見出し画像

FUJI ROCK FESTIVAL'22


開催2年目の1998年から1日も欠かさず参加しているフジロックに今年も前夜祭から行ってきた。まずは世の中が何から何までとんでもないことになっているこの2022年にもフジロックが開催されたこと、そしてそれに参加できたこと、生きている実感を今回も大いに感じられたことを、ありがたく思う。

久しぶりに海外アーティストのライブをあんなにたくさん……まるでそれが普通であることのように観ることができた。洋邦問わず、観たライブ(4日間で34組)はどれも最高だった。何度か観たことのあるアーティストも、フジならではの最高の音響で最高のライブを見せていた。去年は会えなかった友達とも久々に会って話すことができた。そのほか、よかったこと、嬉しかったことは、いくらでもある。

けれども自分は、存分に楽しみながらも、どこかモヤっとした感じを拭いきれずに過ごしていたというのが正直なところだ。去年のモヤモヤとはまた少し異なる種類のそれ。

2019年のフジロック。2021年のフジロック。2022年のフジロック。同じフジロックと言えども、全体のあり方、トーンは、ずいぶん違う。2019年のフジロックは、ゴミの放置、レッドマーキー内の椅子置きっぱなし問題、ヘリノックス型折りたたみ椅子の危険な持ち歩き問題などが噴出したが、コロナ禍のコの字もまだなかったときで、今から思えば十分健全ではあった。2020年は開催が見送られた。2021年は国内アーティストだけの「特別なフジロック」となった。前夜祭なし。酒類の販売なし・持ち込み一切禁止。マスクはいかなるときでも絶対着用、声出し禁止、一定の距離をとって観ることなど感染対策が徹底され、観客はみなそれをしっかり守って静かに楽しんだが、にも関わらず主催側と参加した人たちに対する非難の声(SNSの書き込み)がしばらくやまなかった。自分も会場で「この景色、この空気。心が開かれる」と開放感をツイートしたら、「感染拡大に加担している気分をお聞かせください!」「感染しても絶対に病院に来ないでくださいね」といったリプが飛んできた。あげくに新聞までがフェス叩きをした、2021年とはそういう年だった。忘れようにも忘れられない。

マスク着用新ガイドライン、そして「いつものフジロックへ」



「特別なフジロックから、いつものフジロックへ。」。そういう打ち出しで2022年のフジロックのチケットは売り出され、そして開催された。去年のフジロックは特別でしたが、今年はいつも通りに近づけます。海外のアーティストが多数来ます。お酒も販売します。呑んで朝まで楽しむのもOKです。ということだ。

新型コロナウイルス感染症は、まだ収束が見通せる状況ではありませんが、感染状況に応じた感染防止対策を講じたうえで「いつものフジロック」を取り戻すために、スタッフ一同「音楽と自然、そしてコロナとの共生」をテーマに、創意工夫を図り安心・安全で快適に過ごせる環境を整えていきます。

フジロック・フェスティバル事務局

それで快適に過ごせる環境が整うのならば素晴らしいことだと思った。でもなかなか難しいことだろうなとも思った。だけど難しい設定をしてひとつひとつ乗り越え、積み上げてきたのがフジロックだということを僕(たち)は知っていた。なので、この難しいことをフジロック(事務局)はきっとやってみせてくれるだろうと信じた。

7月に、これはフジではないが、サマーソニックとロック・イン・ジャパン・フェスがマスク着用に関しての新しいガイドラインを発表したのも大きなことだった。熱中症のリスクが伴うので、それを避けるため、外せるところではマスクを外そうというものだ。

フジのサイトに明記された感染防止対策ガイドラインでは、「マスクの着用について」の項目はこうなっていた。

基本的な感染防止対策として、マスクの着用は重要です。不織布マスクを推奨いたします。
ただし、屋外でお客様同士距離があり発声や会話がない場合は、感染のリスクが少ないためマスクを外して熱中症の予防やリフレッシュをしてください。
会話をする際は、必ずマスクを着用していただき、周りの方へのご配慮をお願い致します。

フジロック公式サイト

国は5月、マスク着用に関する新たな考え方を示した。屋外か屋内か、距離は確保されているか、会話はあるかないかで着用を判断。場面によっては、着用の必要はないとした。それを受けて、上のようにフェスでのマスク着用ルールも変わっていった(アップデートされていった)わけだ。

