見出し画像

【感想】色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年

文庫本が発売された時に買ったのたが、そういえば読んでなかったなと思い、数年越しに手をつけた。

読了直後の感想、謎が残りすぎて怖い。
私が気づいているだけでも以下が挙げられる。

・灰田が去った意味
・灰田父の昔話
・多崎の夢に出てきた六本指の女性
・シロを殺した犯人
・沙羅と中年男性について
・多崎父が今際に多崎に伝えようとしたこと
・沙羅の正体

よくよく考えてみたら何も解決しないままに幕を閉じていることに気がついて、さらに怖くなった。
こちらが推理しようにも、多崎が物語の探偵役として未熟であり、不適任。そんな多崎の主観で語られていることから「彼にはこう見えていたが、本当はこうなのでは?」「この人のこの発言、多崎は言及しなかったが、実は物語上で大事なポイントだったのでは?」と深読みしないといけない。また、村上春樹氏の作風的に概念として捉えていいのか、実在として捉えていいのか難しい部分もある。例えば、シロを殺した存在とか。
これは真剣に推理するものではなく、あるいは概念的なものとして心の中に留めておくことが正解なのかもしれない。しかし、こんな半ばで物語の世界外へ放り出されると、我々が介入できない本に書かれていないその後を想像することを禁じ得ない。
と、言っておきながら私はそういった推理がすこぶる苦手だ。なので、こうじゃないかな?程度の考察にもならない予想をしてみた。


私はみんなが多崎を追放した理由は別にあると思う。みんな表面上はシロがレイプしたと言い出したから、「シロの為に多崎を追放するしかなかった」と言っていたが、実は各々が個人的に多崎を追放する理由があったのではないだろうか。きっと、恋愛関係で。
ちなみに本編で恋心があったと明記されていたのは以下だ。

アオ→クロ
クロ→多崎
多崎→シロ(あくまでクロの推測)

また、これは明記されていないが、アカは同性愛者だと発言していることから、多崎が好きだったのではないかと私は感じた。
何故そう思い至ったのかというと、私は彼らと多崎の再会が告解だったのではないだろうかと思ったのだ。
本来、告解は懺悔したい者が教会の牧師を訪ねるものだが、その逆バージョン。
彼らは多崎へ懺悔を述べているのではないか?
表向きのテーマは「多崎が追放された真実」だが、裏のテーマとして考えるとこれがしっくりきた。

以上の関係性をシロはいち早く気づき、グループの瓦解を図ったのではないだろうか。

まともに語れる予想はこれくらいだ。
他にも沙羅の正体や灰田が去った理由など考えてみたが、どれもイマイチ腑に落ちないところかあり、私の中では迷宮入りとなった。もう少し調べてみたり、何度も読み返してみれば違った物が見えてくるかもしれないが。考察記事を書いている人って本当に凄い。


最後になるので単純なただの感想も書いておくと、多くの謎を残しつつもシンプルに面白かった。
実は私、村上春樹氏の本をまともに読んだのは今作が初めてで『1Q84』を挫折してしまった身なのでだいぶ構えていたのだが、文体も読みやすいし、考えて読む楽しさがあった。
ブロマンスが好きな私にとっては、灰田と多崎の関係性はたまらなかった。結局、灰田は多崎を好きだったんだろうか?腐女子の妄想ではなく、純粋に疑問。


また今度、村上春樹氏の別作品も読んでみようと思う。

この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?