ウケる筋トレ
鍛えるべきは心か身体か。要約するとそんな話です。
目的があって本屋に行ったんです。
買うことを目的に本屋に行くことが珍しく、電車の乗り換えによる空き時間に
「ちょっくら会ってやるか」
という久しぶりに地元に帰ってきた感覚で寄ったりするんですが、結局漫画の試し読みや気になる人の小説やエッセイの新作を眺めてるうちに
「帰るの面倒だし、泊まっていい?」
と思うくらい入り浸ってしまうのが常なんです。
洒落さい話はさておいて…
今回のターゲットとなる本は…
著者が筋肉隆々でしてね、
中肉中背の私は憧れるんです。
明るくて、華があって、
独特の雰囲気を醸し出していて、
メンタルも筋肉隆々だろうなと。
好きなんです、彼が。
ただ、彼が好きなだけ。
内容そっちのけ!!!
愛ゆえの購買意欲!!!!
その本とは!!!!!
学研プラス出版
『ウケる筋トレ』
著 : なかやまきんに君
そう! R-1グランプリ2006ファイナリストであり、英語力ゼロのまま海外留学を果たした筋肉芸人なかやまきんに君がトレーニング本を書き綴ってくれたのだ!
「きんにくうれし〜!!!!!!!!!!!」
{彼のギャグです}
正直、筋トレする気はなく、本気で彼が好きだから買いたい。
念のため確認するが、私はソッチ系ではない。
どれだけ好きかは明日に日記に綴ろうか筋肉と相談するとしよう。
話を戻すが、私は筋肉書を求め本屋に向かった。
本屋に入ってまずすることは偵察。
本を探すフリをしながら周りを見渡す。
客はぼちぼちいる。
どの場所に置いてあるかは検討ついている。
しかし店員や客に、きんに君の本を買いに来ただけの奴とはバレたくない。
理由は言わずもがな、恥ずかしいから。
あえて寄り道をして、無難な漫画コーナーへと足を運ぶ。
並ばれた背表紙を眺めるが、頭の中は筋肉のことでいっぱい。
脳に入ってくる情報が屈強な豪腕で弾かれていくようだった。
気持ちが落ち着いてきたところで、芸能人コーナーへ移動。
メディア露出が少ないが、一応彼も芸能人。
もしかしたらここにあるかもと期待を寄せた。
結果から申し上げると、ここにはなかった。
そこには若く輝かしいタレントの写真集が置いてある。
私は筋肉に引っ張られたのか、男性の写真集ばかり手につけていた。
2度目の念押しですが、ソッチ系ではないです。
そしてここであろうと予想していた本命、スポーツコーナーへ挑む。
当たり前だがスポーツ選手だらけである。
アモーレサッカー長友佑都
プーさんスケーター羽生結弦
ポジティブテニス松岡修造
今を活躍するオーラで圧倒されるような方々だ。
でも私が探しているのは筋肉芸人の本である。
「ウケる筋肉… なかやまきんに君…
ない… ない… どんなに探してもない!」
しばらく眺めたが、筋肉書は見つからない。
そして探す候補のコーナーも尽きた。
そうなったら最終奥義、店に置かれてるタッチパネルから店舗内検索だ!
最終奥義と名目しているが
「最初からそうすればよかっただろ」
と内心わかっていた。
でもできなかった。
なぜなら検索するということは目的の本があるということが周りにバレる。
そして何度も言うが購入したいのはきんに君の本だ。
となると、検索した後にきんに君の本を持つ様子から周りの客から、わざわざ[なかやまきんに君]と検索したことを悟られる可能性があるのだ。
「きんにくはずかし〜!!!!!!!!!!」
{私のオリジナルギャグです}
しかしかなりの時間を費やして探した労力からか、プライドはぽっくり折れた。
自意識を薄めて周りの目を気にせず、タッチパネルを操作する。
著者検索の枠に[なかやまきんにくん]とタイピングゲームのように素早く入力して検索ボタンを押す。
検索結果:1件
【ウケる筋トレ : なかやまきんに君】
「あった!!!!!
きんにくうれぴ〜!!!!!!!!!」
{酒井法子をリミックスしてみました}
そこの詳細に置いてある棚の番号が載っている。
その番号を頼りに目的地に向かうと、その場所で呆気にとられた。
先程訪れたスポーツコーナーにたどり着いたのだ。
「あれほど探したんだぞ… そんなはずがない…」
困惑を振り払い、再び集中して凝視する。
「ウケる筋肉… なかやまきんに君…
ない… ない… どんなに探してもない!」
{天丼}
結局機械に頼っても見つからなかったのだ…
おそらく店員さんに尋ねても、同じ手段でスポーツコーナーにいざなわれるだろうと予想して話しかけなかった。
{本当は人見知りで話しかけられないだけ}
「今は見つからないが、検索結果に残っているということは、売り切れてしまっているのだろう」
自分で納得する結論を出して、探し出すことを諦めた。
その悔しさを引きずりながら出口に向かう。
「結局この店には筋肉書があるのかい… ないのかい… どっちな〜んだい!!!!!」
と、筋肉ギャグでモヤモヤした疑問を発散する。
レジ前を通ると店員さんに
「ありがとうございました。またお越しくださいませ。」
と、優しいお言葉をかけてくださったが、気持ちが曇っているから心に響かない。
虚ろな目で出入り口近くにある新刊コーナーに目を向ける。
たくさん倒されて置いてある書物の中から、既視感のある男がある本の表紙に写っている。
全力で叫ぶ顔は筋肉芸人なかやまきんに君!
デカイ縦文字で
『
ウ
ケ
る
筋
ト
レ
』
「あ〜〜〜〜〜〜〜〜る!!!!!!」
{ギャグの伏線回収}
発売から3週間近く経っているからもうないと想定していたが、まさか新刊コーナーで待ち構えていたなんて思いもしなかった。
緊張しながら筋肉書に近づく。
やっときんに君に会えたことに感謝し、ご尊顔に向かって拝む。
喜びを噛み締め、躊躇なく手に取り、レジに向かおうとした時、ふと悪い癖の客観視が発揮する。
「さっきレジ前の店員に挨拶をしてもらったから、自分は購入せずに帰るだろうと想定しているだろう。
そう思ってる矢先に突然きんに君の本を持ってこられたら…」
その思考が発動してしまったら時すでに遅し。
発見までの努力を無駄にするほどにプライドと自意識が復活していて、その状況が厳しいと判断させた。
誰にもバレないようにゆっくり元の場所に戻して、その場を去ってしまった。
何もなし得ずに家に帰ってきてしまった。
堂々とギャグを放つきんに君をYoutubeで視聴し、まだ自分はきんに君になるには程遠い人間なんだろうなと卑下するしかなかった。
心も身体もきんに君に勝てない。
どちらも鍛えていくために、また別日に迷わず即決で堂々した振る舞いで買いに行こう。
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