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28歳独身男の話

今年の1月末のこと、僕は仕事に行けなくなった。

新しい仕事を始めてたった2か月しか経っていないのに、職場に行くのが酷く憂鬱だった。特に、Y氏がいる日は最悪だ。毎日ギリギリまで布団の中にいて、結局タクシーで職場に向かう。支払いはいつもクレジット。利用額はその身に溜まるストレスの如く膨れ上がっていた。ああ、このまま死ねればいいのに。死にたいな。そんな妄想が頭から離れなかった。

そうして、僕はあっさり仕事を辞めた。覚悟も何も無かった。

それと同時に、目の前の現実を全て壊したくなった。皆自分勝手な奴ばかりだ。僕だけがいつもいつもいつも我慢して、優しい顔をして……。
本当は近くに行きたいのに、すっと自分を消して遠くで見てるだけ。

全て壊して、そして自分も死のう。

だけど、死ねなかった。死のうとしているうちに眠ってしまい、気がついたらそんな気持ちはどこかに消えていた。生きたいのか、死にたいのかも分からない、なんとも殺伐とした時間が流れていた。ただ、何もかもが滅茶苦茶になっていた。

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父と子と仕事。そしてこれから……

その後、職場の人や家族が駆けつけてくれて、実家に戻ることになった。実家ではただ呑気に昼過ぎまで寝て、ご飯を食べて、寝ての繰り返しだった。そんなこんなで親父とも喧嘩し、家を飛び出した。僕の借金も賠償も全て肩代わりしてくれたのに、親不孝な息子だと、自分にしても思う。
家出した僕は、口座に入ったたった10万円だけ持って、北の大地を目指した。安宿を探して泊まり、日中は部屋探し。幸運なことに、探し始めて3日目にして良い物件が見つかった。契約金を支払って、資金は底を尽きた。我ながら、家出してからの3日間は良く動いたと思う。シェルターやホームレスも最悪覚悟しての家出だったが、なんとか住むところを確保できたのは大きかった。

住み始めてからは割と普通に生活していけた。失業保険も給付されていたし、親とも和解して援助もしてもらったし。

生活が安定してきた夏頃から、職探しもぼちぼち始めるようになった。このご時世、中々求人の数はそう多くはない。見つけては応募してお祈り通知が届いての繰り返し。学歴も職歴もない僕を雇ってくれるところなど現れるのか不安だった。

ただ、就活を本格的に始めてからちょうど3か月が経とうとしていた時、不意に面接が決まり、そのまま面接で採用が決まった。なんとか雪が降る前には身を落ち着けられそうだ。

来月から仕事が始まるが、今度は続けられるだろうか。前の仕事は3か月で辞めた。それ以外に正社員で働いた経験はない。不安しかない。度胸も覚悟もない。それでも、生きていくには、働いて、収入を得なければならない。仕事だから当然、楽しいことばかりではない。その中でやりがいを感じ、その仕事を続ける自分なりの理由を見つけられるだろうか。

自分が何故その道に進もうと思ったのか、入職日までの残りの数日で改めて考えてみようと思う。

人生回り道ばかりだけれど、他の人とは違う、“僕の” 人生だ。

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