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第1回読書会レポート

こんにちは!!
伊東潤担当編集の小川(@kyohei_ogawa_)です。
さて、先月1月20日に「伊東潤の読書会」が開催されました。
今回はその様子をレポートしたいと思います。


「伊東潤の読書会」とは?

伊東潤自らが主催し、ファンの皆さんと作品・歴史について語る会です。
昨年からTwitter(@ito_jun_info)を再開した伊東潤ですが、ファンの皆さんともっと濃密につながりたいという本人の熱い思いから、この読書会は生まれました。

第1弾のお題は、短編作品『国を蹴った男』

『この時代小説がすごい!2016年度版』(宝島社刊)のランキングアンケート投票者によって選出された、短編時代小説のオールタイム・ベスト作品の第1位に選出された作品です。

『国を蹴った男』
天下に最も近かった男・今川義元の息子、今川氏真
父・義元が桶狭間の戦いで織田信長に討ち取られ、家督を継ぐも、政治・軍事に興味を持てず、蹴鞠と和歌の日々を過ごす愚将・氏真。
その氏真の姿を、蹴鞠職人の五助の視点から描いた作品。歴史的には敗者ではあるが、自分のやりたいことだけを極め戦国時代を生き抜いた氏真と彼の才能を信じ支えた五助の熱い絆が胸を熱くする。
吉川英治文学新人賞受賞作。

今回は、この短編作品『国を蹴った男』をテーマに、みんなで感想を語り合い、制作秘話を作者本人から伺いました。


「どうやったらもっと面白くなったのか?」

『国を蹴った男』の印象に残ったシーンや名言、好きなキャラクター、他の作家の作品と比べた時の伊東作品の優れた点などを話しました。
伊東潤が投げかけたのは、「どうやったらもっと作品の深みや面白みが増したのか」という問い。
それに対して、「主人公・五助のキャラクターをもっと知りたかったので、氏真とのエピソードだけではなく、描写の少なかった家族とのシーンを増やして五助の人間味をもっと出して欲しい。」、「もっと五助の鞠職人としての凄みを出したり、主人公であることを分かりやすく演出するために、小説の書き出しを、五助の描写から始めた方が良かったかもしれない。」といった、学生、社会人、現役作家など様々な立場の方から活発に意見が出て、それを直接伊東潤と語り合いました。


「どうやってこの作品は生まれたの?」

コルク代表の佐渡島(@sadycork)が聞き手になり、どうやって『国を蹴った男』を作ったのかを語ってもらいました。

『国を蹴った男』を書いた一番の動機は?
強い武将が偉いといった戦国時代の価値観へのアンチテーゼとして、今川氏真という人間を描きたかったから。

氏真が面白いと思ったきっかけは?
氏真の2首の辞世の句から。普通、和歌や俳句といったのは分かりにくいものなのだけれど、これほどストレートに分かりやすく心に訴えかける句を残せすことができることがすごいと思ったから。

・和歌ではなく、蹴鞠をメインにして書いたきっかけは?
信長の前で氏真が蹴鞠を披露したという史実があったから。その史実を知った時、「何の取り柄もない氏真は、天下の覇者の前で何を考えながら蹴っていたのだろう?悔しさや恐れの気持ちはなかったのか?」と氏真の心情に引っかかり、描きたくなった。そして、蹴鞠をテーマに書くことになり、五助のキャラが生まれ、その師匠・幸太夫も架空の設定で生まれた。

・いつも人物の感情を想像することから作品が生まれるのか?
『国を蹴った男』はそうだが、史実の論理破綻がきっかけになることもある。例えば、「本能寺の変」で、丹羽長秀と織田信孝(信長の子)が真っ先に津田信澄(信長の甥)を殺しにいくという史実がある。津田が光秀の娘婿であったからという通説があるのだけれど、なぜ真っ先に大阪まで殺しに行くのかというところに疑問を抱いたので、『王になろうとした男』の中にある「小才子」という短編作品が生まれた。

【ピックアップ】
伊東潤の歴史小説の考え方が書かれたブログです。歴史小説を作ることがいかに難しいかが分かります。
http://jito54.blog13.fc2.com/blog-entry-329.html

・そもそも、どうやって作家になったのか?
小説家のキャリアスタートは2002年の42歳の時で、それまではサラリーマンとして生活していた。子供の頃から小説家になりたいと思ったことはなかった。たまたま家族で訪れた山中城に行って、激戦の歴史を世に残したいと思ったことがきっかけ。そして城巡りが趣味になり、城のホームページを作ろうと思い、文章を書いていると会話文が出てきて、それが小説になった。

【ピックアップ】
デビューのきっかけ「山中城」について書いた伊東さんのコラムも合わせて読んでみてください。

「城との出会いが作品を生む」
http://joukaku-fukugen.com/column/article/column_article_011.html


話は作品・歴史についてだけにとどまらず・・・

参加者の皆さんの質問の一部も掲載しますね。(ここでは書けない話も盛りだくさんでした・・・)

タイトルのつけ方は?
だいたい自分でつけているし、タイトルから入ることもある。『国を蹴った男』『城を噛ませた男』は読者の期待を裏切るという戦略性を持って名前をつけた。

どこでどういう風に執筆しているんですか?
集中するときは近くのファミレスで。Wi-Fiを繋げないことが重要。もちろん、OFFの時間も大事で、その時はTwitterを見ている。

・時間管理の秘訣は?
睡眠を大事にしている。夜9時には寝て、朝2時に起きて執筆するというルーティンをずっと続けている。集中しなければならないときは、まずは3時間粘ってみる。3時間過ぎた頃が一番辛いけれど、そこを粘ると急に楽になってくる。まあTwitterして集中途切れちゃうのが多々だけど・・・(笑)

・どうしてTwitterをやっているのか?
自分の人間性を知ってほしいなと思っているから。自分がどういう思いで作品を作っているのかをリアルタイムで知ってもらえることができるし、読者に一番近づけることができるのがTwitterかなと思う。

・最近のTwitter、ソフトボールネタが少なくないですか?
コアなファンだ(笑)好調ですよ。この前は10打数9安打でした。

【ピックアップ】
伊東さんのソフトボール好きが気になる方は、こちらのインタビューをご覧ください。

http://mainichi.jp/sp/shikou/41/01.html

・どんどん忙しくなってきても、読書会は続けるんですか?
ライフワークとして、一生続けていきたいと思う。


最後に

皆さんで次回の読書会の課題図書を決めようという話になりました。
伊東作品でもいいし、伊東さんがどう読むのが知りたい作品でもいいし、次の伊東さんの作品に影響を与えたい作品でもOK。

伊東作品か、それとも他の作家さんの作品か、歴史小説かミステリー小説か・・・

そして決まったのが・・・


遠藤周作の『沈黙』

映画化もされ、今最も注目度が上がっている歴史小説・『沈黙』を伊東潤はどう読むのか?を聞いてみたいという声が上がり決定しました。

みんなで感想を言い合いながら、『沈黙』の面白さを伊東潤と一緒に読み解きましょう!

応募フォームはこちらから!(定員に達したため、応募を締め切りさせていただきました。たくさんのご応募ありがとうございます!)


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