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FUJI ROCK FESTIVAL'21 (中編)

非難。分断。「どんな覚悟?」


2021年8月21日(土曜)。フジロック2日目。

金曜の夜、宿に帰って、夜に苗場に着いた友人とひとしきり語らってから布団を敷き、寝る直前にこうツイートした。

2021年になって今日が一番楽しかったし、生きてる実感が持てた。いい1日だった。

2年ぶりに参加したフジロックの初日、苗場の空気を吸いながら、各ステージ前で音の振動をカラダに感じながら、会場内を歩き回って久々に肉体的なリアル疲れも感じながら、ああ生きていると実感が持てた。それをそのままツイートし、幸せな気持ちで眠りについたのだ。

土曜の朝。起きて朝食をとり、少ししてからみんなのフジロックの感想など見ようとツイッターを開くと、「#fujirock」で検索するまでもなくフジロックに関するあれこれのツイートが流れていた。「配信で見てたけど〇〇のライブがよかったー!」といったものもあったが、ほとんどはこの時期に開催したことに対する批判だった。いや、批判よりも非難のほうが多かった。それは主催者だけでなく、出演アーティストや、自分のように参加した客にも向けられていた。怒りというか感情剥き出しの罵詈雑言ツイートも少なからずあり、批判が起こるだろうことはわかっていたものの、ここまでなのかとたじろいだ。ムードにのっかってとりあえず叩いとくという連中が湧いて出てくるのはツイッターの常だが、信頼して自分がフォローしているジャーナリストだったり音楽やフェスに理解のある物書きや文化人だったりも厳しい言葉で「否」の意見をツイートしていて、前日夜に無邪気にツイートした自分の気持ちはシュルシュルと縮んでいった。折坂悠太さんが前日にあげた出演辞退に関する文が重く頭に残っていたのもある。さらに悪いのは、肯定するひとと否定するひとのツイッター上でのやりあいがけっこう見られたことで、つまりはっきりと分断が起きていた。また分断だ。フェスが、フジが、分断の元になるなんて最悪だと思った。それでこんなふうにツイートした。

ツイッターでいろんな報道やいろんなひとの意見・批判・思いなど読むと大きな手が左右から同時に伸びてきて自分の心をがっとつかんでぐわっと両側に引っ張っている感覚をおぼえるな。突き詰めて考えれば考えるほどに引き裂かれそう。難しい。難問すぎる。フジ2日目の宿の朝。

「考えれば考えるほどに引き裂かれそう」「難しい。難問すぎる」というのは、このnoteを書いている今日に至ってもぬぐえずにいる感覚だ。むしろますますそれが増してきたようにも思える。

「前編」に書いたが、フジ初日の昼間に自分はこうツイートした。

苗場。快晴。
この景色、この空気。
心が開かれる。
覚悟と切実な思いをもって、ここに来た。ここにいる。
細心の注意をはらいながら、3日間、音を浴びまくる。

これをツイートした日には何もなかったが、土曜の午後になって次のようなリプがきた。

どんな覚悟かお聞かせ願いたいです。
感染しても医療提供を受けないという覚悟でしょうか。イベント後2週間は自主隔離するという覚悟でしょうか。
ずっと自粛続けていても感染してしまう世の中で自宅待機で苦しんでいる人も多い中、遊びに行かれている人達が重症化して病床数使われるのは許せないです

これがリツイートされ、「いいね」も20コ以上つき、続けて以下のようなリプもとんできた。

どんな覚悟なんだろう。聞いてみたい。
感染拡大に加担している気分をお聞かせください!
感染しても絶対に病院来ないでくださいね
五輪に反対していた奴が普通にフジロック行ってるのなんなんだよ。

どれも見ず知らずのひとからのものだ。自分はツイッターの文字数内の言葉で理解してもらえる自信もスキルも持っていないし、ヘタに反論しても火に油を注ぐことになるだけだろうからしなかった。正直、見たときには嫌な気分になったが、でも冷静になって考えると、確かに遊びに来といて「覚悟と切実な思い」もないもんだ、となる気持ちは理解できなくなかった。このような状況になり、医療現場が逼迫し、多くのひとが苛立ちやストレスを溜め込んでいる。故にこうした言葉を吐き出し、ぶつけたくなる。これが2021年の夏なのだ、ということをちゃんと覚えておこうと思った。

