『天下人の茶』執筆にあたって(前編) 【歴史奉行通信】第二十九号
秋も深まり、
肌寒い季節になってきました。
風邪を引いている人も
多くなりましたので、
皆様もお気を付けください。
それでは、
伊東潤メールマガジン
「第二十九号 歴史奉行通信」を
お届けいたします。
〓〓今週の歴史奉行通信目次〓〓〓〓〓〓〓
1. 『天下人の茶』文庫版
12/4 発売に寄せて
2. ロングエッセイ
『天下人の茶』執筆にあたって(前編)
3. 感想 / SNS投稿ご協力のお願い /
Facebookファンページのお知らせ
4. 伊東潤Q&Aコーナー
5. お知らせ奉行通信
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1. 『天下人の茶』文庫版
12/4 発売に寄せて
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さて、いよいよ『天下人の茶』
文庫版の発売が、
12/4に迫ってきました。
今回と次回は、
この作品についての
ロングエッセイを掲載します。
元々、このエッセイは、
『ビジュアル版戦国武将茶人』
(宮帯出版社)に掲載されたもので、
その内容を改変して
再掲載する形になります。
『ビジュアル版戦国武将茶人』は
事典のようになっており、
武将茶人たちが所持していた
道具やその開いた茶会などの記録が
大半を占めています。
ここで私は
『天下人の茶』についての
エッセイを書き下ろしました。
『天下人の茶』は以下の短編と
視点人物から成っています。
【タイトル / 視点人物】
『天下人の茶』第一部 / 豊臣秀吉
『奇道なり兵部』 / 牧村兵部
『過ぎたる人』 / 瀬田掃部
『ひつみて候』/ 古田織部
『利休形』 / 細川三斎(忠興)
『天下人の茶』第二部 / 豊臣秀吉
彼らは武将弟子で、
秀吉を除いて「利休七哲」に
名を連ねている人々です。
それぞれどういう人物かは、
ネットで調べていただきたいのですが、
いずれ劣らぬ名茶人として
名を残しています。
とくに古田織部は、利休の死後、
その座を継いだかのような活躍を見せ、
一時は家康と秀忠の茶頭を務め、
大坂の陣直前には双方の間を行き来し、
天下を静謐に導こうとしました。
しかしそれも失敗し、
織部は最後の手段として――。
ここから先は『天下人の茶』をお読み下さい(笑)。
では今回は、
ロングエッセイの前半部分を掲載いたします。
ただし長いので途中で何カ所かカットしています。
完全版を読みたい方は前掲書をご購入下さい。
『ビジュアル版戦国武将茶人』
(宮帯出版社)
http://fcew36.asp.cuenote.jp/c/aWuXaadA4F6knGbE
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2. ロングエッセイ
『天下人の茶』執筆にあたって(前編)
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戦国時代を扱う歴史小説家は、
いつか千利休に挑まねばならない、
と私は思ってきた。
それだけ戦国時代において
茶の湯の存在は大きく、
信長、秀吉、家康という
三代にわたる天下人の政治を
動かしてきたと言えるからだ。
本稿では、
私が『天下人の茶』を
上梓するまでの話をしていきたいと思う。
最初のきっかけは、
『利休にたずねよ』の著者である
故山本兼一氏の存在だった。
厳密には山本氏が入院し、
深刻な状態にあると聞いたのが、
執筆を始めた動機と言えるだろう。
それが二〇一三年の十月頃だったと思う。
山本氏と私は文藝春秋の文芸誌
「オール讀物」の座談会で、
同年四月に一度、
お会いしただけの関係だが、
それ以前から私は山本氏の大ファンで、
戦国と幕末を描いた作品の大半を
読んでいた。
私は山本氏の作品を通して
氏と対話し、氏から学んできた。
そして自分なりの侘、
すなわち独自の作品を書いてきたつもりだ。
言うなれば山本氏と私は、
利休と古田織部のような関係と
言ってもいいだろう。
山本氏の松本清張賞受賞作
『火天の城』を読んだのは、
ちょうど小説を書き始めた頃だった。
職人たちの魂が息づく
この作品を読むことで、
私は歴史小説の面白さを再発見した。
その後も、
ハードボイルドな『雷神の筒』、
本能寺の変の謎に迫った
『信長死すべし』
(私が文庫版の解説を担当)、
山本版『竜馬がゆく』とも言える
『命もいらず名もいらず』など、
山本氏は作品ごとに
作意(趣向)を凝らし、
「これでどうどすやろか」
とばかりに読者を楽しませてくれた
(山本氏は京都出身)。
中でも、
山本さんの直木賞受賞作となった
『利休にたずねよ』にはやられた。
この作品の持つ凄みは、
とても言葉では表せない。
山本氏のしつらえた茶室は、
利休一人に焦点を絞りながら、
無限の広がりを持っている。
私は、この作品を通じて
「美を追求するのは何と恐ろしいことか」
を知った。
しかもこの作品は、
小説技法中でも最高難度の
「時間遡行」という荒業を使っており、
それが最終的に
「利休の死の謎」ではなく、
「若き日の恋」に行き着くという
秀逸な構成だった。
あえて山本氏は、
作家なら誰もが取り組みたい
「利休の死の謎」を避け、
利休という謎多き人物の