因みに今年に入って自分が観に行ったフェスは、5月14~15日の「FUJI & SUN'22」、5月22日の「POP YOURS」、5月28~29日の「FFKT」に続いて、フジが4本目。それぞれ客層はずいぶん異なるが、家族連れも多かった「FUJI&SUN」は空気のいい自然の環境のなかでもみんな常にマスクを着用。「POP YOURS」は幕張メッセ内だったが、見た目のいかついラップ好きの若者たちもちゃんとマスクを着用。一方、こだまの森の「FFKT」は個人の判断に任せる形で、多くの人がマスクなしで楽しんでいたし、自分もそうした。するべきタイミングにはする。不安ならばする。そうじゃなければしない。自分の判断で決める。そういう段階に入ったんだなと感慨深くなった。実際、あの自然の環境のなかで、客数もそれほど多くないため密集することがほとんどなく、大人が多いので無闇に声出して騒ぐでもない、そういう会場で感染することは考えられなかった。どうして断定できるんだ?と突っ込まれるとアレだが、でもこの環境でこのくらいの距離感保って楽しんでいるのだからまず大丈夫だろうという安心感が自分のなかにあった。ここでマスクをするのか外すのか、いやマスクに限ったことじゃないが、ここではどうであっちではどうするか、単に主催側のルールをその通りに守るというだけでなく、都度自分でその場の状況を見て判断しながら楽しむ、今はそういうフェーズに入っているのは間違いないし、それがいいと自分は思っている。

前夜祭で感じたこと

さて今年のフジロック。前述のように「いつものフジロックへ」を謳って開催され、前夜祭も3年ぶりに戻ってきた。しかし、入場ゲート前の大人の遊園地的なエリア「THE PALACE OF WONDER」は今年もまだなく、よって「CRYSTAL PALACE TENT」もかつての「ROOKIE A GO-GO」のステージもない(「ROOKIE A GO-GO」は別の場所に移って継続)。自分は普段、ホワイトやグリーンのヘッドライナーを見終えたあと、「THE PALACE OF WONDER」でお酒を呑み始めて朝4時~5時くらいまで「CRYSTAL PALACE TENT」を中心に深夜の部を楽しむというのが常だったのだが、その深夜の遊び場が戻るまでにはもう少し時間がかかるのだろう(パレステントは最も密な空間である故)。戻ってきてない小ステージはほかにもいくつかあり、カフェドパリも木道亭も今はない。

そういう意味ではまだまだ「いつものフジロック」ではないのだが、客の意識としてはもう、ほぼ完全に「いつものフジロックをいつものように楽しもう」というものだった(そのように自分の目には映った)。悪いことじゃない。当然そうなる。自分もそうだった。が……。

会場に着くまでは、自分自身、去年のような重たい気分はまったくなく、単純にウキウキしていた。しかし3年ぶりの前夜祭の場に行き、そのあまりの人の多さと、盆踊りの様子を見たときに、これまた一気に(極端に)振り切ったもんだなと、少し戸惑いというか違和感めいたものを覚えた。それでも「あー、久々の前夜祭だ。やっぱ前夜祭は楽しいなぁ」という気持ちがしばらくは圧倒的に勝っていて、打ちあがる花火を見ながら自分の気持ちもあがっていたのだが。レッドマーキーに動いて、DJ/ライブを観ているうちに、正直、これはちょっと怖いかも、今年は感染するかもという気持ちにもなってきた。

前夜祭の翌朝、宿で感想をFBに書いてアップしたので、記録としてそれをここにも転載しておく。

前夜祭で見る花火は格別

7月29日(木)

一昨年はフジ自体が開催中止で、昨年は開催されたけど前夜祭はなし。というわけで久しぶりの前夜祭。

「ある意味、前夜祭が一番楽しいんだよな」というのはいつも思うことで、つまりその、本番初日を迎えると、あとはあっという間なわけで、最終日ともなるとなんとも言えない寂しさが襲ってもくるわけで。だから前夜祭は夏休みに入る前日の子供のような開放感で、毎年「ひゃあ~」と楽しむもの。なのだけど。さて、今年はどうだったかというと。

まず、久々のオアシス空間の人の多さに「うわ!」。久々の盆踊り。久々のスマイリー原島さん。久々の抽選会。からの花火。いいちこ水割り飲みながら「ここで見る花火はやっぱ格別やわぁ」と感じ、そしてレッドマーキーでのライブへ。いつもの通りDJ MAMEZUKAのDJで始まり、1曲目がいきなりRCの「よォーこそ」だったもんだから自分のなかの何かがポーンと弾けて、ぐわぁ~、前夜祭やっぱ最高だぁ~、ってな感じでド開放。

