見出し画像

虐待犬ナツ 〜幸せな犬生へ〜

人からの虐待を受け、完全に心を閉ざしてしまった柴犬にアナタの人生の最後を看取ってもらえたら人として、どんな気持ちになれるんだろうか?

第十話

10月初旬の秋晴れの日。

母親と奈津はナツを連れて三人で公園へと出かけた。

母親「じゃあ奈津ここで、シート広げてお弁当たべようか?」

奈津「うん!!」

母親「いっぱい作ってきたから、全部残さず食べてね!」

ナツをドッグカートから降ろし、2人はシートに座りお昼ご飯を食べ始めた。

奈津達の前の丘の上では、昼の散歩で訪れている他の犬達がたくさんいて、みんな元気よく走り回ったり犬同士じゃれあったりしていた。

奈津「ナツもさ、あの子達みたいに他のワンチャン達と遊べたら、ナツはもっと幸せなんだろうな。もしナツがうちの家で生まれてたら、今頃どんなナツになっていたのかなぁ。走り回る元気なナツを見てみたいよ。」

奈津はお弁当を口に頬張りながら、ナツに問いかけていた。

母親「そうだね。人も動物も生まれ育った環境でその先の未来が変わってきちゃうからね。けどさ、今までのナツの人生でこんなにも大切にしてくれている飼い主は奈津だけなんだから、きっとナツは今凄く幸せだとママは思うよ。毎日奈津が一生懸命面倒見てあげたら、きっとナツも他の子達みたいに、走り回ったり感情を出してくれたりするよ!」

母親は微笑みながら、奈津に話しかけていた。

母親「さぁお弁当あともうちょっとだから、頑張って。」

奈津「うん。」

お弁当を食べ終わった頃だった。

奈津「今までママには言わなかったけど、私ナツとお話できるの。私がナツに話しかけるとナツも答えてくれるんだ。」

母親「本当に?!」

奈津「本当だよ。ナツを始めて見た時にナツが私に話しかけてくれたの。奈津と一緒に遊びたいって。だから私、ママにナツと一緒に暮らしたいってお願いしたの。」

母親「そうだったんだね。ママはナツがいつも奥の方で1人でいたから可哀想で一緒に住みたいって言ってたのかなぁと思ってた。」

奈津「違うよ。いつも会うとナツは話しかけてきてくれていたんだよ。また会いに来て、いつも来てくれてありがとうって。」

母親「ナツも嬉しかったんだね。」

奈津「ママさ、私…もうすぐ死んじゃうでしょ?」

母親「…何言ってんのよ」

奈津「私が病院から帰った時から、ナツが毎日私に言うの。ずっと一緒にいたい、奈津頑張ってって。ナツも何かを感じて私に言ってくれてるのかなって。最近では体調の悪い時の方が多いから、でもさ少しでもママとナツと一緒にいれるように頑張りたいって思う。」

母親「…そんな事ないよ。私達はずっと一緒にいられるから」

奈津「ママ大丈夫だよ。今だって、いつだって私はママとナツといられて本当に幸せだから。」

娘は自分の置かれている状況を知っている、知っているのに周りのために強く振る舞う姿を見て、母親は何も言い返す事が出来なかった。

帰り支度をしている時だった。

「あれっ?奈津ちゃん?」

山岸佳子が奈津の前に現れ、話しかけてきた!

山岸佳子「やっぱ奈津ちゃんとナツだ!」

奈津「佳子ちゃんだ!散歩しにきたの?」

山岸佳子「うんそうだよ!ナツも一緒に来てるんだね!」

山岸は保護センターの犬を連れ、この公園を訪れていた。

山岸佳子「今日はいい天気でお散歩日和りだね!奈津ちゃんもナツも元気そうで良かった!お母さんもご無沙汰しております。」

奈津「新しいワンちゃん?」

佳子はまだ子犬のダックスフンドを連れていた。

山岸佳子「うん。この子も可愛いでしょ?保護センターの新入りの子だよ!この子の気晴らしに散歩に来てるんだ!」 

久しぶりの山岸佳子との再会で三人は会話が弾んだ。

山岸佳子「奈津ちゃんまたね。今度はナツも連れて保護センターに遊びきてね!」

奈津「うん。絶対に行く!」

山岸佳子と別れ、三人は帰宅した。

第十一話は続く。


「ど・ヤンキーホームレス中村君」


2018年11月7日。
東京都府中市の伝説のホームレスヤンキーは、
34歳の若さでこの世を去った──。
…………………………
実際に暴走族だった作者の体験をもとに書かれた血湧き肉躍る青春フィクション。

Amazon Kindleにて好評発売中です!









最後まで見て頂いて本当にありがとうございます! 皆さんに喜んで頂ける物語を今後も頑張って作っていきたいと思います!宜しくお願いします