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(本)自分の頭で考える読書 変化の時代に、道が拓かれる「本の読み方」

通勤途中にvoicyの番組を聴くようになって1年近く経過したでしょうか。
audiobookよりはハードルが低く、podcastのバラエティ系番組よかハイコンテクストな絶妙な番組のクオリティとボリュームが自分にピッタリ合っていて、今も毎朝のように聴いております。
その中でヘビロテ番組の一つが、荒木博行さんの「book cafe」。

荒木マスターが本の魅力を延々と一人語り(ゲストもあり)するという本好きにはたまらん(?)番組。
番組(というか荒木さん)の魅力は、本の具体の解説にとどまらない、抽象化と具体化の行き来かと思っています。
例えば、芥川龍之介のトロッコ、という作品。少年がトロッコに乗り込んだら、知らない土地についてしまい・・・という短編なのですが、それを現代社会、我々社会人と対比させた解釈をするなど「抽象化能力の高い人はこうやって物事を見てるんだ、繋がりを見つけてるんだ」と思わず膝を打ちました。
あらゆる分野で変化のスピードが速くなっている現在、個々のn=1の経験の価値というのは、今後ますます下がっていく。そんな時に重要となるのが、過去の経験をいったん抽象化し、レイヤーを上げるという行為。そうすることで応用も効く可能性が高くなります。
そういったこともあり、注目していた方です。

で、そんなマスターが新刊を出されるということで早速手に取ってみました。

Amazonのレビューがまさかの満点(22/2/6現在)なだけあって、読書との向き合い方を考える上で非常に示唆にとんだ1冊でした。
自分に刺さったポイントは以下の3点。

・具体〜抽象〜具体の往復運動が大事。読書経験なり自分の問題意識をまずは抽象化しましょう。抽象化には「つまり」、具体化には「例えば」という問いかけが有効。
・これをすればいい、という読書法なんて存在しない。役に立たせよう、と肩肘張らず、楽しもう。読書は役立てようを思えば思うほど役立たなくなるパラドックスがある。
・「問い」を大事にしましょう。日常に「問い」を挟むことなく思考停止して従順に作業をこなすマシーンになるべからず。


効率よく情報をインプットするには?といったノウハウを求めている人にな期待はずれかもしれません。
でも、1冊でも多く有益な情報を貪欲に得よう!とガツガツしてしまっていた自分にとっては、読書に姿勢を振り返る良い機会になりました。1分1秒を争って1冊でも多く読むことより、冊数は少なかろうが、本当に人生に役立つ1文の方がずっと価値がありますよね。もっと自由に読書に向き合い、肩の力を抜いて楽しんでみよう。そう思った次第です。

余談ですが、アイヒマンの下りはハッとさせられました。

世の中には、ヒトラーをはじめ、「悪の権化」のように称される人がたくさんいます。そういう人物を知った時「ヤバいやついたな」で終わらせては何も得られません。少し紐解いてみると、そういった「ヤバい」人々が、思っていたより「普通」の人間であったと思うことって、実は結構あったりします(決して、彼らの行為を肯定してるわけではありませんが)。アイヒマンも行為・行動を見るとぶん殴りたくなるようなことをたくさんしてるわけですが、一方で、組織からすると非常に従順な人物だったわけです。
で、一歩引いてみた時、自分も「思考停止状態で与えられた仕事を黙々とこなすだけの機械になってないか」という点で、ハッとさせられるわけです。もちろん、悪事に加担している、というわけではないですが、思考停止で目の前のことを従順にやっているという点では、アイヒマンも自分も、もしかしたら同じなのかもしれない。扱う側から考えれば、いった通りに動いてくれる「駒」の方が便利なのでしょうが、やっぱり歴史的に見ても、思考停止に陥ってはまずい。
こういった歴史を知っておきながら、現代人だって条件が揃えばいくらでも残酷になれてしまうことは、いろいろな実験でも確かめられている事実です。
遠い昔の他国出来事だから、という風には考えず、やっぱり自分事として捉えていかねばですね。

だいぶ脱線しましたが・・・。
そんなことを思った読書体験でございました。
荒木マスター、ありがとう!(?)


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