続く「おとぼけビ~バ~」を「す、すげぇ」なんて思いながら観ていたあたりぐらいまでは単純に楽しかった……のだが。

久々の前夜祭とあって、まわりのみなさんのはしゃぎっぷりもなかなか凄くてね。マスク無着用でお酒片手に友達に絡みついて、(レッドマーキー内は音ガンガンだから)友達の耳に顔近づけて大声で喋ってウェイウェイやってる人たちを見てたら、なんかこう複雑な気持ちになってきだしたのも正直なところ。決してはしゃぐことなくルールを守って誰もが個人個人の思い抱えながら静かに楽しんだ去年のフジを知ってる人は、ここにはひとりもいないのかなぁ、とか思っちゃってね。

全国の感染人数に関していえば去年より遥かに多くなってるここ数日だというのに、去年のフジの雰囲気とのギャップが大きすぎちゃって。感染防止対策ガイドラインとか、まったく気にしてない人が相当多いようだったし。それで僕は思ったんだけど、やっぱりお酒がよくないのではないかと。お酒で酔って一気にルールとか面倒くさくなって、マスク外して大声出してウェイウェイし出す……っていうの、あると思うんすよね、そりゃ人間だから。なので今年お酒販売に踏み切ったのは、もしかしたらまだ早かったかも、と僕は思ったな。ここからの本番3日間でこれがどういう結果に繋がるのか。感染爆発なんてことになってまた叩かれなければいいけどと少し心配にもなったのでした。

因みに、おとぼけビ~バ~は凄かったっすね。「サラダ取り分けませんことよ」とか「あなたとの恋、歌にしてJASRAC」とか「穴兄弟で鍋パーティー」とかタイトルからしてオモろ。ほのかな昭和味。HELSINKI LAMBDA CLUBはガレージパンクっぽい曲からディスコっぽい曲まで「こう!」と言えないところが面白みかな。ROOT SOULはガッツと熱量が凄くてよかったです。

帰ってきた盆踊り
MAMEZUKAのDJで、ああ今年も始まったと実感する


お酒をありにすると聞いた時点である程度予想はしてたが、それにしてもみなさん想像以上のハメの外し方。まあ前夜祭は無料だし、土地近辺の人たちも待望していたものだから、こうなるのも無理はないかと、そう思っていた。けど、それは前夜祭に限ったことじゃなく、レッドマーキーとオアシスエリアは翌日からの本番3日間もわりとそういう感じだった。自分はなんとなく、前夜祭はこうでも、そのありようについて事務局で話し合われ、翌日の本番からはもう少しピシッと締めるようになるだろう、もう少し注意喚起がなされることになるだろうと考えていた。注意喚起は、あったことはあった。が、去年とは比較にならないくらいにユルかった。「声を出すのは禁止です」と言い、それに対してレッドマーキーの前のほうの客の何人かが「ハーイ」とかなんとか声出して答えると、「声出しちゃってるし!」と笑いながらつっこむ、MCもそんな感じだったので、こりゃ徹底はされないなと思った。

レッドマーキーの危うさ。2022年のフジロックのあり方


グリーンやヘブン、それにアヴァロンステージ(元オレンジ)やピラミッドガーデンのあたりは、それなりに人がいても不安を感じることはなかった。あくまでも感覚的にだが、空気のヌケがよく、大丈夫だろうと思えた。グリーンは、前方の柵内はときどきけっこう密集していたが、PAより後ろは十分な空間がとられて、立って観ても横の人と肌が触れることもない。だがホワイトはちょっと様子が違った。ホワイトは基本的に椅子に座って観ることを禁止され、あの場所内に立って観る人たちがギュッとかたまることになる。特に前のほう。去年同様、距離をとるための黄色い目印が打ち込まれているのだが、それを気にせずテキトーに立つ人が少なくなかった(去年はみんなしっかり守っていた。見回るスタッフも配備されていた。今年はそういうスタッフはいなかった)。一番酷いと感じたのはレッドマーキーだ。特にダンス系アクトのとき。酔ってマスク無着用でおもいきり声だしている人、友達とふざけあっている人が多くて怖かった。なるべくそこから離れて観ようと思った。が、目に見えない飛沫を避けるのは無理なこと。途中でもう諦めた。

そう、自分は途中である意味、諦めた。というか覚悟をした。感染したくないならレッドマーキーのアクトは観ない。観たいなら感染もありうるという覚悟を決めて観る。どっちかしかないと思って、結局自分は後者をとった。

外を歩いているとき、外のステージでライブを観ているとき、今年の昼間は特に暑かったので、マスクをしないでいる時間が長かった。レッドマーキーに入るときやトイレに入るとき、オアシスで食べ物を買うときなどにはつけたけど、つけてない状態のラクさに慣れるほどつけてる状態が息苦しくなるのは事実で、そうして徐々に自分を守るための対策がユルんでいった。まんまとムードに流されたとも言える。そういう反省もある。

