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同志少女よ、敵を撃て
~本屋大賞受賞作。独ソ戦、女性だけの狙撃小隊がたどる生と死~
こんにちは、くまりすです。今回はアガサ・クリスティー賞受賞作逢坂 冬馬「同志少女よ、敵を撃て」をご紹介いたします。
戦争に翻弄された女性狙撃手の物語
小さな村に住んでいた少女セラフィマは、突如現れたドイツ軍に殺されそうになったところを赤軍兵に助けられます。殺された家族や村人の敵を討つために、狙撃訓練学校で狙撃兵としての訓練を受けることになった彼女は、そこで同じような境遇の仲間と出会い、やがて戦地へ赴くことに…
「ドイツ軍も、あんたも殺す!敵を皆殺しにして、敵を討つ!」
第二次世界大戦中のソ連軍には、深い愛国心と復讐心をもって入隊した女性も多く、100万人近くの女性兵士がいたそうです。特に狙撃兵に関しては、繊細で忍耐力のある女性は正確に銃を撃てるということで、実際に女性狙撃指導教習所もありました。これはそんな戦争に翻弄された少女たちの物語。
主人公、セラフィマと共に狙撃訓練学校に集められた少女たちの中にはウクライナ・コサックであったり、カザフ人であったり、多種多様。
複数の共和国からなる連邦国家にある対立や差別の歴史がありながらも、家族や友人を殺され、ドイツ軍に復讐心を持っているという共通点から心を通わせていきます。
「ウクライナがソヴィェト・ロシアにどんな扱いをされてきたか、知ってる?…(中略)ソ連にとってのウクライナってなに?略奪すべき農地よ」
ウクライナの少女が、セラフィマにソ連とウクライナの関係に言及するシーンがありますが、このような状況になった今となっては、彼女の憤りや悲しさを感じさせる言葉により重みを感じます。
また、狙撃の基本やルール、隊における狙撃手の立場も丁寧に描かれていて、孤独で過酷な戦いを強いられる彼女らの運命を予感させます。
狙撃兵になるための専門的な訓練を終え、隊と合流したセラフィマ。だが、戦地で戦い続ける内に、彼女の心は次第に麻痺していく…。
戦争
物語は1941年~1945年の独ソ戦における女性狙撃手の物語。この戦争は小説の中でも説明されていますが、分かりやすいかと思い、簡単にまとめました。
独ソ戦とは…
第二次世界大戦中にナチス・ドイツを中心とする枢軸国とソビエト連邦との間で戦われた戦争のこと。1941年6月にドイツ軍はソ連を奇襲攻撃しました。ドイツ総統アドルフ・ヒトラーがスラヴ人(スラヴなどの言語を話す諸民族集団のことで、ロシア人やウクライナ人などの事を指します)を劣等民族と認識していたため、ドイツ系民族を占領地に移住させて植民地にしようと計画したのです。(『ウィキペディア(Wikipedia)』より)
ナチズムのドイツ、共産主義のソ連それぞれが信じるイデオロギー(歴史的・政治的な自分の立場によって構築された考え)のため、相手をせん滅させることが戦争の目的でした。そのためにこの戦いは3000万人もの人類史上最悪の犠牲者を出したのです。
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