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【95.水曜映画れびゅ~】"Everything Everywhere All at Once"~隣の芝生が青いのは、当たり前~

"Everything Everywhere All at Once"エブリンシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス(以下『エブエブ』)は、現在公開中の映画。

先日行われた米アカデミー賞にて、10部門にて11ノミネートされ、7冠を達成しました。

★受賞
助演女優賞(ジェイミー・リー・カーティス)・脚本賞・助演男優賞・編集賞・主演女優賞・監督賞・作品賞
☆ノミネート
助演女優賞(ステファニー・スー)・衣装デザイン賞・作曲賞・歌曲賞

第95回米アカデミー賞 結果一覧

あらすじ

経営するコインランドリーの税金問題、父親の介護に反抗期の娘、優しいだけで頼りにならない夫と、盛りだくさんのトラブルを抱えたエヴリン。そんな中、夫に乗り移った“別の宇宙の夫”から、「全宇宙にカオスをもたらす強大な悪を倒せるのは君だけだ」と世界の命運を託される。まさかと驚くエヴリンだが、悪の手先に襲われマルチバースにジャンプ!
カンフーの達人の“別の宇宙のエヴリン”の力を得て、闘いに挑むのだが、なんと巨悪の正体は娘のジョイだった…!

公式サイトより

マルチバースを飛び回り、悪の親玉を倒せっ!

エブリンは、自分の人生をドン底と思っていた。

経営するコインランドリーの税金問題に頭を抱えながら、父親の介護の面倒も見なければならない。

夫のウェイモンドは頼りにならないし、娘のジョイは反抗期真っ只中で、家族関係は最悪。

そんなある時、急にウェイモンドがおかしなことを口走り始める。

「僕は君の夫じゃない。別の宇宙ユニバースからきた、
君の知らない"アルファ・ウェイモンド"だ!」

なんのことかさっぱりのエブリンだが、アルファ・ウェイモンドによると、世界は数多くのマルチバースから成り立っており、その時空を超えて彼はエブリンに会いに来たというのだ。

その目的は…

マルチバースの存在を脅かす
悪の親玉"ジョブ・トゥパキ"を
エブリンの手でぶっ倒す!

やっぱりなんのことだかわからないエブリンをそっちのけに、マルチバースを飛び回る前代未聞の戦いが始まる!

なんでもありの"アトラクション映画"

何の取柄もなかったエブリンがマルチバースを舞台に、カンフーしたり、料理したり、恋愛したりして、悪の親玉をぶっ倒すという”なんでもあり”のクレイジーすぎるストーリー。

その感覚は、言ってしまえばテーマパークの人気アトラクションのようなもの。

「ワーワー」「キャーキャー」と騒いでいたら、もう映画は佳境へと進み、そしてエンドロールが流れている頃には”エブエブ”ジェットコースターの感覚がクセになっちゃてて、「もっかい乗りたいっ!」と思ってしまっていました。

その結果私は、観た翌日におかわり鑑賞(笑)

そんな感じで魅了されまくった『エブエブ』は「超面白いっ!」の一言に尽きます。そしてその面白さについては、変に言葉を並べてみるよりも、とにかく映画を観に行っていただきたいですっ!
(レビュー放棄…苦笑(*´з`))

隣の芝生が青いのは、当たり前
(以下、ネタバレ要素があります。)

そんな面白さ全開のクレイジーな作品『エブエブ』ですが、終盤ではガラッと雰囲気が変わる場面があり、そこで語られる”人生へのメッセージ”には、強烈に心を打たれました。

今回の舞台である”マルチバース”。
この映画で言う”マルチバース”とは、「人生の分岐点で別の選択をしていたら」生まれていた自分の人生のこと。

例えば、冴えない人生を送っていたエブリンは「夫のウェイモンドと結婚してなかった」人生で、”ミシェル・ヨー”のようなハリウッドスターとなっている世界へと飛びます。そして、その華やかな人生に魅せられたエブリンは、「今の人生を捨ててミシェル・ヨーの人生に身を任せてもいい」とまで考えてしまいます。

そのエブリンの感覚…決してわからなくもありません。

だって、人は誰しも一度くらいは人生の選択肢を思い返すことがあるのではないでしょうか?

あの時、恋人にあんなひどいことを言わなければ…
あの時、もっと勉強していれば…
別の就職先に進んでいれば…
お金持ちの家庭に生まれていれば…
コロナなんてなければ…

そうやって別の人生を夢想して、今の人生に不満をめ込んでしまうこともあるでしょう。

そんな「隣の芝が青く見える」ことは当たり前なことだと思います。

…でもそんな人生は、ただの幻想にすぎません。

そんな幻想よりも、今の人生、そしてその人生のなかでしか会えなかった愛すべき人たちのほうが、数十倍も尊いものです。

確かに、今の人生が満足いくものではないかもしれない、どん底に思えることだってあるかもしれない。

それでも、その人生のなかで愛すべきことを愛し、寛容になることで、これからの人生の道は開けてくるのではないかと思います。

人生に楽観的であることは、
決して世間知らずなことではない

子役時代に『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』(1984)で成功を収めながら、人種の壁に阻まれてハリウッドから干されたキー・ホイ・クァン演じるウェイモンドの口から語られるこの言葉は、希望のある人生を信じて一歩を踏み出す背中を、優しく押してくれました。


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次回の更新では、ハリウッドの栄枯盛衰えいこせいすいをデミアン・チャゼルが最高の音楽とともに贈る映画"Babylon "バビロンを紹介させていただきます。

お楽しみに!