ここで結果を書くと、自分は陽性だった。帰宅後、アプリのCOCOAで「2日間に合計568分の間の接触」という目を疑うような通知があり、(何もなくとも検査は受けるつもりでいたが)すぐにかかりつけの医者で検査してもらったところ、そういう結果だった。というわけで、陰性だった妻とは先週から別居中。因みに苗場で一緒に過ごした友達は全員陰性だった。

恐らくレッドマーキーにいたときだろうなぁ、とは思うが、いつどのタイミングでかかったかなんてわからないし調べようがない。ただまあ、陽性という結果が出たとき、ショックというよりは、「そりゃそうだよな」と思わず苦笑してしまった。前夜祭でレッドマーキーに入ったときから、「今年は感染するかもな」という不安があった。が、途中から「したらしたでしょうがないか」という気持ちにもなっていた。感染しないようにできるだけ注意して自分を守る必要があるのは当たり前のことだが、完全なる対策なんてない。かかるかもしれないという可能性を考え、そのつもりで参加する。そのつもりで楽しむ。

言ってみれば、つまり今年のフジロックはもうそういうフェーズだったということだ。フジロックに限らず、2022年夏のフェスはそういうフェーズを迎えている。あんなにしっかり感染対策がなされていた2021年のフジロックとはずいぶん様相が変わっていたのは確かだし、自分がそれに戸惑ったのも事実だし、モヤっとしたものを拭いきれずに過ごしていたのも事実だが、とにかく主催側は自信をもって今年のようなあり方を選び、推進したのだ。それがよかったのか悪かったのかの答えが出るのは恐らく来年の夏だろう。

では、続いて、3日間に観たアクトの感想を。去年のようにひとつひとつ長めに書く余力がないので、FBにメモ書き程度に書いたものをそのまま載せておく。

7月29日に観たアクト(感想)

7月29日(金)。観たのは以下の通り。

ASOUND→KIKAGAKU MOYO→Original Love→Night Tempo Ladies in The City Live Set→苗場音楽突撃隊→Awich→HIATUS KAIYOTE→SYD→BONOBO→清春。

約12時間。座って観ることはなく、どれも立って揺れながら観た。でも不思議と疲れない。フェスに来るとアドレナリンが出まくって、疲れることがない。音楽って不思議だね。

アヴァロンで、ASOUND。ZELDAのサヨコさんの娘ちゃんで、3~4年前には小玉さんのバンドに加入してたこともあったARIWAさんがヴォーカル&トロンボーンのラヴァーズロック~ダブ系の若手バンド。ステージ下の向日葵と晴天っぷりがARIWAさんの明るいキャラによく合っていた。男性3人の腕とセンスも抜群(ドラマーはまだ18歳だとか)。ジャネット・ケイにミュートビュートにジャミロクワイまでいろいろ背景が見える音楽性。ちょっと追いかけてみたくもなるバンド。東京でライヴあったら観に行こう。

ヘブンで、KIKAGAKU MOYO。初めて観たが、たまらんギター音。陶酔。しかし今年で活動休止するそうな。という意味も含めて貴重なライブだった。

グリーンで、Original Love。初(だよね?)のグリーンであるも、MC一切なしで、とにかく数々の名曲群(前半ファンクチューン多め)を次々に。テンダーも1曲ゲスト参加。田島さんは最早オーティス・レディングとかとある意味同類の声の出力。破格のソウルシンガーに仕上がった。最高。

レッドマーキーで、Night Tempo Ladies in The City Live Set。いつもの昭和歌謡ダンスDJではなく、ゲストを迎えて自身のオリジナルをかける形のお披露目ライブ。まさかフジロックでボニーピンクと野宮まきさんを観る日が来ようとは! しかし進行の仕方などいろいろスローすぎる。オリジナルだけで楽しませるのはまだ早いのでは。工夫と洗練が必要。あと、ボニーにはせめてもう1曲歌ってほしかった。

苗場食堂で、苗場音楽突撃隊。ゲストなしの全曲洋楽カヴァー。Dipヤマジのギター音がとにかくやばかった。

レッドマーキーで、Awich。Pop Yoursで観たときとはいろいろ大きく変えてのライブ。途中からソイルのメンバーを従えてのバンドセットに。エゴラッピンの「色彩のブルース」を混ぜてラップしたところがあって「お!」と思ったら、なんとエゴのよっちゃんがステージに出てきて、がっつり「色彩のブルース」を歌ってくれた。Awich、今が旬的なパワーみたいなものもあって素晴らしい。

