ある弁護士のキャリア形成〔12〕-弁護士がドイツ留学を選んだ理由
日本の法律のなかにはドイツを母法としているものが多くあります。
例えば、日本の商法は、ドイツ人であるヘルマン・ロエスレルによってドイツ語で草案が書かれたといわれています。
また、私が専門とする知的財産法も立法当時、ドイツ法から多くの影響を受けており、ドイツ法と非常に似た規定が存在しています。
とはいえ、ドイツに留学する法律家の多くは学者であり、ドイツに留学する弁護士というのはそれほど多くありません。
一般的に、弁護士の留学としては、アメリカのロースクールにあるL.L.Mという1年間のコースに通い、ニューヨーク州の司法試験を受験し、その後、アメリカの法律事務所で1年間研修をするというのが典型的なコースといえるでしょう(この他、一部のファイナンスローヤーは金融都市ロンドンを擁するイギリスを選択するというコースもあるでしょう。)。
では、なぜこれほどまでに日本の弁護士がアメリカのロースクールに向かい、アメリカで研修してくるのか、というと、①言語、②ビジネス・法実務におけるアメリカの影響力という観点からみれば至極当然の流れといえます。
日本人は語学力が乏しいと言われますが、英語については比較的馴染みがありますし、弁護士として仕事をする上では英語を利用する頻度がもっとも多いので、英語圏を選ばない理由はないといえます。
また、弁護士の仕事で海外案件といえば、規模が大きい案件の多くはアメリカとのビジネスになりますので、アメリカの法制度を理解しておくこと、実務を学ぶことは、留学後を考えると非常に理にかなったキャリアステップとなります。
しかし、こうした一般的なキャリアステップも法曹人口の増加であったり、ビジネスの多様な広がりを背景に少しずつ変わってきています。
例えば、その最たる例は「アジア進出」です。
特に中国のリーガルマーケットへの日本弁護士の進出は、一時期とても盛んになりました。
その後、シンガポールを中心とする東南アジアへとトレンドは移り、ベトナム、タイ、カンボジア、インドネシア、そしてミャンマーへと多くの若手弁護士が留学、研修で向かうようになりました。
そして、現在では、インド、中東、南米、アフリカにまで留学、研修の場は広がっています。
現に、私が所属する法律事務所の同期も、アメリカに留学した後、(おそらく)唯一の日本人弁護士としてアフリカの法律事務所に出向し、活躍していますし、2年目の研修先として、インドやイスラエル、ドバイなどを選ぶ後輩が出てきています。
こうした流れのなかで、ドイツというのはある種、独特の選択かもしれません。
一つは、なぜいまさらヨーロッパ?
そして、もう一つは、日本とのビジネスってそんなにドイツはあるの?しかもそもそも英語圏でもないドイツ?
その理由を、少し長くなりますが、キャリア、語学、お金、治安などの多角的な面から書いてみたいと思います。
現在、留学を考えていて少し人とは違ったことをしたいと考えている人には参考になるかと思います。
なお、なぜ留学すべきと考えたかについては、こちらの記事をご覧頂ければと思います。
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