家でこもっているときにこういうことがあったりしたら悪いほうにばかり考えがいってしまいそうだが、そのとき自分がいたのは空気のいい苗場で、2日目もまた前日に引き続き快晴。なので深呼吸して気分を切り替え、前日同様ライブを楽しんだ。というわけで、2日目のライブの感想を。

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21日(土曜)に観たライブの感想。

2021年8月21日(土曜)。観たのは以下の通り。

カネコアヤノ→SIRUP(中盤30分)→AJICO→THE SKA FLAMES+元ちとせ→Alina Saito&君島大空→Char→metamorphose project(EIKO+ERIKO|EYRIE)→The Birthday→King Gnu(3曲程度)→NUMBER GIRL(前半45分)→ROVO(後半35分)→THE SPELLBOUND(後半3曲)。

ほんとはホワイトステージのトップバッターであるtricotから観たかったんだが、間に合わず。同じホワイトでの2番手、カネコアヤノからスタート。観るのは初めてだ。音源を聴いていた限りではフォークに立脚したひとという印象だったんだが、そこで見られたのは男性メンバーのディストーションギターが炸裂するオルタナロックバンド表現で、カネコさん自身もガシッガシッと思い切りよくギターをストロークし、顔を歪めて歌ったり。その表情は、理不尽なことで大人に怒られて「私は悪くないもん」「わかってたまるか」と睨み返すきかんきの強い子供みたいで、それがなんとも魅力的だった。奈良美智の描く子供のようだ。心にパンクが宿ってるんだな。表情もだが、声のデカさ・強さもいい。終盤の曲など、まさに魂の叫びといった感じだった。こんなにもロック的な強度のあるひとだったとは!    MCはなく、最後に「ありがとうございました」とだけ言ってお辞儀してさっと帰るあたりの潔さもかっこよかった。

グリーンステージに動き、後ろのほうに座ってSIRUPを20~30分観る。この時間、相当気温があがって汗がとまらず、買ったばかりのポカリが一瞬でカラに。SIRUPは、2019年6月に長野県・こだまの森で行なわれたフェス「FFKT」の第1回目で初めて観た。そのときの彼の出番は朝方6時だか7時だかのチルな時間帯で、自分も草の上に寝転んで半分居眠りしながら観ていたものだった。それからそう時間が経たないうちに彼の知名度は急激にあがり、どんどん人気者になっていった印象だ。2019年のFFKTではどんな編成でライブをしてたか覚えていないけど、今回2年ぶりにフジの最も大きなステージであるグリーンでのライブを観て、バンド音は厚みがあるし、彼は場所の大きさにしっかり見合った華のあるパフォーマンスをしているし、ああ相当の進化を遂げたんだなぁと思った。歌唱自体のスタイルはまったく違えど、観客の惹きつけ方は久保田利伸に通じるところもあるようなないような。6人からなるフルバンドのアンサンブルも聞きものだったが、やはりSIRUPのテンダーな歌声がよく、スローでは癒しも感じられた。また1曲1曲の曲紹介がコロナ禍のいまに響く(考えさせられる)言葉でもあり、18日にいち早く「フジロック出演にあたって」という誠実な文を提示したことと、それは繋がっていることがわかったのだった。

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ホワイトステージに戻ってAJICO。自分はサンプラもリキッドも行きそびれたのだが、ようやく現在のAJICOをフジロック・ホワイトステージというこの上なく彼らに相応しい場所で観れるという喜びは大きく、登場前から気持ちがあがりまくり。かなり前のほうの中央に立って登場を待った。結論から書くと最高だった。それぞれの場所で長くキャリアを重ねてきた大人のミュージシャンたちが、時を超えるロックを鳴らしていた。UAもベンジーもTOKIEさんも椎野恭一さんも鈴木正人さんもこれまで別のバンド(またはソロ)で度々フジロックに出演していて、自分は度々この会場のどこかで観てきたわけだが、そんな5人がひとつのバンドとしてここホワイトステージに立っている。立つべき場所に、いま立っている。そう感じた。しかも今年発表した新作の曲もやりながら、それぞれの過去の曲も思った以上に多く演奏した。それがどれも現在進行形のAJICOの曲になっていることが素晴らしかった。オープナーは、元はブランキーの曲「ペピン」だった。2曲目はSHERBETSの「Black cherry」だった。10年前のAJICOの「波動」や「美しいこと」も演奏された。UAは「悲しみジョニー」も歌った。さらにはブランキーの「水色」もあった。それらが2021年のAJICOの曲として放たれていた。そこにしびれた。ベンジーはギタリストとしての個性と魅力を十二分に伝えていた。蛍光色のカラフルなゴムで髪を結わいたUAは軽やかに跳ねてよく動きながら歌い、歌っているとき以外はほとんど笑顔で楽しそうだった。TOKIEさんの弾き姿は麗しく、黒と白のコントラストがハッキリした衣装も似合っていた。椎野さんのドラムはAJICOという生き物の心臓の拍動のようだった。そして過去曲と新曲が理想的に混ざり合い、2021年のAJICOのサウンドとして鳴っているのは、鈴木正人さんのセンスが大きくものを言ってることもよくわかった。今の世の中の状況や今回の開催に関して具体的に何かは語られなかったが、選ばれた曲とその並びに彼らのメッセージが込められているように感じた。2021年という特別な年にこうしてホワイトステージで演奏できている、その嬉しさと誇りが5人から感じられた。ベンジーは何度もピックを投げ、最後の「深緑」が終わると「ありがとう」と言って、なんとも柔らかないい笑顔を見せた。なんだか胸がいっぱいになってしまった。