グリーンで、HIATUS KAIYOTE。前回は昼の暑い時間帯だったが、今回は夜で、その時間帯にぴったり。ひたすら気持ちいい。ネイパームは片乳房全摘したのを隠さない衣装で歌っていて、かっこいいと思った。それにしても男性3人の演奏がどうかしている。今まで観てきた彼らのライブで今回が一番よかった。

レッドマーキーで、SYD。シャーデーのTシャツがよく似合っていてかわいらしかった。あのミニマルな編成であんなにいい感じのグルーブ出せるのはすごい。

ホワイトで、BONOBO。圧巻。生楽器音とエレクトロ音の融合の妙。そして雄大な自然を映す映像の迫力。始りは音がやや小さい?と感じたが、どんどん迫力が出てきて、引き込まれまくった。音楽性は異なれど、数年前のODEZAの感動に近いものがあったかも。ホワイトのトリの電子系アクトは大抵素晴らしい説あり。

ピラミッドガーデンで、清春。かっこよくて面白いという唯一無二加さ。観たら好きになっちゃうよ。なったもん。

ということで、優勝はBONOBO。2位、オリラブ。3位、HIATUS KAIYOTE。って感じかな。

7月30日に観たアクト(感想)

7月30日(土)。観たのは以下の通り。

T字路s→SHERBETS→SNAL MAIL→KYOTO JAZZ SEXTET feat.森山威男→GLIM SPANKY→FOALS→ARLO PARKS→Cornelius→どんぐりず。その後、Night Tempoの昭和グルーヴDJセットの音漏れを聴きつつオアシスで呑み。会場にいたのは約13時間。

ヘブンで、T字路s。2人演奏のあと、トランペットとサックスが加わったことで、カヴァー曲も先日のツアーとはまた違った味わいに。ラストは渾身の「スローバラード」。これをラストに選んだのは清志郎の愛したフジだからでしょう。清志郎に聴かせたかった。

ホワイトで、SHERBETS。ここ数年のフジで、しかもホワイトで必ず観るのが、ベンジーの何かしらのバンド。去年はAJICOで今年はSHERBETS。誰とやってもベンジーはベンジーなんだが、このバンドは4人が同等でベンジーもいい塩梅の力加減でいつも楽しく演奏しているように見える。メンバー紹介の仕方など聞くにつけ、彼も丸くなったなと。

ホワイトで、SNAILMALE。前に観たのは朝霧JAMで、2回目となる今回はフジロック。何かのインタビューでリンジーが「オアシスは世界最高のバンド」みたいなことを話してたのを読んだが、ステージでもオアシスTシャツを着用。サウンドチェック時から自分のギターやメンバーの楽器の音量調整になかなか満足がいかなかった様子だったが、始まってからも度々スタッフに音量の指示を出していたし、ギタリストくんに何かダメ出ししてもいた。なので、少し苛立っているように見えなくもなかったが、それは正しい拘りだし、帰っていくときはいい笑顔を見せてくれたのでよかったよかった。次は室内での単独を観たい。

ヘブンで、KYOTO JAZZ SEXTET feat.森山威男。後ろのほうで座って観る。とにもかくにも御年77歳の森山さんのドラムが凄いんだが、それに挑みかかる栗原健さんのサックスもやばい。「やっぱりジャズとロックは野外に限ります」って、森山さんがそう言うと重みがある。

ホワイトで、GLIM SPANKY。これまで岩盤、レッド、グリーン、ヘブンとやってきたGLIMが今回はホワイトでバンドセットにて。FOALSに移動するため途中までしか観れなかったのにこう書くのもなんだが、これまでのフジのどの会場よりもホワイトステージは彼らに相応しかった。特に序盤の3曲のロックを叩きつける感じやよし。ヴォーカルもギター音も、ホワイトの素晴らしい音響によって厚みが感じられた。1曲目のダミーロックで背景にサイケな映像が映されたのも効果的。虹を出すあたりも、「もってる」なと。

グリーンで、FOALS。結論から書くと、今年のフジの国外アーティストに限って言えば、自分的には彼らがベストアクト。新作がプリンスやナイル・ロジャースの影響を感じさせるダンスロックで、僕はめちゃめちゃ愛聴してて、それをナマでどう聴かせるかが期待のしどころだったわけだが、「ウェイク・ミー・アップ」で始まった前半でその回答を示し、後半4~5曲は怒涛のロック攻勢。それ、サマソニで観たときより強度が増した印象で、ロックのライブの興奮ってこれだよなぁと。ヘッドライナーの前でありながら、実質ヘッドライナーと言っていいような最高のライブだった。優勝!

