コトノハサエ

先には行かない  歩幅を合わせ 隣を歩く 作家の先輩の言葉です こんなふうに歩いて…

コトノハサエ

先には行かない  歩幅を合わせ 隣を歩く 作家の先輩の言葉です こんなふうに歩いていきたい

マガジン

  • ハハの子離れ

    ひとり親のワタシと一人っ子のムスコの親離れ子離れ。 一人なのに葛藤は二人分。

  • Gift(ギフト)

    【足音】の続編です

  • 足音

    いつのことだったろう、サエがこの街にあらわれたのは。

  • 画面の向こう

    あの日から35年が立つ。 ステキな男子はたくさんいたのに、なんであの子のことを好きになっちゃったんだろう…

  • 【歌詞小説】あの日。あの場所。

    忙しなく走るワタシは、ふと足を止める。 この歌を最後に聴いたのは、いつだったろう。 次の瞬間、あの時あの場所にワタシは佇ずんでいる。

最近の記事

癒えない傷口

「市長!お願いします!」 秘書の差し迫った声に我に返る 慌ててステ−ジ中央に進む 司会のアナウンスの後 一向に姿を見せない市長に 会場はザワついていた 市長の登場に気づいて 最前列の支持者たちは 急いで拍手する 「みなさん、今日はこの野外ステージ  完成記念コンサート&ダンスコンテストにようこそ!…」 後方に駅の改札が見える オレはそこでリンの声を聞いたんだ 木箱が積んであるあの前で 思わず振り返った リン! ここにリンがいる!   *** リンの生まれたとき

    • 『お久しぶりです』

      「お、おう」 仕事にも慣れ 久しぶりに帰省したムスコに お辞儀をしていった青年 「知り合いか?」 「うん、1個下。中学と高校一緒の。」 「え?あんな子いたっけ?  仲良かった?」 「ううん、それほど。」 「じゃあ、なんで挨拶してきたの?」 「たぶん、高校ンとき、  学校前に着いても寝てて  乗り過ごししそうやったから、  降り際に肩ポンと叩いたからやと  思う」 あぁ… キミも それで何回か遅刻したことあるからな… でもその時は 中学の同級生も乗ってて 高校は違うけど

      • 足音【第24話】

        廻 「リンが来たわよ〜」 フリルのかたまりが飛びついてくる リンは そのかたまりをぎゅうっと抱きしめた 「リンちゃん、入って!」 フリルのかたまりが手をひっぱる タッタタッタタッタタ…… 音がだんだん大きくなる ティーポットにお湯を注ぎながら サエが振り向いた 「いらっしゃい」 トン、タタタタカッ タタタタタッタタッタタ 「あいかわらずね  あの二人座ることってあるの?」 「そうね…  食事の時と寝るときくらいね。  この間なんて、食事中に  あの子が急

        • 『Take away?』『Over there.』

          「え?英語、話せるの?」  「外国のお客さんと英語でやりとりできるんだ😯」 「話せんよ。  でもカタコトとジェスチャーで伝わるもんなんやわ。」    *** 出張の帰り道 ムスコの仕事場に立ち寄った 客のフリしてさり気なくレジに並ぶ ほぉ……… T大卒業生でも いざ会話するとなると伝わらないことがあるという したり顔で英語で話しかけてくる KB大卒の英語は 表現が古臭くて 外国人仲間たちで笑っちゃうことがあるって ALTの友人が言ってたっけ (日本語でいうと「〜

        癒えない傷口

        マガジン

        • ハハの子離れ
          25本
        • Gift(ギフト)
          1本
        • 足音
          24本
        • 画面の向こう
          2本
        • 【歌詞小説】あの日。あの場所。
          7本

        記事

          「シゴト、ヤメたいって言ったんだ」

          「は?」  過去形? 「『やりたいことがあるんです』って、店長に伝えた」 「で?」 店長はどう言ったんだい? 「人事担当に伝えるって」 「…あのさ…キミの人生だから  好きにしていいんだけどさ…  言う前に  ワタシに話してほしかったなぁ…」 「あ、それはゴメン」 ま、いいけど。 人のこと、言えた義理じゃないし。 血は争えないっていうか。 安心したよ キミは 嫌なことを嫌だと言えることに

          「シゴト、ヤメたいって言ったんだ」

          使えないお金

          「あ、これ」 ハンバーグが旨いと評判の店で 特大を平らげたムスコが 白い封筒を差し出す 「ん?何コレ?」  覗き込む。 「言ってたじゃん。  "働くようになったら、   何年かかってもいいから   月1,000円ずつでもいいから   学費の半分は返してね"   って。だからコレ、はい。」  「え?…でも足りてるの?   家賃ちゃんと払えてる?   ご飯ちゃんと食べてる?」  ふふん!  ヤツが鼻で笑う  「あげるって言ってるうちに   もらっといたら。  