フィールドオブヘブンでTHE SKA FLAMES+元ちとせ。前日からずっと晴れていたのに、彼らのライブの前には突如豪雨に。それが小雨になったタイミングでTHE SKA FLAMESが登場した。伊勢さんは浴衣姿。町内のお祭りに集まったおじちゃんたちといった雰囲気に和んでしまう。オーセンティックで、決して速すぎないスカのビートは、ヘブンという場所に合いすぎるほど。ギャズ・メイオールの「Gaz’s Rockin’ Blues」40周年を祝ってザ・スカタライツの曲をやったりもするもんだから、後ろで座って観ていたひともたまらず前のほうに来て踊り始めたり。そして中盤、「奄美ワルツ」に続いて始まった奄美民謡(をレゲエにした)「Uncyaba」の演奏半ばで、元ちとせが満面の笑顔で登場。赤い羽織が鮮やかで、動きの思い切りもいい。ちとせさんは同郷のメンバーらとこの曲をナマで歌えるのが嬉しくてしょうがないといった感じだ。続いてデビュー・ヒット曲「ワダツミの木」も。観客たちは声を出せずとも、心のなかで「おおっ」と気持ちがあがっていたことだろう。実は今回彼女が歌った「Uncyaba」と「ワダツミの木」は、奄美のライブハウス「Roadhouse Asivi」の20周年を記念して昨年リリースされた12インチに両A面扱いで収録されたコラボ曲。なので、この2曲は必ずやるだろうと自分はふんでいたけれど、やはり「ワダツミの木」のブラス部分などはナマで聴くと格別なものがあった。ああ、また奄美に行きたい!    ちとせさんが去ると、再びスカ・モードに。ラスト、「Rip Van Winkle」「Tokyo Shot」の2連発ともなれば、こっちも右手と左手をお腹の前で交差させながら大きく踊らずにいられない(ディスタンスのおかげで大きく踊っても横のひとに迷惑かからないのがいい!)。36周年のTHE SKA FLAMES、今年初のライブ(だったそうな)。ここで観ることができてよかった。

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アヴァロン・フィールドで、Alina Saito&君島大空。君島大空くんと言えば、2019年のフジロック、深夜のROOKIE A GO-GOに、ゆうらん船に続いて出演していたのをまず思いだす。どしゃ降りのなかでびしょ濡れになって観た彼のステージは衝撃的だった。今回はあのときとはまったく違い、最奥地のアヴァロンというゆったりした環境でアコースティック・デュオとして行われるもの。繊細だがニュアンスに富んだ彼のギターは、構造的には違えどボサノヴァに近い趣があった。歌われるのはカヴァー曲多めで、松田聖子「SWEET MEMORIES」から、くるり「バラの花」、マイケル・ジャクソン「Love Never Felt So Good」まで。アリーナさんの伸びやかな美声もステキだが、君島くんのほうがもっと声が高くてジェンダーレス。やはり唯一無二。このユニットの発展に期待したい。