実質グリーンのヘッドライナーと言っていい堂々たるライブだった

レッドマーキーで、ARLO PARKS。去年特によく聴いた大好きなシンガー・ソングライターなんだが、グリーンからレッドに移動したくらいではFOALSの興奮が冷めなくて、すぐには自分内モードチェンジができず。すごくいいライブを見せてくれている、ということを理解しつつも、Corneliusを前のほうのいい場所で観るという今年の目的を果たすべく、数曲でレッドを離れる。今度は落ち着いて観るのでまた来てね。

というわけで、そのあとジャック・ホワイトが控えるグリーンを気にせず素通りして、早々にホワイトへ。約1時間前から中央のいい場所とって、ドキドキしながらCorneliusの出番を待った。セット設営を座って見ていたときから感情がおかしくなってきて、妻は横で既に泣いていた。で、ライブがスタート。小山田くんはさすがに頬がこけ、無理もないがやはり相当痩せていた。が、ライブはとてつもないクオリティの高さ。初めのうちは声から緊張が伝わらないでもなかったが、それでよくなくなくなるなんてことはまったくなかった。それどころかギターをかき鳴らす際など得も言えぬ気迫が伝わってきた。ライブの内容自体は、休む前のそれから激変させるのではなく、以前のそれをベースとしながらところどころアップデートさせた形。少しアレンジをいじるとか、映像を一部変えるとか。だがつい先日リリースした新曲が加わったこととMETAFIVEの「環境と心理」が加わったことで、ショー全体から受ける印象は以前とはだいぶ違う。僕は観ながら度々震え、泣きそうになった。例えば開幕時、幕が落ちて4人のシルエットが映ったその瞬間。「マイクチェック、聴こえてますか?」というファンタズマのあのフレーズをそこに生声で乗せた意味。それから音源ではmei eharaが歌っていた新曲「変わる消える」を自ら歌ったとき。小山田くんは坂本慎太郎によるその歌詞を(言葉を)一語一語聴き取りやすい声で歌った。だからその歌詞がそのまま小山田くんの心情そのものとして聴こえてきた。ゆっくりゆっくりやってきて、存在が消える感覚を味わって、それからゆっくりゆっくり再生に向かっていったのだろうと想像した。それから「環境と心理」を歌ったクライマックス。昨年の同じホワイトステージの同じ時間帯に、砂原良徳とLEO今井による「緊急事態中のMETAFIVE」はラストにこの曲をやり、そこで自分を含めた多くの人が涙した。LEO今井のその歌には特別な感情が乗っていた(サポメンの永井聖一の弾いていたギターは小山田くんのものだった)。そんな「環境と心理」を、もうMETAFIVEとして聴くことができなくなった今(あの件で発売が見送られたアルバムが今度ようやく出るが、それはラストアルバムであることが先頃発表されてしまった)、小山田くんが自分のものとして歌う。連続ドラマの伏線回収じゃないが、そこに特別な「意味」をどうにも感じてしまって、どんな思いでこの曲を彼がセトリに加えてどんな思いで歌っているのだろうと考えたら感情が揺れまくった。それから「あなたがいるなら」を歌ったとき。その歌詞もまた意味付けされてしまって響いてきた。と、そんなふうに観ながら何度か感情がぐらつきながら、それでもそこで繰り広げられる演奏と映像の圧倒的な融和の凄さが勝って、僕は泣かずにライブに没入できた。しかし最後の最後、演奏が全て終わり、小山田くんがサングラスを外して「どうもありがとうございました」と丁寧に発語して頭を下げ、観客の何人かが「おかえりなさい」と言い、そしてやりきったという思いでほっとしたような笑顔を見せて彼が手をふってステージを去っていったときに、僕の涙腺は遂に決壊。温かく迎えてくれたたくさんの観客の姿を見て、きっとほっとしただろうなとか考えながら、ああ、よかったなと、しばらくそこから動けずにいた。

レッドマーキーで、どんぐりず。大好き故に今年だけで彼らのライブをもう4~5回観てるんだが、レッドマーキーの音圧は凄いし、彼らは普段よりもBPMあげて本気で盛り上げに来ていたし、その乗せ方も振る舞いもラップも実にこう堂々たるもので、これまで観てきたなかでのベストライブじゃないだろうかと思った。

7月31日に観たアクト(感想)

7月31日(日)。観たのは以下の通り。

T字路s→七尾旅人→鈴木雅之→ALTIN GUN→BLACK COUNTRY,NEW ROAD→角野隼斗→SUPERORGANISM(2曲)→小袋成彬→TOM MISCH→MOGWAI→HALSEY。

