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『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』

「本を読む余裕のない社会って、おかしくないですか?」と呼び掛け、「働いているうちに本が読めなくなった」という自らの体験やネットでの反響の声を紹介しながら、読書史と労働史を並べて俯瞰しながら、その理由を解き明かしている本があります。


本日紹介するのは、1994年生まれ、京都大学大学院人間・環境学研究科博士前期課程修了(専門は萬葉集)、IT企業に就職するも1年で退職し、現在は文芸評論家として多数の著書を持つ三宅香帆さんが書いた、こちらの書籍です。


三宅香帆『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(集英社新書)


この本は、2023年1月~11月にウェブサイト集英社新書プラスで連載した『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』の内容に加筆修正して書籍化したものです。



本書は以下の11部構成から成っています。


1.労働と読書は両立しない?

2.労働を煽る自己啓発書の誕生―明治時代

3.「教養」が隔てたサラリーマン階級と労働者階級―大正時代

4.戦前サラリーマンはなぜ「円本」を買ったのか?―昭和戦前・戦中

5.「ビジネスマン」に読まれたベストセラー―1950~60年代

6.司馬遼太郎の文庫本を読むサラリーマン―1970年代


7.女たちのカルチャーセンターとミリオンセラー―1980年代

8.行動と経済の時代への転換点―1990年代

9.仕事がアイデンティティになる社会―2000年代

10.読書は人生の「ノイズ」なのか?―2010年代

11.「全身全霊」をやめませんか


この本の冒頭で著者は、「本書は、日本の近代以降の労働史と読書史を並べて俯瞰することによって、『歴史上、日本人はどうやって働きながら本を読んできたのか? そしてなぜ現代の私たちは、働きながら本を読むことに困難を感じているのか?』という問いについて考えた本です。」と述べています。



本書の前半では、「労働と読書は両立しない?」「労働を煽る自己啓発書の誕生―明治時代」「教養が隔てたサラリーマン階級と労働者階級―大正時代」および「戦前サラリーマンはなぜ「円本」を買ったのか?―昭和戦前・戦中」について以下のポイントを説明しています。


◆ 読書をしようと思う意思の有無に、社会の階級格差が影響を及ぼしている

◆ 修養ブームの誕生と階級格差

◆ 労働が辛いサラリーマン像

◆「書斎」文化のインテリアとして円本(全集)ブーム



この本の中盤では、「ビジネスマンに読まれたベストセラー―1950~60年代」「司馬遼太郎の文庫本を読むサラリーマン―1970年代」「女たちのカルチャーセンターとミリオンセラー―1980年代」および「行動と経済の時代への転換点―1990年代」について解説しています。主なポイントは次の通りです。


◆ ビジネスマン向けハウツーほんの興隆

◆ 通勤電車で司馬遼太郎の文庫本を読むサラリーマン

◆ 70年代の「教養」と80代の「コミュ力」

◆ 「内面」の時代から「行動」の時代へ

◆ 読書とはノイズである、自己啓発書はノイズを除去する



本書の後半では、「仕事がアイデンティティになる社会―2000年代」「読書は人生の『ノイズ』なのか?―2010年代」および「全身全霊をやめませんか」ついて説明しています。主なポイントは以下の通り。


◆ 労働で自己実現を目指す時代」

◆ インターネット情報の持つ「転覆性」

◆ 求めている情報だけを、ノイズが除去された状態で、読むことができるインターネット

◆ 情報とは、のイズが除去された知識である

◆ 自分の好きな仕事をして、欲しい情報を得て、個人にカスタマイズされた世界を生きる


◆ 2010年代働き方改革で、長時間労働が是正され、好きなことで生きていく

◆ 会社に頼らず、「副業」「フリーランス」「ノマド」で好きなことで自己実現

◆ 労働小説の勃興

◆ 自分と関係がない情報、という「ノイズ」


◆「全身全霊で働く」から「半身で働く」へ

◆「働いても本が読める社会」へ

◆ 強制されていないのに、自分で自分を搾取する「疲労社会」

◆ 生活のあらゆる側面が仕事に変容する「トータル・ワーク」


◆ バーンアウト(燃え尽き症候群)は、鬱病に至る病

◆「全身労働社会」: 週5日勤務、専業、全身全霊、男性中心

◆「半身労働社会」: 週3日勤務、兼業、持続可能、ジェンダーフリー

◆ 全身全霊」をやめませんか

◆ 働きながら本を読める社会をつくるために、半身で働く


この本の締めくくりとして著者は、「働きながら本を読むコツ」として、次の6つを挙げて推奨しています。


1.自分と趣味の合う読書ブロガーのアカウントをSNSでフォローする

2.i Pad を買う

3.帰宅途中のカフェ読書を習慣にする

4.書店へ行く

5.今まで読まなかったジャンルに手を出す

6.無理をしない


あなたも本書を読んで、「働きながら本を読める社会」をつくるために、半身で働いてみませんか。


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では、今日もハッピーな1日を!【3400冊目】

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