人格が形成された若き日に向かったのだ。
私は「さすが、山本氏だ」と感心し、
それなら私が、
利休の死の謎に挑もうと思った。
そして私の作品を山本氏に読んでいただき、
いつか二人で、
利休と茶の湯についての対談をしたいと思っていた。
ところが二〇一四年二月、
山本氏は急ぎ足で
冥府へと旅立たれてしまった。
後に編集から聞いた話だが、
山本氏はお亡くなりになる
五時間ほど前まで、
連載原稿の執筆をしていたという。
ところが疲れたのか、
いったん休むことになり、
そのまま危篤となって
死に至ったという。
おそらくご本人としては、
もう少し時間があると思っていたに違いない。
さて本作、
すなわち『天下人の茶』所収の
『利休形』を「オール讀物」誌に
発表した時点で、
山本氏の死に直面した私は、
大きな衝撃を受けた。
同じ稼業の後輩として、
まさに大海に一人、
投げ出されたような寂しさを覚えた。
これにより、
茶の湯をテーマとした拙著を
山本氏に読んでいただくことは
できなくなったが、
同時代を生きた書き手として、
同じ茶の湯を題材にした恥ずかしい作品を
残すわけにはいかない。
とくに山本氏の弟子を勝手に名乗る私が、
だらしない作品を書いては、
冥府にいる山本氏に申し訳ない。
私はそう覚悟を決めて、
本作に取り組むことにした。
執筆を始めるにあたって、
利休と茶の湯に関する小説を
いくつか読んでみた。
むろん時間に限りがあるので、
再読や再々読も含めて読むことができたのは、
『利休にたずねよ』、
井上靖氏の『本覚坊遺文』、
海音寺潮五郎氏の『茶道太閤記』、
野上弥生子氏の『秀吉と利休』
だけだったが、
どの作品にも秀逸な利休像が描かれており、
また「利休の侘や死生観」などが、
徹底的に追究されていた。
私は大変な仕事に取り組む覚悟を
決めると同時に、
これらの著作とは全く違った概念のものを
書かねばならないと思った。
まず、視点である。
かつて私は直木賞候補にもなった
『王になろうとした男』で、
織田信長を家臣の視点から描いた。
というのも信長視点では、
信長の、ときに不合理で何を考えているのか
分からないようなミステリアスな部分も
本人に説明させねばならず、
読者個々が持つ信長のイメージを
壊してしまう危険性があるからだ。
利休も同様で、
利休本人の視点で描いてしまうと、
利休の考えやその凄みを、
はっきりと提示せねばならなくなる。
それゆえ視点を弟子たちに振り分け、
多面体のような利休を描くことで、
私なりの利休像を構築することにした。
(前編終)
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3. 感想 / SNS投稿ご協力のお願い /
Facebookファンページのお知らせ
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さて、いかがでしたか。
後編は次回とさせていただきます。
文中に出てきた作品のうち、
以下2点のアマゾンリンクを貼っておきます。
是非ご覧になって下さい。
『利休にたずねよ』山本兼一
(PHP文芸文庫)
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『王になろうとした男』伊東潤
(文春文庫)
http://fcew36.asp.cuenote.jp/c/aWuXaadA4F6knGbG
最後にタケダマキさんにお願いです。
このメルマガの感想などを
ツイッター等のSNSに上げて
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尚、アップいただく際は
「#歴史奉行通信」
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とくに今回は
「茶の湯と利休」についての
感想などをお寄せいただければ
幸いです。
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読者の方々の意見を取り入れながら
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ご意見やご希望、
また質問もどんどんお寄せ下さい。
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また、伊東潤のファンのための
Facebookグループ、
「評定衆(ひょうじょうしゅう)」が
オープンしました。
ファン同士の会話を楽しみたい方や、
ニュースをいち早く知りたい方は、
是非こちらよりご参加ください。
私も不定期で登場します。
http://fcew36.asp.cuenote.jp/c/aWuXaadA4F6knGbI
では、また!
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4. 伊東潤Q&Aコーナー
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さて、今回はリクエストベースの
質問コーナーです。
Q.
よど号をやられて
(*ライト マイ ファイア)
今はお茶がテーマとのことですが、
いずれ三島由紀夫、
森田必勝を書いて欲しいです。
(はやかつ様)
A.