朝10時、宿近くのピラミッドガーデンで急遽決まったT字路sを観てパンとスープ。一旦宿に戻ってお風呂に浸かり、13時過ぎの七尾旅人からヘッドライナーのHALSEYまで。会場にいたのは1時間+9時間半=10時間半。

ピラミッドガーデンで、T字路s。前日に決まったという代打ステージはふたりだけで。セトリは「泪橋」を除いて前の日のヘブンからほぼ総入れ替え。カヴァーは「星影の小径」「ユウマズメ」「トンネル抜けて」「宵待草」「襟裳岬」「愛の讃歌」などで、個人的には前日のヘブンよりも好みの選曲。「宵待草」などは久々に聴いた気がする。ヘブンくらいの大きな場所でバリバリ気合入ったステージを観るのもいいが、ピラミッドガーデンくらいのこじんまりした場所でリラックスして演奏しているのを観るのもやっぱりいい。妙子さんの喋りの割合もわりと多めで、そうそう昔はこんな感じだったよなぁとも。

ヘブンで、七尾旅人。久々のバンドセット。「Rollin’ Rollin’」はkan sanoの手によってかなりファンクっぽく、続く「サーカスナイト」はネオソウルっぽくアレンジされ、これまで何度も聴いてきたそれらとは別の曲のようで非常に新鮮だった。「Don’t Say Good Bey」ではゲストの大比良瑞希さんをフィーチャー。最後はバンドメンバーが去って、弾き語りで「途方もないこと」を。フジロックのようなお祭りの場所でも今の世界に対する思いをこうして歌わないでは終われない、そういうところがやっぱり圧倒的に信頼できる。

ホワイトで、鈴木雅之。MISIA、スガシカオと、ここ数年のフジはブラックミュージックのフィーリングも持った大衆的歌手をこのくらいの時間に挿しこみことが増えたが、遂に来たかという驚きのブッキング。だが、野外のロック祭典のしかも真昼間という本来なら完全にアウェイであるはずの場所&時間であれほどの満杯の観客(入場規制も出たそうな)の心をたちまち掴んでしまうのだから、やはりマーチン、第一級のエンターテイナーだ。大ヒット「違う、そうじゃない」を歌えば客はフリを真似し、モーリス・デイ(ザ・タイム)のバード・ダンスのように手をヒラヒラさせれば客はどっとウケる(もっともあれがバード・ダンスからきているとわかっている人はほとんどいなかったようだが)。前日にはT字路sもカヴァーしたRCの「スローバラード」を真正面から堂々熱唱することでフジと清志郎への敬意を示したあたりもさすがだったが、この日の見せどころはそこからで、桑野信義と佐藤善雄を呼び込んで「ハリケーン」「め組のひと」「ランナウェイ」「夢で逢えたら」とシャネルズ~ラッツ&スターのヒットを4曲も。多幸感とはこのこと。「ランナウェイ」でクワマンのトランペットソロが苗場の空に高らかに放たれたときには思わず涙…。あんな景色を見ながら吹けたんだから、癌に負けなくて本当によかったとクワマンもきっと思ったことだろうし、生きててくれてありがとうと言いたくもなった。そして二人は去り、最後はソロデビュー曲にして永遠の大名曲「ガラス越しに消えた夏」をじっくりと。素晴らしかった。あまりにも完璧なソウルショーだった。

ヘブンで、ALTIN GUN。自称フジロック芸人・ハライチ澤部によって一気に知名度があがったターキッシュ・サイケデリアのアルトゥンギュン。トルコふうのメロディラインやシタールの音色が効いていて、それがサウンドの特徴にもなっているが、めちゃくちゃクセが強いというわけでもなく、意外と聴きやすいダンスミュージック(個人的にはもっとトルコ的なアクの強さを多めに入れてもいいのにと思った)。とにかく踊り出したらとまらくなる中毒性、あり。

ホワイトで、BLACK COUNTRY,NEW ROAD。純粋さ、瑞々しさのカタマリ。汚れた心を持っていたら彼らのよさは理解できないだろう、というくらいの。女性メンバーのひとりが最後に歌ったあとで泣いていたのはなぜだったのか。何か悲しいことを思いだしたのか、それとも嬉しかったのか。わからないがそのカノジョを抱きしめるほかのメンバーたちのあたたかさに心が洗われた。