ヘブンに戻って、Char。1978年のゴダイゴをバックにした武道館公演で初めて観て以来、これまで何十回(何百回?)とライブを観てきた、自分にとって最愛のミュージャン。今年も2月のかつしかシンフォニーヒルズ、4月の日比谷野音と観ているが、Char、澤田浩史 (Bass), 小島良喜 (Keyboards.), ZAX (Drums)という現編成によるアンサンブルはますます確かなものになった感があるし、ZAXという若いドラマーを迎えたことでCharのプレイも若々しくなったように感じるのも気のせいではないだろう。オープナーは「Moving Again」で、こんな世の中の状況だけどまた動き出すのだという宣言のようにも、今聴くと思えてくる。5曲目で「空模様のかげんが悪くなる前に」を演奏してからは、「SHININ' YOU,SHININ' DAY」「SMOKY」「TOKYO NIGHT」と初期のお馴染みのソロ曲を続けてやり、「TOKYO NIGHT」では「ナ~エバ・ナイト!」とも歌っていた。締めは「Rainbow Shoes」だった。9月には実に16年ぶりとなるオリジナル・ニューアルバム『Fret to Fret』をリリースするが、そのことには一切触れず。かつしかでも野音でも演奏されたリード曲の「Stylist」(Char流のシティポップで、初期の2作を想起させる曲)は歌ってくれるだろうとふんでいたのだが、それもなかった。聴きたかったけど、10月のビルボードライブ、そして12月には武道館もあるようなので、そこまで待つとしよう。因みに雨男のCharだが、演奏中には降らず。フジロックにCharがいることのありがたさを当たり前と思わず、これからも1回1回しっかりと観続けたい。

再びアヴァロンに戻って、metamorphose project(EIKO+ERIKO|EYRIE)。米バークリー音楽大学ジャズ作編曲科出身のEIKOとRINA による新しいピアノ連弾ユニットで、ドラムの男性がそこに加わる形。自分が観るのは初めてだ(というか、この形でライブをやるのも初めてだと言っていた気がする)。ジャズ的であり、曲によってはプログレッシブロック的。連弾ピアノがこんなに厚みのあるものなのかと驚かされた。ミニマルなのにグルーヴも広がりもある。電子鍵盤(シンセベース)を立って弾く姿は絵的にもかっこいい。夕方のアヴァロンによく映えたが、今度は夜の深い時間に凝った映像付きで観てみたいとも思った。

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ホワイトで、The Birthday。フジで観るのは何度目で、いつ以来だろう(レッドマーキーは4~5年前だったか…)。単独ももちろんいいが、フェスでThe Birthdayを観るのが大好きだ。1時間なら1時間のなかで緩急をつけ、長尺ライブとは異なるドラマを凝縮して見せてくれるからだ。今回のホワイトもそう。新作『サンバースト』を先月出したばかりだが、決して新作お披露目会などにはせず、これまでの代表曲もバンバンやりながら、そこにうまく(意味を持たせながら)新曲を混ぜていく。幕開けは『サンバースト』のオープナーでズッシリ重たい「12月2日」。そして2曲目、ポップなロックンロール「カレンダーガール」で観客を楽しませ、その勢いと幸福感を保たせたまま「なぜか今日は」。勿体ぶらず、2曲目で「カレンダーガール」をもってくるくらいだから、自分を含め、みんなたちまち引き込まれることとなる。「カレンダーガール」のサビではみんな一緒に歌いたくて、でも声は出しちゃダメだから、マスクのなか自分だけに聞こえるくらいのボリュームで歌っていたに違いない。4曲目「オルゴール」でテンポ感を変え(「おーおおおー」というコーラス部分もみんな心のなかで歌ってたはず)、5曲目「青空」ではギター、ドラム、ベースと各楽器の鳴りの個性が明確になる。夏の夜に相応しいスカ・ビートの「SUMMER NIGHT」では自分なりのモンキーダンスでのっていた人も少なくなかった。が、今回の1時間のなかのハイライトはなんといっても次の「月光」だっただろう。藤井のギターが空気を切り裂くように鳴り、ヒリヒリした展開のなかチバが言葉を放つ。「おまえの想像力が現実をひっくり返すんだ」。『サンバースト』のなかでも最もしびれた曲でありフレーズであるが、ナマで放たれるその言葉の威力は凄まじく、ウイルスでおかしくなった今のこの世界だからこそ尚更ぶっ刺さった。「Red Eye」、そして待ってましたの「涙がこぼれそう」。「電話 探した あの娘に聞ぃかなくちゃ」。いつもなら観客が、あるいはチバ以外のメンバーの誰かが歌うこともあるその始まりを、ここではチバが歌う。でも、僕には聞こえた気がした。心のなかでそこをシンガロングしているみんなの声が。その声が夜空に響いているイメージが広がり、まさしく涙がこぼれそうになった。ラストは「OH BABY!」で、サビでみんなが腕を高くつきあげていた。「あの場所まで ゆけるよ そう思うよ」。確かにそう思わせてくれる。去り際、スクリーンに一瞬映ったチバの笑顔がよかった。いいライブをやりきったという満足感だけでなく、こんな状況のなかでそれぞれの思いを持ちながらこの場所まで来て、腕をあげたり心のなかで歌ったりしていたオマエらが最高なんだ、それが嬉しいんだと、そう言ってるような笑顔だった。

