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2021年初投稿

 年が明けた。2021年の幕開け。昨年の振り返りは散々したので、これからのことを綴ろうと思う。そうだね、これからの希望や期待も込めて、僕の夢の話でも書いてみようか。
 「夢」と言っても、昔ほどきらきらとしたものではなくなった。昔はもっと、夢を叶えようと頑張る気概みたいなものがあった気がするのだが、気がつけば「叶えばいいな」程度のふわふわとしたものになっていた。

夢の中へ

 僕は、街の喧騒から離れ、ひとり静かな離島の丘に住んでいる。小鳥の囀りで目を覚まし、熱々の珈琲を淹れる。窓からは青く穏やかな海が今日も変わらず見えていた。早速仕事に取り掛かろうと、パソコンを立ち上げ、蓄音機からお気に入りの音楽を流す。今日は街の編集社に原稿を持っていく締切日。午前中のうちに原稿を書き切ってしまわないと。

 「離島に住んで不便ではないか?」離島に住み始めた頃はよくそんなことを言われたが、僕からしたら、よくもまあうるさい街の中で或いは人の中で暮らしていけるものだと思う。
 毎月の原稿料はわずかなものだった。ただ、毎日生活していけるだけのお金と美味しい珈琲豆を買うお金、趣味の読書に費やすお金があればいい。

 2杯目の珈琲を飲み終わる頃、ちょうど原稿が書き終わった。ふと窓から空を見ると、どんよりとした黒い雲が広がりつつあった。そう言えば、今日の午後から強い雨が来ると、昨夜のラジオが言っていた気がする。雨が降り出したら面倒だな。ちょっと早くはあったが、原稿と荷物をまとめ、街に行く準備を済ませた。

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 街の編集社の目の前の行きつけの喫茶店に入ると同時にポツリポツリと雨が降ってきた。早めに出てきて正解だったかもしれない。

「やあ、ひどい雨になりそうだね」

 奥の4人掛けの席から見慣れた顔が話し掛けてきた。専任の編集者の堀越である。清潔感のある短髪に白シャツとチノパンといういつもの格好で堀越は珈琲を飲んでいた。

「お前も珈琲で良いだろ?」

 僕は無言で頷き、堀越の向かいに腰を下ろす。そして、カバンから原稿を取り出し堀越の前に差し出した。

「“一応”書き終わったけど、最後の展開があまり気に入ってないんだ」

 堀越は原稿を黙って受け取り、そのまま珈琲片手に読み進める。彼の顔は真剣そのものだった。自分の作品に真摯に向き合ってくれる人がいるというのは嬉しい。珈琲のお代わりを頼んだ後も、堀越は無言と険しい表情で静かに読み進んでいった。店内には穏やかなピアノのBGMが流れ、落ち着いた雰囲気を醸し出していた。

 ふーっと息を吐き、堀越が原稿を置いた。

「悪くはない。悪くはないが、なぜ主人公は最後にエリスを殺さない? 俺は最後に絶望的展開が待っていた方が好きだな。最初の頃のお前の作品にあったような、最後に裏切られる、そういうのが良い」

 それは自分でもなんとなく自覚していた。思い切った展開を描けず、いつも楽な方、安パイな方へと流れてしまう。僕の悪い癖だ。

「ありがとう。堀越の指摘は参考になるよ」

 僕は堀越から原稿を受け取るとカバンにそれを仕舞った。

「じゃあ、俺は次の打ち合わせがあるから。原稿は来週までに仕上げてくれれば後は俺が何とかする」

 堀越はそういうと、半分ほどカップに残った珈琲にミルクを入れて一気に飲み干し、千円札をテーブルに置いて出ていった。外はいよいよ嵐といった感じで、地鳴りのような雨音が店の中にも響いてきていた。この雨では、帰りのフェリーは出そうもない。僕は店の近くのビジネスホテルに予約を入れた。

 僕はチェックインを済ませると、部屋のベッドに横たわった。なんてことはない普通のビジネスホテル。だが、疲れの溜まっていた僕は、そのまま眠りについた。

夢から覚めて

 今年の僕の目標は、まず仕事を決めること。やりたいことをするにもお金と時間がいる。昨年の1年間は多くの人に心配を掛け迷惑を掛け、助けてもらった。今年は少しでもその恩を返していきたい。そして、いつまでも学べる青年ではなく、未来の若人に引継ぎをしなければならない。僕は子どもはつくらないと思う。だけど、子どもは好きだから、少しでも未来の子どもたちが自分らしく生きやすい世の中になってくれるといい。いや、他人任せでなく、そういう社会づくりの一端を担える人になりたい。

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#note書き初め

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