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サクラサクマデ:2

※当時は「看護婦」が呼称だったのであえてそう書きます。

無事に高校受験ができた。当時は受験日の夕方に札幌駅で受験問題と回答が配布されていたらしい。「らしい」と言うのは入院中でそんなのも知らなかったから。
21時頃だったかな、まず研修医の高橋先生がそれを持って来てくれた。
その後すぐ小児科部長がケーキを買って来てくれた。
そうして夜勤の看護婦さん達が来て

「受験お疲れ様!」

と笑顔で言ってくれた。私はあの時の看護婦さん達の顔、まだ覚えてる。先生と看護婦さん達へ一緒に笑ってお礼を伝えた。そうして心から思うんだ。
「やっぱり看護婦さんになる」と。入院で「憧れ」が少しだけ近くに来た感じがした。

その後、先生2人と答え合わせ。「これなら大丈夫だよ、合格すると思うよ」と言ってもらえた。
今考えたら、定員割れしてるんだから名前を書くだけで受かったんじゃなかろうか・・・とも思うのだけれど。

この入院中、看護婦さんからも先生からも
「どうして看護婦になりたいの?」
と何回も訊かれた。何人もの看護婦さんに「大変だからオススメできないなー」と言われたり、別の看護婦さんには「看護婦になったジュンコちゃんと働けたら面白いね」と言われたり。
多くの看護婦さんが「大変だから」と言うのを聞いて、初めて看護婦さんて大変な仕事なんだと知った。遅くない?
その時の質問に「忘れないで欲しいから」って答えてたのを思い出しました、書きながら。やはり根底はそこだったのかな。
そうして言われたのが
「それなら小児科は違うね。小さい子が多いから忘れちゃうもん」
と言われた。
私にとって小児科の看護婦さん達は、お姉さんだったりお母さんだったりそんな感じだったのだけど、確かに小さい子は忘れてしまう子も多いのかもしれないなと思った。

そして合格発表。外出許可をもらって高校へ。合格しておりました、私が合格したくらいなので、友人は余裕だったと思う。
定員割れしていても不合格の人もいた。名前書いただけでは受からないんですね。鼻血を噴き出してまで受験できて良かったです。

病院に戻って報告したら泣いて喜んでくれる看護婦さんまでいて、私も含めて家族も泣いてしまった。花束まで用意してくれていた。そうしてまた思っう
「人が喜ぶ事や悲しい事を一緒に喜んだり悲しんだり出来るって良いな。やっぱり看護婦さんになる」
と。結局、何を見ても何を感じても「看護婦さんになる」に繋がるわけだ。
多分、その頃の私にウルトラマンを観せたとしても「看護婦さんになる」と思っただろう。

夜は主治医2人が「内緒だよ」とお寿司を買って来てくれて、3人でお祝いした。何もかもが嬉しくて、毎日勉強をみてくれていた先生にも看護婦さんにも「ありがとう」しかなかった。

翌日から入学式までの間の宿題が出ましてですね、高校の教科書からの宿題なので微塵もわからない。そしてまた研修医高橋先生との勉強会が始まった。先生、本当にありがとうございます。

入学式は病院から。
戻ったらデイルームにちびっこも看護婦さん達も先生も揃っていて壁には
「入学おめでとう」
の文字。そしてまた花束をもらって、入院仲間のちびっ子達とお祝いの会をしてくれた。みんなでジュース飲んでケーキを食べられる子は食べて。

即入院になって、受験もあり本当にずどーんとした入院。けれどその間に色々な事があり少しづつ少しづつ光が射し込んできたのかもしれない。

通学も暫くの間は病院からだった。とにかく疲れるし宿題は多いし、予習復習もしなくちゃだし。肝機能が上がっているので、疲れやすいわけです。倦怠感も強いし。
そして授業中にまた鼻血が噴き出した。
でも血尿かと思ったビリルビン尿も少しづつ薄くなって来ていた。

そんなある日、高橋先生が他の病院に異動になると知った。淋しいが最初の感情。次に感謝、そうして最後に出て来たのは「お医者さんも引っ越しするのか、いじめられないといいな」だった。
私の中では引っ越し(転校)といじめってセットだったのだな。
まぁ、先生がいじめられるとしたら看護婦にだったろうなと今は思うけれどね。

やはり何らかの「光」を求めていたのだと思う。
それが自分が照らされる事だったのかはわからない。
ただ「私」という人間が存在しても良いと思える光が看護師だったのだと思う。
「自己肯定感」とか「自分軸」とか当時は全く知らないわけで、何なら看護師は「自己肯定感」が低い人が多い。そんなのも15歳の私は知らない。
「光」を求めていたのだなと振り返ると強く感じる。
気持ちを整理していく為に放置していたnoteを書き始めたけれど、気がつく事が多くて面白い。
この入院で私の「看護師になる」の輪郭がおびて来たのは間違い無いだろう。

サクマデシリーズはまだ続きますのでお付き合いをお願いします。
それではまた。

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