自分的にはThe Birthdayが終わって相当の満足感のまま次のNUMBER GIRLまでそこで待とうかとも思ったのだが、やはりひとつでも多く観たほうがいいかとグリーンに動いて、King Gnuを。ものすごいひとの数。恐らく3日間でこのときが最大人数だったんじゃないか。3曲程度、遠くから眺めるように観たが、集中して観たわけじゃないのにわかったようなことを書くのもよくないので、ここでは何も書かずにおく。

またホワイトに戻って、NUMBER GIRL。自分は昔のNUMBER GIRLを観たことがあるが、「観たことがある」というくらいで、ほとんど観ていない。作品もいくつかしか聴いていない。ちゃんと通らずにきていて、向井秀徳さんに関してはソロやZAZEN BOYSのほうが回数観ている(といってもそんなには観ていない)。その程度の人間なので何を書いても説得力などないから流して読んでもらっていいが、その程度の自分でも感じたのは、田淵ひさ子さんと中尾健一郎さん、おふたりのプレイの確かさで、このふたりがバンドを引っ張っているんだなということだ。プロに対してこう言うのも失礼だが、とてつもなく上手い。そのようなプロフェッショナルなギタリストとベーシストが、「2021年のNUMBER GIRL」を成り立たせているのだなと思った。向井さんの歌い方というか声の出し方は、年齢もあるのか昔のNUMBER GIRLのときとは違っているような気がしたけれど、何曲かのメロディアスな部分の歌い方が、以前よりもシンガー然としたものになっているようにも感じた。あと、あんな獰猛で歪みまくった音でありながらも、進むに連れてどんどんグルーブが増していくのがすごい。一見グチャッとしているようで実際は非常に整合性のとれたバンドなのだな。存在感も楽曲パワーも「昔の」という印象が1ミリもなく、そこまで思い入れの強くなかった自分でもかなり圧倒された。昔からのファンにはたまらないライブ、「やっぱすげえ」と再確認できたライブだったんじゃないか。

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45分くらいNUMBER GIRLを観て、ヘブンに移動。ROVOを後半の35分くらい観る。ヘブンのROVOは間違いないのだ(が、大多数のひとはグリーンのKing GnuかホワイトのNUMBER GIRLを観ていたようで、いつものヘブンのROVOのようにたくさんのひとがいたわけじゃなかったのが勿体なかった)。ヘブンは照明がなく、かなり暗かった。始め、後ろのほうに立ってみると、ステージと背景の森がひとつの大きなスクリーンのようになって光の模様が映し出されていた。そこでメンバーが演奏していて、さながら宇宙空間にいるようだった。だから音そのものに集中できた。1音1音の粒が見え、僕は宇宙遊泳するみたいに踊りながら、音楽としての美しさにも酔ったのだった。いや、すごかった。最高。

完全に満足して下山するように出口方面へ向かったのだが、レッドマーキーはまだやっていたので、もう少し会場にいたくてフラっとそっちへ。レッドの後方をちょっと中へ入ったあたりの場所でTHE SPELLBOUNDの音を聴いた。想像よりもバンド感あり。かっこよかった。またチャンスがあれば流しじゃなくちゃんと観てみよう。

全て観終わり、いつもならここからお酒呑んでオアシス付近で友達と喋ったりパレステントで踊りまくったりするんだがな、とか思いながら出口へ。でもまあ、このくらいの時間(0時ちょい前)に終わるのも翌日に疲れが残らなくていいのかもな、とも。

この日の自分的ベストアクトは、The Birthday。もう一組選ぶならAJICO。午前中の引き裂かれたような気持ちは、とりあえずリュックの下のほうにしまって出さないようにしておいた。

(最終日のライブの感想はまた次回)

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