          使えないお金

          「そんなに思い詰めてると思わなかった」

          「毎晩、愚痴は聞いてはいたけど、  習い事とかボランティア始めたから、  それで気分転換できてるんだと思ってた…」 あの時 「ホントにこれでいいのか」って 思ったの そして ワタシしかいなかったキミに ピン!と伸びた背筋を 見せたかった 「オレのかあちゃん、かっこエエ!」 これが次の目標。

          「そんなに思い詰めてると思わなかった」

          『見切りつけずに、育ててくれてありがとう』

          『じいちゃんにあげて』 初任給で買ったというポロシャツが届いた。 届いた、と連絡を入れると 『あのさ…』 『ん?』 『別に何かあったワケでもないんだけどさ…』 『…うん…』 ゴクリと生唾を飲み込む。 『これまでオレに見切りつけんと  育ててくれてありがとう』  さっきまで 嬉しそうにシャツを羽織るチチに チョット(いや、かなり) 嫉妬したけど いまや このジジィさえ 可愛く見える

          『見切りつけずに、育ててくれてありがとう』

          「こちらが当店一番人気の〇〇です」

          「オススメはどれですか?」 学生くささの抜けてない ひょろっとした店員に聞いてみた。 「あ、はい。」 まっすぐワタシを見て手を差し伸べる。 「お客さまの後ろにあります●●が 3番目に人気のある商品です。そして…こちらへどうぞ。」 ワタシをその先へ誘導する。 「こちらが2番目に人気の商品で△△です。それから…」 店先まで連れて行かれた。 「こちらが当店で一番人気の〇〇です」「こちら、中は□□でできておりまして………」 流暢な語りでもなく スカっと垢抜けてる風でもなく

          「こちらが当店一番人気の〇〇です」

          Happy Birthday

          『今日は、ワタシがイチバン大切に思っている日です。味わって過ごしたいと思います。 生まれてきてくれてありがとう。』 『ありがとうございます。 今年は環境が大きく変わった歳なので、今年も健やかに生きることを目標に生きたいと思います。』 キミは この世に存在してくれるだけでいい キミは ワタシがこの世にいた証だから

          「ムスコに『クソばばぁ』とか言われたりしなかった?」

          「うち、母子家庭だから…」 それだけは言っちゃいけない、って 思ってたんだろうな 聞いたことはないけど ヤツは そんなヤツだから

          「ムスコに『クソばばぁ』とか言われたりしなかった?」

          「おつかれさまです!」

          白シャツに 深緑のキャップとタイとエプロン 先輩に会釈するヤツの背中は イッパシの社会人だ なんだか鼻の奥がツンとする。 向かいに座るカップルや 隣でお茶を飲む女の子の輪郭が にじんで見える 涙の塩気が効いた抹茶あんみつ  『親の醍醐味』は苦くて甘かった

          「おつかれさまです!」

          「かぁさん、考え方バグってる。」

          大いに結構。 他人(ひと)に褒められ 他人(ひと)に羨ましがられ 他人(ひと)に評価され そんなジブンがギモンだったから そんなジブンが見本だと キミはきっと後悔するから ほめ言葉だと思っていいよね? マサカのご忠言? けどね こんなワタシになることできたのは キミがココにいるからなんだ。

          「かぁさん、考え方バグってる。」

          「早く覚えたいと思った」

          新入社員の事前研修として バイトのシフトに入ったムスコ オンラインのバイトしか知らないカレ リアルバイトは初 叩きのめされて帰ってくるであろう 胸が潰れる想いで 言葉を選びつつ聞く 「どうだった?」 I have to learn the job quickly. ではなくて I want to learn the job quickly. やるじゃないか ムスコ

          「早く覚えたいと思った」

          「7,000円?」

          「おかあさん、お仕事で1ヶ月に何円もらってると思う?」 5,000円はもらっていると思ったのだろう。 でも10,000円なんて大金はもらえないに違いない。 一年生にとって、10,000円は大金だ。 そんなカレも 今春 社会人一年生

          「お金、使い過ぎじゃない?」

          「今度の車検の時に車買い換えようかと思うのよ。」  →「その次の車検まで乗ろうよ」 「スマホ新しくしたら?就職決まったお祝いに。ついでにワタシもiPhoneに替えたいの」  →「オレは今のが使いやすいから」 「今のパソコン持ち運びしやすいけど、イマイチ使いづらいのよね。デスクトップ買おうかな」  →「それ、この間買ったばかりだろ?」 「かぁさん、最近お金、使い過ぎじゃない?」 キミを宿して決めた披露宴と 来月卒業のキミの学費。 桁違いだったけど 一ミリの後悔もない 無

          「お金、使い過ぎじゃない?」