古代の薩摩940年 #11

第一部 不老不死の妙薬 徐福の独白(3)
もうすぐ出発の地、隼人(はやと)に帰り着く。でも大きな悩みを抱えたままだ。不老不死の妙薬は手に入っていない。このまま、本国に帰れば、全員処刑されるだろう。多分みんな帰らないでこの国で暮らすことを望んでいよう。しかし本国には家族をはじめ一族が人質に取られている。できれば一旦帰って、いろいろな道具や牛と馬、それに産業を発展させるためには高度の技術を持つ人材も欲しい。
旅をしてこの倭国の人々の心の豊かさがますますいとおしくなった。どこでも歓待された。私達も病気を治したり、橋の掛け方を教えたり、道具も分け与えた。戦争ばかりしている国より、私たちを敬愛し、信頼してくれる人たちのために働きたい。この矛盾に苦しんでいたある夜、とんでもないことを思いついた。

それは李斯をだますこと。
今や秦の宰相として圧倒的な権力をもつようになった李斯は、ライバルの韓非を自殺に追い込み、大人物呂不韋も巧みな策略で始皇帝の不興を買うようにしむけ自害させた。今や絶頂期、だからこそ、隙が生まれると思う。まず、①弁明書を出す。②倭の国の実情を詳しく報告する。その中には全100余の村の位置を書き込んだ地図と、鉱物資源の現物を提出する。具体的には菱刈(ひしかり)村と生野(いくの)村の「金」、石見(いわみ)村の「銀」、別子村の「銅」、それに出雲(出雲)村の「鉄」。まだ国が出来たばかりで不安定な今、喉から手が出るほどこれらの鉱産資源は欲しいはずだ。③私も欲があるようにみせるために、倭国を県にし、県令にしてくれるように懇願する。
一か八かの大勝負。採掘の為の人員選定、運搬用の馬なども要求する。真実味を持たせる工夫がまだまだ必要とは思うが、熟慮ののち決行したい。

この物語は、薩摩の古代の歴史をドキュメンタリー風にしてみました。
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いつか映像にしてくださる方がいると嬉しいです。 吉峯盾

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