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「POP YOURS」@幕張メッセ

2022年5月22日(日)

幕張メッセで『POP YOURS』。

ラップミュージックは普段から好んで積極的に聴くほうではない。特にアメリカのラップミュージックには歳をとるほどに距離を感じるようになって、2010年代半ば以降はまともに聴いてない。さすがにケンドリック・ラマーの新作級のものともなれば、聴いて言葉の意味がわからずとも「こりゃすげぇ」と思うんだが、有名でも一度もちゃんと作品を聴いたことがないラップアーティストがたくさんいるし、今はもう名前と曲と顔が一致しない人が多く、つまりまったくついていけてない(ついていこうという気持ちがずいぶん前から失せてしまっている)。

日本のラップもちゃんと追いかけることをしてないが、でもCDは買わないまでも気になったらサブスクで聴けるものは聴いてみたりする。主流じゃないけど好きなラッパーも何人かいる。とはいえライブを観に行くかというとなかなか行かない。ロックフェスなどに出ていてたまたま観ることのできたラッパーはいても、この4~5年くらいの間に単独ライブを観に行ったラッパーは思い返すとKOHHくらいかもしれない。機会があったら観てみたいと思っていたラッパー、気になっていたラッパーはいて、でも単独を観に行くまでの決心はつかなくて、自分の観に行くフェスとかに出てくれてたら観れるのにとか勝手なことを考えたりして。そのくらいの温度感。

だったのだが、Awichのメジャーデビュー作にはさすがにがっつりつかまれて、ライブを観たいと思っていた。3月の(早くも伝説的な)武道館は都合がつかずに行けなかったんだが、観た人の感動を伝え聞いてレビューを読むほどに悔しく、ライブ観たさが募っていた。なので今回が初開催となる大型ヒップホップフェス『POP YOURS』にAwichが出ると知って、早くにチケットを獲った。一度ナマのライブを体感しないことには本質がわからないと思っていたBAD HOPも同じ日に出るし、ほかにも今が旬の日本のラップアーティストたちがどんなライブをしてどういう客がついてどんなうねりになるのかを知るには、こういう大型フェスは最適だと思ったのだ。

2日間開催で、この日は朝から家で、どんぐりずとFuji Taitoとralphを配信で観た。どんぐりずは大好きなのでライブも数回観ているんだが(先週もFUJI&SUNで観たばかりだし、今週末もFFKTで観る)、この日も短い時間ながらふたりの持ち味を活かしていた。ralphは初めて知ったんだが、かっこよくて、MCもよく、背景を読んでまた惹かれた。そのあとしばらくして妻と家を出て、会場でC.O.S.A.→Tohji→5lack→BIM→Yellow Bucks→Awich→BAD HOPと観た。

わかってたことだけど観客はみんな若くて(ほぼ10代・20代)、50代の僕はたぶん最高齢。よく行くロック系のフェスとかは若者に混ざって50代以上のおじさんもいたりするものだが、まったくいない。若者オンリー。でも、いかつい人ばっかみたいなことでは全然なく、むしろ本当に心から今のラップミュージックが好きでしょうがないミュージックラヴァーたちばかりといった印象で、こう言っちゃなんだがEDM系多めのフェスとかよりもよっぽど良質なお客さんたちが集まっていたように感じられた。

それと配信で見た人たちは臨場感も捉えたカメラワークのかっこよさを感じたことと思うが、それ、ドローンカメラが導入されていたから。パフォーマンスしてるラッパーたちの周りをドローンカメラが常時飛び回っていて、なるほど、これからはこれが当たり前になっていくんだなぁと。

観たなかでは、まずTohjiがよかったし、面白かった。ライブの運びの上手さが際立っていたし、なんたって華がある。かっこつけの仕方に笑いすら含まれる。そこ、ちょっとI.W.G.P.のキング=窪塚くんっぽかったりも。立ち振る舞いも含めて華があるってのはホント大事だよなと強く思った。

BIMはバンドセット。Yogee New WavesやSuchmosやOvallの間違いないメンバーがバックについてる故、音楽的にも楽しめた。PUNPEEやSTUTSやDaichi YamamotoやkZmやどんぐりずが次々に出てきて仲良く絡み、さながらフェス状態。日本の多様なラップシーンのなかで、BIMはひとつのハブの役目を果たしてもいることもよくわかった。

圧倒的かつ別格だなと感じたのは、やはりAwithだった。本気度が違うというかなんというか。40分のステージに思いの全てを込めているという印象。そして40分のなかでドラマを見せているという印象。フェスの1ステージだからといって何一つ抜かない、全身全霊のライブ。それ故、僕の周りの女の子たち数人が泣いていたし、僕もグッときた。ラップ、歌、一挙手一投足、目の強さ、すべてに強い意志が感じられた。今の彼女をナマで観ることができただけでも幕張に足を運んでよかったと思ったのだった。

こういうフェスはありがたい。健全な環境で、シーンのいま現在と移り変わりをざっくりと体感として知ることもできる。定着することを願っている。

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