三島由紀夫を森田必勝の視点から
描くという構想は、
かねてより持っていましたが、
なにぶんご遺族がご存命なので、
扱いの難しい題材になっております。
機会があれば、挑戦したいですね。
(伊東潤)
***************
いつもご質問をはじめ、
ご意見、感想をいただき
有難うございます。
インタラクティブを心がけている
伊東潤のメルマガでは、
皆さまからの質問に最大限にお答えします。
是非お気軽に以下のリンクより
お送りください。
http://fcew36.asp.cuenote.jp/c/aWuXaadA4F6knGbJ
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5.お知らせ奉行通信
新刊情報 / 読書会 / その他
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【新刊情報】
☆『江戸を造った男』文庫版(朝日新聞出版)
好評発売中!
新井白石をして
「天下に並ぶものがいない富商」
と唸らせた男の波瀾万丈の生涯を描く
長篇時代小説。
詳細は伊東潤のHP「恐々謹言」の作品ページをご覧下さい。
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☆『男たちの船出』(光文社)
好評発売中!
命懸けで千石船造りに挑む船大工の父子が
海は凄まじい力でその挑戦を打ち砕く!
男たちの船は海に勝てるのか!?
感動必至──魂を込めた渾身の長編時代小説。
詳細は伊東潤のHP「恐々謹言」の作品ページをご覧下さい。
http://fcew36.asp.cuenote.jp/c/aWuXaadA4F6knGbM
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☆『天下人の茶』文庫版(文藝春秋)
12月4日発売予定
(*作品情報 / アマゾンは
追ってオープン予定)
『歴史作家の城めぐり』(プレジデント社)
12月14日発売予定
お城のガイド本
(*小説ではありません)
伊東潤Facebookファンページ
「評定衆」のご意見もいただき、
このタイトルに決定しました。
【電子版特典】
紙本の35城収録に対し、
電子版では46城を完全収録!
紙本では白黒ページになるイラストが、
電子版では46城すべてをカラーで掲載!
(*作品情報 / アマゾンは
追ってオープン予定)
【読書会・主催イベント情報】
現在予定している、
読書会および主催イベント情報一覧です。
11月24日
コルクラボ文化祭でプチ読書会を開催予定。
題材は『国を蹴った男』。
いよいよ今週より募集が始まりました。
詳細やチケットはこちらからどうぞ
http://fcew36.asp.cuenote.jp/c/aWuXaadA4F6knGbO
対象書籍のアマゾンURLはこちら
http://fcew36.asp.cuenote.jp/c/aWuXaadA4F6knGbP
12月8日
第1回「城めぐりオフ会」
小田原城日帰りツアーが
ついに実現 (懇親会は新宿予定)。
詳細やチケットはこちらから
http://fcew36.asp.cuenote.jp/c/aWuXaadA4F6knGbQ
12月15日
第12回「伊東潤の読書会」は、
来年二月発売の『真実の航跡』が題材。
詳細やチケットはこちらから
http://fcew36.asp.cuenote.jp/c/aWuXaadA4F6knGbR
2019年
2月
第13回「伊東潤の読書会」は
第2回「ファンベース・セッション」の予定。
4月
第14回「伊東潤の読書会」は
連作短編集『家康謀殺』が題材。
5月
第2回「城めぐりオフ会」
『武田家滅亡』1泊2日ツアーを計画中。
一日目 : 新府城・武田八幡宮・躑躅ヶ崎居館・甲府城・恵林寺(宿泊は石和温泉)
二日目 : 勝沼氏館・天目山方面(大善寺・四郎作古戦場・鳥居畑古戦場・景徳院・栖雲寺)
【TV / ラジオ出演情報】
11/26(月)19:00~20:00
歴史科学捜査班(BS11)
「城郭工学で徹底検証する熊本城の実力」
スタジオのコメンテーターとして、
熊本城の魅力を語ります。
多分、年内最後の出演になります。
http://fcew36.asp.cuenote.jp/c/aWuXaadA4F6knGbS
NHKラジオのレギュラー放送は、
いつも通りあります。
私の担当は土曜日で隔週です。
だいたい朝の7:30から始まります。
今は第二と第四土曜になります。
「マイあさラジオ」
http://fcew36.asp.cuenote.jp/c/aWuXaadA4F6knGbT
【講演情報(*主催イベント以外)】
11/7(水)
<本日開催ですぞ!>
八重洲ブックセンターにて
講演会&サイン会を開催します。
詳細はコチラ。
http://fcew36.asp.cuenote.jp/c/aWuXaadA4F6knGbU
11/10(土)
「神奈川新聞文芸コンクール」
(入場無料)14:00~16:00
神奈川新聞本社
上記コンテストに応募した作品について、
当コンテストの選考委員を務めた伊東が講評します。
http://fcew36.asp.cuenote.jp/c/aWuXaadA4F6knGbV
12/24(月)「お城EXPO」
伊東の講演は11:00~12:30
「関東戦国史と城郭攻防戦」
http://fcew36.asp.cuenote.jp/c/aWuXaadA4F6knGbW
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