精神覚醒走女のオオサキ ACT.42「赤城最速からの挑戦」


あらすじ

 雨原と戸沢のダウンヒルバトルが始まった。
 前者が先攻で後者が後攻というポジションでバトルはスタートする。
 ハンマーヘッドヘアピンにて、戸沢が雨原を先行するのだった。
 バトルは後半戦に入る。

 ポジションの入れ替わりはスタート地点にも報告される。

「ガラ姉が抜かれただとォ!」

 ヒマワリはそれをトランシーバーで聞いていた。

「ガラ姉は後ろの方が得意だよなァ、こっから逆転してほしいぜ」

 ヒマワリは雨原の勝利を願った。

 第2高速セクションにて、葛西サクラの下の妹・モミジとDUSTWAYの秋山はギャラリーしていた。
 ここにはそれぞれの愛車である、オレンジのアルテッツァと黄色いRX-8が停車している。

「来るよ」

 2台が2人の前を通りすぎる。

「雨原さんが後攻になったね」

「今後をどう見ているの、モミジ」

「雨原さんは後攻が得意だ。こっから雨原さんの本領が発揮される。戸沢は苦しくなるだろう」

「ってことは雨原さんが有利になるんだね」

「そうかもな」

 モミジは今後の展開をこう見ていた。

 第2高速セクションの後半のジグザグゾーン。
 あたしはカウンターを出さないように攻めていき、戸沢を追う。

「雨原さんが全力を出した!」

「後攻になってからが本番だからな」

 ナイフの形をした右ヘアピンへ入る。
 タックインのグリップ走行で攻める戸沢をドリフトで追いかけていく。

 左中速ヘアピンと右ヘアピンを複合したS字コーナーに入る。
 
「あいつを驚かすか」

 DC5は闇のように黒いオーラに包まれる。

「WHITE.U.F.O.ミッドナイトドライブ流<暗闇の威嚇>」

 一瞬だけライトを消した。
 それを見たあたしは一瞬だけふらついたものの、すぐに立て直す。

 こっからサクラゾーンと呼ばれる区間に入った。

 左U字ヘアピンに突入する。
 戸沢はグリップ走行、あたしはドリフト走行で攻めた。

 直後の右高速コーナーを両者ともグリップ走行で攻め、さらに来る左高速コーナーも同じ走りで抜けた。

「引き離せない……煽られる!」

 戸沢の表情に焦りが出始めた。

「戸沢……お前は既に敗北しているぜ」

 一方のあたしの表情は余裕だった。
 前半の時よりだ。
 このままペースを上げていく!

 2連続ヘアピンに突入する。
 1つ目の右ヘアピンにて、戸沢は仕掛けた。
 DC5が透明のオーラに包まれる。

「<ハヤテ打ち2>!」

 鋭い突っ込みのグリップ走行で攻める!
 あたしとの距離が引き離された。

「痛くもかゆくもないぜ」

 しかしそれは一瞬だけであり、直後の2つ目の左ヘアピンにて距離は縮まる。

 その後、あたしは戸沢を煽りながらサクラゾーンを駆け抜けていった。

 第3高速セクションに入る。
 ついにあたしは仕掛けた。

「さぁ、追い抜くぜ」

 あたしのFDは炎のような赤いオーラを纏う。

「赤城のテイルガンナー流<ビトクリー・ジェネレート>!」

 発射される火の玉の如く、猛烈な加速をする!
 戸沢のDC5を一瞬にして抜き去った。
 抜かれた戸沢のDC5はその技を受けてフラつく。

「ぐは! 俺の覚醒技は火属性に弱いんだ……」

 戸沢の覚醒技は闇属性で、大きな精神ダメージを受ける。
 さらにビトクリー・ジェネレートによる加速はいつもより向上していた。

 最後のセクション、5連ヘアピンへ入る。
 そのヘアピンたちの3つ目で戸沢は動き出す。

「<ハヤテ打ち3>」

 透明なオーラを纏い、強烈な立ち上がりのグリップ走行をする。
 しかし満足に距離を縮めることは出来ず、そのままゴールするのだった。

「戸沢も負けたァ!?」

 目の前で仲間の敗北を遭遇し、柳田は絶句していた。

 ダウンヒルもDUSTWAYが制した。

勝利:雨原芽来夜

 バトルをしたあたしら2人はそれぞれの車から降り、会話をする。
 
「さすがだな、赤城最速の雨原」

「お前の走りは読んでいたぜ」

「なに!?」

「あたしもお前も後攻が得意な走り屋だ。お前は先攻を取ると、十八番であるブラインドアタックを使うために、わざと相手に先へ譲る癖がある。オオサキちゃんとの戦いの時、それを使ったろ? あたしはそれを使われるのを読み、先攻を選んだ」

