虐待犬ナツ 〜幸せな犬生へ〜
人からの虐待を受け、完全に心を閉ざしてしまった犬にアナタの人生の最後を看取ってもらえたら人として、どんな気持ちになれるんだろうか?
第四話
職員会議の打ち合わせでナツについての話し合いがあった。
山岸佳子「心は開いてくれない日々が続いていますがご飯も食べるようになってきています。立ち上がる事は一度もないです。健康面では足などに異常はなさそうですが、なぜ立ち上がる事をしないんでしょうね。」
職員「どういった状況で虐待を受けていたのかは分からないけど、立ち上がる事すらも許されない虐待を受け今のナツにもその時の事が脳裏から離れてないんじゃないかな?」
山岸佳子「今後の里親探しなど考えていく上で、ナツの歩行訓練も進めていきたいと思います。」
施設長「ナツもこのセンターに来てからだいぶ日が経ってしまっているから、里親探しも始めていかなきゃな。今の状態では難しいか...」
この日から佳子はナツが自分の足で歩いてくれるよう歩行訓練を始めた。
山岸佳子「ナツ、まずは立ち上がる練習していこう!」
オヤツを使ってナツが自分で立ち上がる訓練や、佳子がナツを抱き抱え立ち上がる感覚を持たせる練習をしていた。
この訓練を毎日1ヶ月以上行ったが、ナツは立ち上がる事はなかった。
山岸佳子「ん〜。なぜナツは嫌がるのかねぇ。」
今月の里親探しのイベントが行われていた。
この日も奈津ちゃんの家族はイベントに来てくれていた。
山岸佳子「奈津ちゃんこんにちは!今ナツは立ち上がれるように訓練始めたんだよ!」
奈津「ナツ歩けるようになろうね。」
山岸佳子「じゃあ今日はナツの事、抱っこしてみようか?」
奈津「え〜いいの!!抱っこしたい」
佳子はナツを抱っこさせた。
奈津「ナツ私でも持てるぐらい軽いね!一杯食べて太らなきゃね」
佳子は初めて奈津の母親に奈津の車椅子の事を尋ねた。
母親「奈津は小さい頃から心臓に障害を持っていて、普段の生活でも寝る前に酸素吸入器をつけて生活していて歩いたりするのも難しくこのように車椅子に乗って生活しているんです。小さい時から動物を見るのが好きみたいで、こちらのイベントを知ってからは、毎月来る前の夜には寝れなくなるぐらい楽しみにしています。最近では動物を家で飼いたいと言い出してます。」
山岸佳子「そうなんですね!奈津ちゃんの病気は良くなってきてるんですか?」
母親「いえ、奈津の病気は今の医療でも治すのが難しく色々な治療はしてもらっていますがこの先治っていく兆しは難しいとお医者さんには言われております。」
山岸佳子「...そうなんですか。」
ナツを見つめ楽しそうに話しかけている奈津を見て佳子は言葉を失ってしまった。
奈津の家族が帰って行った。
山岸佳子「奈津ちゃんまた来月も来てね!」
奈津「うん。」
次の日の職員会議
山岸佳子「施設長、無鉄砲なお願いかもしれませんが、次回からナツを里親探しに参加させても宜しいでしょうか?」
職員「まだナツは難しいんじゃないの?あの状態だと里親になってくれる人は見つからないんじゃないの?」
施設長「今のナツを一般家庭に預けて環境を変えてしまったらナツがまた心閉ざしていってしまう気がするが。」
山岸佳子「いつもナツを見に来てくれている親子がいるんです。その子供がナツを凄く気に入っていて家で飼いたいと言ってくれているんです。その子も病気で時間が限られているため1日でも早くナツとの生活をさせてあげたいんです。」
職員みんなの答えは「里親になりたいという人がいれば問題はない」だった。
山岸佳子「ナツは新しい家族の元へ行くのは嬉しい?」ナツに問いかけていた。
第五話に続く
最後まで見て頂いて本当にありがとうございます! 皆さんに喜んで頂ける物語を今後も頑張って作っていきたいと思います!宜しくお願いします