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デザインとはコミュニケーションである

2017年4月に宮崎県新富町が設立した地域商社「こゆ財団」は、1粒1,000円ライチのブランディングをはじめ、ふるさと納税の寄付額を2年間で約5倍にしたり、さまざまな加工品をリリースしたり、人材育成を手がけるなどしています。

2年間という短い期間での出来事に、全国の自治体や地域づくりに携わる方々からは、そのノウハウや手法に高い関心を寄せていただいています。多くの場合、どこか一発逆転のホームランを打とうとされているようにも感じます。

しかしながら、多くの方がこれだけ多様化し不確かさを極める社会においては、まちづくりに「こうすればよい」という黄金律はありません。

しいていうならば、小さな成功を積み重ねることだけが、唯一の方法ではないかと思っています。

ここでは、その理由をお伝えしたいと思います。

商品開発は、雇用をつくるためにある

少子高齢化が進行する中、全国の自治体ではほぼ例外なく何らかの地域活性化に取り組んでいます。その多くで、東京にあるようなお洒落なカフェが誕生したり、美しいデザインパッケージの商品が生まれたりしています。

地域ごとに課題や悩みは異なるはずです。にも関わらず、似たようなデザインのものが量産されているのはなぜだと思いますか?

背景には「やって終わり」になっている事実があります。

例えば、地方自治体では、基本的に単年度で予算が組まれています。商品開発であれば、夏までに企画開発、秋〜冬でイベントを実施。年度末までに報告書を仕上げる、というのが主なスケジュール。

問題は、「報告書を仕上げる」ところがゴールになりがちという点で、そのために東京のデザイナーや広告代理店を登用し、商品を仕上げてしまっています。

本来は地域に担い手が生まれ、継続して改良や販路開拓を重ねていくことが大事なのに「やって終わり」。地域の産業にならないので雇用は流出し、地域における人材の空洞化を加速させてしまうというスパイラルに陥っています。

「やって終わり」では未来はありません。ここで必要なのは、ビジネスの仕組みをいれることです。

地域らしさを大切にする

地域商社「こゆ財団」では、そのスパイラルから脱却し、地域に経済をつくりだそうと活動しています。

基本としているのは、ビジネスの仕組みを入れること。「やって終わり」の空虚な商品やサービスをつくるのではなく、ちゃんと稼げる強い地域経済をつくることをミッションとしています。

だから、全国の取り組みとは同質化しません。生まれた商品やサービスには「らしさ」を感じる価値と、思いを持ってチャレンジしているプレイヤーが存在しています。

同質化しないことが、さまざまなメディアから注目を集めています。おかげで移住者が増え、また新たな人との関係も生まれる。その流れで新しい仕事の可能性が高まり、予算もつく。ビジネスの仕組みを入れることで、いいサイクルが生まれています。

ちなみに、ビジネスの仕組みを入れるうえでは、プレイヤーの「らしさ」を最大限に尊重することが大切です。「こうでなきゃダメだ」と押し付けるのではなく、プレイヤー本人の「こうしたい!」という気持ちを大切にすること。それが結果として商品やサービスにも「らしさ」が反映され、ビジネスもうまくいくと感じます。

意識決定は、地域の未来を妄想する

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役場、地域の事業者、農家、こゆ財団メンバーが集まった写真(photo by Waki Hamatsu)

こゆ財団は設立してまだ2年ながら、たくさんのことに取り組んできました。そのため、「どんなプロセスで意思決定をしているのですか?」とよく聞かれます。

答えはとてもシンプルです。地域がどうすればよくなるか。すべての意思決定は、そこを基準としています。

ビジネスの仕組みを入れることの大切さをお伝えしましたが、一方でビジネスの観点からは決してベストな判断ではなかったとしても、それをやってみるということもあります。

なぜなら、町には多様な人がいて、価値観も多様だからです。勢いのある若手起業家もいれば、地元のお母さんがいて、大学生もいる。当事者たちが自分たちで考え、悩みながらやっていくことが、商品やサービスに手触り感を生み、「らしさ」につながっていきます。

すべての人がビジネスのプロではありません。

成功もすれば失敗もします。そこにこそ学びがあり、人材は育つ。これがひいては地域の武器になり、味方も増え、地域がよりよくなる。こうした観点で意思決定をすることが大切だと思います。

デザインとはコミュニケーションである

地域ごとの個性は異なるのに、なぜかどこにも同じようなお洒落なデザインのカフェやPRツールがあるという話をしました。

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