「前半の先攻していた時、手を抜いた走りをしたのはなぜだ?」

「お前に抜かれるためだ。後攻を取るために抜かれるのを待ったんだ。その後あたしは徐々にペースを上げ、終盤でお前を追い抜いた」

「その走りは本気だったのか?」

「本気の50パーセントぐらいだ」

「本当か……?」

「お前の敗因はつまり、走りを読まれたことだな」

 バトルは読み合いは大事だ。
 相手がどう動くか読まないといけない。

 戸沢との会話を終えるとあたしはFDに乗り込み、上へ向かう。
 その姿を見て、ギャラリーは疑問に思った

「どこ行くんだ、雨原さん!?」

 しかしサクラのほうはあたしを見てどこへ行くのか、すぐ感じとっていた。

「まさか、あいつと……!?」

 サクラの感覚は当たった。
 あたしはあいつに会いに向かったんだ。

 ダウンヒルスタート地点。
 ヒマワリをはじめとするDUSTWAYのメンバーが歓喜に溢れていた。

「ガラ姉が勝った! イィーネッ!」

 お決まりの人差し指と親指をアゴに当てるポーズをする。

「地元のチームであるDUSTWAYが勝ちましたね」

「私の予想が当たったな」

 突如3ローターのロータリーサウンドが聞こえてくる。

「雨原が来たか。ゴールしたにも関わらず、なぜここへ?」

 智姉さんはそれを疑問に思った。
 FDから雨原が降りて、おれに近づく。

「オオサキちゃん、話がある」

「なんなの!?」

 赤城最速からの話とは一体?

「あたしとバトルをしてくれないか?」

 ついに来るかもしれなかった言葉がやってきた。
 おれは葛西3姉妹、WHITE.U.F.Oの2人を倒してきたおれの次の相手は彼女しかいなかった。
 
 その言葉を聞くと緊張感に包まれる。
 おれの出した答えは……。
 
「そのバトル、受けるよ! バトルできるのはあなたしかいないから!」

 そのままバトルを受け入れた。

「オオサキ、相手は今までの相手の中では最強の相手だぞ。それを受ける覚悟はあるのか!?」

「挑んだら絶対負けるで。勝てるんか?」

「今回のバトルの結果を見れば分かるよ。戸沢は雨原に圧倒されたよ。10vs1で負けるかもしれないよ」

「みんな心配してくれてありがとう。だけど、おれは逃げないよ」

「さっすがサギさんだべ! 葛西三姉妹とWHITE.U.F.Oを倒した走り屋だァ~」

「赤城最速との戦い、頑張ってください」

「うち、勝利を願っているさかい」

「もう智の育てたオオサキが赤城最速と戦うとはなァ……」

「じゃあ日程は来週の土曜日、午後10時に開始だ。ヒルクライムでスタートして、大沼を通ってダウンヒルで1度往復するというルールで挑む。待っているぜ」

 日程を言うと雨原はFDに乗り込み、ここから去っていった。

「聞いたぞ、雨原さんがあのオオサキと戦うらしいぜ!」

「どっちが勝つのか、楽しみだ!」

 それを聞いたギャラリーは興奮し出した。

「あちゃあ、聞かれちゃったね」

「うち……すごい緊張するわ……」

「大丈夫だ、来週までにオオサキを雨原に負けないように猛特訓させてやろうか」

 こうして赤城最速・雨原芽来夜との戦いが始まった
 来週には今までにない激しいバトルが起きるだろう。

 期待と不安がのし掛かるまま、今日を終えるのだった。


 

 

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