の右側に奴は現れる。
「なんば(熊本弁でなんで)道中にクルマば停めとって……」
「お前に用があるからだ」
「用って!?」
「お前にバトルを申し込む。ちょっとは運転は慣れたか?」
「前よりは慣れとるばい」
「バトルの日程は今週の日曜日だ。時間は夜の11時。覚えておけよ、来なかったら俺の不戦勝になるぞ」
「断る理由はなか」
バトルのルールを言い残すと、ダンガンに乗って去っていった。
今日も学校の授業を終えて、部活動を始めた。
ある人物が部室を訪れた。
「誰でしょうか?」
それは沙羅さんだった。
「私です、竜宮沙羅子です。あのダンガン乗りとバトルを挑まれたのですね」
「虎美、あのダンガンにバトルを挑まれたって本当なの!?」
「本当たい」
「実はある作戦を伝えます」
それを聞く。
「なるほど、そん作戦でよかでしょうか? 後半から抜かれる可能性もありますし」
「ダンガンの弱点を狙った作戦です。それは換装したエンジンにあります」
狙いを伝えると沙羅さんは帰っていった。
その作戦はバトルになったら紹介しよう。
彼女以外にもこの事を知っていた人がいた。
不二岡だ。
「加藤、ダンガンにまた挑むってことは本当か!?」
「挑むたい」
「奴はお前を倒した奴だぞ。麻生北最速の俺でも倒せなかった。しかも、お前は慣れない車に乗っている……」
「麻生北最速ちゅう言い方やめてくれる?」
それは置いといて。
「作戦があるたい……」
「どんな作戦なんだ?」
「あーたには秘密たい」
「秘密だけど、勝てる作戦なのか?」
「沙羅さんの考えた作戦やから勝てるたい」
「実際にギャラリーして確かめてやろう」
不二岡は部室から去っていく。
そして7月17日の日曜日、夜10時30分。
バトルの日がやって来た。
自動車部の人気が高くなっているためか、ものすごい多くのギャラリーが集まっている。
わたくしも副代表2人と潤と共にギャラリーへ来ていた。
奈亜河が訪ねる。
「なぜ、虎美にS14を提供したのだ?」
潤が答える。
「他の駆動方式にも触れて欲しいと思ったからだ。それでテクニック向上を見込めるかもしれない」
「なるほど……テクニック向上のためか」
別の場所では……赤のZC32S型スイフトスポーツ、黄色のJZS161型アリスト、青緑のZN6後期型86、青のレクサスRC-Fが停車する。
それぞれの車から4人の男女が降りた。
ビデオを見ていたサウス4の面々だ。
「来たぞ」
「いよいよ始まるでありんすか」
「あのダンガンを仕留めるっすね」
「麻生北の部長とダンガン、どっちが勝つのか!?」
「俺は麻生北の部長が勝つと考えている。ダンガンには覚醒技超人のオーラがあっても走り屋のオーラはない」
リーダーと思われる男は覚醒技の事を知っていた。
覚醒技超人だろうか?
復路前半の終わり区間。
ここに510と910ブルーバードが停車した。
後者はシルエットフォーミュラを彷彿させる見た目をしていた。
それぞれの車から2人の女性が降りる。
片方は赤いツインテールに白色の全身タイツを着ており、もう片方は紫色のウェーブのショートヘアに黄色いレオタードを着用していた。
「着いたばい」
「お姉ちゃんはどう見とるばい?」
「バトルのポイントは前半ばい……あたしは考えとる」
姉妹と思われる2人にギャラリーが注目する。
「あの五島姉妹が来とる!」
「風格がすごか!」
この姉妹は有名な走り屋かもしれない。
しかも覚醒技のオーラもあった。
バトルから5分前。
復路のスタート地点にうちとS14、ミニカダンガンが到着した。
ドライバーと会話する。
「俺は1度倒した相手にやられるつもりはない」
「うちやって……こんまま負けたままには行かんたい」
人気者になったうちの前にサインを求めるギャラリーがたくさん来る。
それらの要望に答えていく。
「どうぞ」
「だんだん」
ここには相良玉子とスタリオンもいる。
「カウントは私が務めます」
2台の前に立つ。
時間は過ぎて、11時丁度になった。
「虎美、頑張ってー! 負けたら恥ずかしいわ!」
「リベンジして欲しか!」
親友たちから声援が飛ぶ。
加藤虎美(S14)
vs
謎の走り屋(H27A)
コース:箱石峠復路
「カウント行きまーす! 10秒前!」
相良玉子のカウントを聞いた2台はエンジン音を響かせる。
「9、8、7、5、4、3、2、1、 GO!!」
数字を数え終えると、バトルはスタートした。
うちは後攻を取り、相手の様子を確認していく。
相良玉子はスタリオンの近くに寄っていく。
「さて、私も出発しますか」
ガルウイングが開く車に乗り込み、2台を追いかけた。
「相良玉子も出発したわ」
「どぎゃん狙いがあるんやろうか?」
突如出発した相良玉子のスタリオンを見て、ギャラリーたちはどよめきを隠せない。
TheNextLap
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