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「宇多田ヒカル『BADモード』の共同プロデューサー、Floating Pointsとはどんな人物なのか? 」あとがき

昨年のJ-WAVE(81.3fm) SONAR MUSIC 「新世代UKヒップホップ特集」出演をきっかけに新たに運用していこうと心に決め、数記事を投稿したnote。

その後、色々あって投稿を中断していましたが、この度晴れてnoteの世界に帰還しました。今回より「Jun Fukunagaのnote」、シーズン2スタートです。

そんなわけでシーズン2第1回目は、宇多田ヒカルの最新アルバム『BADモード』参加で話題になったイギリス人プロデューサー、Floating Pointsに関する話です。

ロンドンを拠点に活動するFloating Pointsは、2009年頃からクラブミュージック界隈で注目を集め出して以来、10年以上に渡りシーンの第一線で活躍しています。

ただ、宇多田ヒカルヘッズや一般的な音楽ファンからすると"正直、どこの誰かもよくわからない人"というのが本音のはず。

そういった人に向けた記事をということで、先月インターネットラジオ局「block.fm」からのご依頼で「宇多田ヒカル『BADモード』の共同プロデューサー、Floating Pointsとはどんな人物なのか? その正体に迫る」という記事を寄稿させていただきました。

その記事では、Floating Pointsのキャリアを紐解くための要素のひとつとして、ロンドンの「CDR」という若手プロデューサー向けのイベントにも触れています。

「CDR」は、参加者が自分のデモ曲をCDRに焼いて主催者に提出すると曲が良ければDJタイム時にプレイしてもらえるというイベントです。自分がロンドンに住んでいた当時はイーストロンドンの人気音箱「Plastic People」で開催されていました。

現在、私は主にエンタメ系のライターとして活動していますが、その当時は音楽制作をしていたため、実は何度かそのイベントにデモを持ち込んだことがあります。

ちなみに私のデモ曲がプレイされた時の動画がこちら。

自分のデモがDJに選ばれてプレイされるとやっぱりうれしかったし、トラックメイカーとしての自信にもなりました(もしかしたら若かりし頃のFloating Pointsも同じように思っていたりして)。

ちなみに現在のCDRについて調べてみたところ、最近はサウスロンドン・エレファント&キャッスルにある「Corsica Studios」という、現地の若者の間で人気のクラブで開催されているようです(そのエリアにはかつてAphex Twinが住んでいたと噂された某施設があります)。

現在はイギリス各地でも開催されているCDR(以前はベルリンなどでも開催されていた)

というわけで当時の「CDR」の思い出話を今回のまくらにしてみたわけですが、記事では他にも私がロンドンで初めて見たFloating PointsのDJプレイの話にも触れています。

そのことについて、以前やっていたブログ「FUXX THE HYPE」に詳しく書いていたことを思い出したので、今回はその当時の文章を新たに整えた形の"リマスター"版を公開します。

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こんばんは。ひさしぶりの更新となりました。皆様いかがお過ごしでしょうか?ロンドンでは、朝晩はもうかなり肌寒くなってきました。

今回はロンドンパーティー便りです。

先日Urban Bass musicシーンで頭角を現しているFloating PointsがDJ setで出演するパーティーがあり、ふらりといってまいりました。

当日はJazzでクラウドをスイングさせ、DiscoなどのRare grooveからDub Technoまでを(隠し味程度に自分の曲)をプレイしていたので非常におもしろかったです。レコードもかなり持ち込んでいたみたいで後ろのラックに相当数あるのを目撃しました。

中でもおもしろかったのは、Jazzをプレイしている時にミキサーのLoを相当上げて、Bass Music化させていた点です。本人もこの感じが好きなのかノリノリになってブースで踊っていました。

それとミックス自体はJazzをはじめ、色々なジャンルを横断するのでカットイン的につなぐことが多かった気がします。でも彼はまだ若いながらも相当ディグってるみたいで、そんな感じの音楽的に懐が深い感じがみてとれました。

*実際には1986年生まれなのでその当時でもすごく若いわけではない。

あと黒人ばかりの出演陣の中、白人は彼一人。それでもブラックミュージックをかけまくって一緒にクラウドをロックしていたのですが。人種の壁とか文化の違いとか、そういうのって本当にそれが好きなら関係ないんだなっていう光景がそこにあったような気がします。

ブラックミュージックを白人がプレイして黒人に認められるには、やはり相当な知識とセンス、理解力が必要だろうし、何よりそれが好きっていう気持ちがないとこの感じにはならないのかもとも思いました。

それとこのパーティーでは黒人の共演DJたちがBack to basic的に昔のエレクトロファンク的なアプローチでDJしていたのが印象的でした。

Roland TR-808、俗にいうヤオヤのビートだけでライブしたり、さらに今にもアフリカバンバータかかりそうな勢いの選曲をしていたりと、かなり興味深かいセットが披露されていました。

特にTR-808でのライブは、Bass Musicでも今だったらBodikaあたりがやってる感じというか、そこにさらにグルーヴに重きを置いてよりミニマルにした感じというか。昔の機材特有の制限されたシーケンスだからこそだせるそのグルーヴみたいなものがビンビンに伝わってきました。

この黒人DJたちもFloating Pointsと同じでまだ若そうに見えましたが、それを見ていると今の若い世代がエレクトロファンクなど古い音楽を"逆に新しい"ものとして、解釈してるのかなと勝手に思ってしまいました。

この感じのDJは、おそらくまだロンドンでもアンダーグラウンドだと思いますが、何しろここは"音楽の都"。なので、もしかしたら近いうちにBass MusicシーンでもPost UKG, Future garage的な位置づけで一気に流行するかもしれませんね。

*この後にTR-808を使ったTrapが世界を席巻することになると思うとおもしろいfrom2022

余談ですが、以前私が聴いたFloating PointsのDJ setはこちらで聴けます(その日のセットもこんな感じ+Rare groove funk, discoでやってました)。

*現在は聴けず

ちなみにプレーリストはこんな感じ。この日もBrian Auger & Oblivion Express「Whenever You're Ready」をプレイしていました。

01 Flora Purim "Encounters" (Milestone)

02 Deniece Williams "Slip Away" (Columbia)

03 Esther Philips "Home Is Where the Hatred Is" (KUDU)

04 Windy City "(So You Think) Somethin's Missin'" (Chi Sound)

05 James Brown "Mind Power" (Polydor)

06 Gil Scott-Heron "Lady Day and John Coltrane" (Flying Dutchman)

07 Brian Auger & Oblivion Express "Whenever You're Ready" (RCA)

08 Willie Bobo "Sixty-Two Fifty" (Columbia)

09 Chick Corea & Return to Forever "Captain Marvel" (Polydor)

10 Kuniyuki "Precious Hall (Dub)" (Natural Resource)

11 Larry Heard "Missing You" (Track Mode)

12 Herbert "Suddenly" (Studio !K7)

13 Darkstar "Aidy's Girl Is a Computer (Kyle Hall Oats B So Deep Remix)" (Hyperdub)

14 Floating Points "Shark Chase" (Eglo)

15 Pharoah Sanders "Greeting To Saud (Brother McCoy Tyner)" (Impulse)

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今、振り返えるとマジ懐かしい。

この記事のオリジナルがあるブログ(現在は非公開)では他にも当時のロンドンのクラブシーン(2011年~2013年頃)について書いているので、折を見てリマスター版をnoteで公開したいと思います。


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