ヘブンで、角野隼斗。まったく存じ上げなかったんですが、「かてぃん」の愛称でYouTubeでも超大人気のピアニストだそう。プロフィールを見ると2021年のショパン国際ピアノコンクールでセミファイナリスト…など輝かしい経歴で、フジロックが選んだからには従来型とは違う何かを持つピアニストなんだろなと思い、観る。後ろのほうで座って聴いてたのだが、坂本龍一「千のナイフ」を除けばロックフェスを意識しての選曲はなく、ガーシュウィンの「ラプソディー・イン・ブルー」で終わるまで、王道的な(という言い方が合ってるかわからぬが)クラシックピアノを正面から聴かせた。ヘブンでクラシック?となる人もそりゃいそうだが、実際的にはあの空間に彼のピアノの音色は実に合っていた。たまたまではあるけど、知ってよかった。

ホワイトで、SUPERORGANISM。音源は聴いていたが、観るのは初めて。だが自分のそのときのモードには合わず。小袋成彬の最近のライブがいいらしいとSNSで漏れ聞いていたので急ぎ足でレッドマーキーへ。

レッドマーキーで、小袋成彬。噂の通り、確かにとんでもなくよかった。こんなにいいライブをやる人だったのかと驚いた。もっとも前に自分が観たのはソニーからメジャーデビューするにあたって開かれた業界お披露目的なライブで、それから4年以上が経っているのだから、そりゃ進化していて当然なのだが。それにしてもラップとヴォーカル表現のスキルの高さ、3人のコーラスが醸し出すゴスペル~ネオソウル味、レッドマーキーならではの重低音。文句のつけようがない。「ちょっといいすか? オレ、配信断ったんすよ。オレの音楽はクーラー効いた部屋のPCの前でゆったり聴くもんじゃなくて、このクソ田舎の苗場にわざわざ来て、Super organismを蹴ってまでこのステージに来た人たちのためにあるんすよ」。この言葉がそこに集まった人たちの気持ちのツボをズボっと押して、みんな「いえ~い」ってな感じでめっちゃ盛り上がったし、僕も「クソ田舎は失礼だろ」と思いつつも盛り上がった。そしてそのあとのMC聞いてても思ったのだが、意外と感じのいい人だった。数年前の宇多田さんとの対談だったかで音楽ライターという職業をディスるような発言してるのを読んだあたりからずっと嫌な感じの人、面倒くさい人という印象を自分は抱いていたんだが、この日のライブ運びや、ツアーの最後だからみんなで乾杯をと、ビール、プシュッとやって、その音をダブっぽく響かせて「よっしゃ」と喜んでる無邪気な姿見てたらそれまでの印象が完全に覆ったのだった。

グリーンで、トム・ミッシュ。さすがに4日目とあって足が痛くなってきたので、グリーンの後ろのほうで椅子に座って聴く。心地よくて半分居眠り。これまで何度か観ているが、今回は特に心地よさ成分が高めだった気がする。

レッドマーキーで、MOGWAI。始まる前からレッドに集まった人たちの「このときを待っていた」感がすごいし、熱い。1曲終わる度にありがとうとお礼を言うメンバー。出る音はああいう轟音なのに、なんだかとてもあたたかな空気がそこに満ちていた。最後まで轟音を浴びていたかったが、ホールジーを始めから観たかったので途中で移動。

グリーンで、ホールジー。今年の大作ライブアルバムをけっこう聴いていたので雰囲気は掴んでいたのだが、やはりナマで観るとなると大違い。ドラム、ギター、キーボードの3人がバックバンドなのだが、出る音の迫力はとんでもないし、映像は全てが強烈で社会的メッセージの強いものだし(ちょっと生理的にキツいなと感じた映像もあったが)、主役のホールジーは歌のみならず凄まじいダンス~動きで感情をダイレクトに伝えてくるし、自分は初めから終わりまでずっと圧倒されっぱなしで、途中でMURA MASAのホワイトへ移動する気持ちもなくなって、とにかくホールジーに見入った&聴き入っていたらあっという間に終わってしまったという感覚だ。従来のロックバンドのライブともポップシンガーのライブとも異なる、まさしく2022年型のライブの形・見せ方・あり方。今年のフジロックで自分的には最も「今」を感じたステージだった。人生で一番好きだというケイト・ブッシュ「Running Up That Hill」をこのタイミングでカヴァーしたことも、そう思った要因。最後は花火、バーン。3日間通して唯一観たグリーンのヘッドライナーだったが、人が少なかったとはいえ、3日目のそれに実に相応しかったと僕は思いました。

また来年。


で、イエロークリフでひとりで締め呑みしてチルって帰るかとモヒートとケバブとポテトを買って座った途端に雨!  4日間ほとんど降られなかったのに、最後の最後にザッバー!。そうそう、フジってそういうものだった。

この日のベストライブは……ホールジーは凄かったが、多幸感という意味においてやっぱ鈴木雅之だな。「Tシャツに口紅」も「街角トライライト」も聴きたかった。また出てね、マーチンさん。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?