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余白を感じる


昨年8月からnoteに俳句やエッセイを写真ともに定期的に投稿するようになり、以前よりも写真に興味が湧いてきた。
吟行の際に目にした花や樹木、空の写真を撮ることはあるが、画一的な写真になってボツにすることが多い。ついついインパクトのある写真を撮りたいという気持ちが内側で生まれてくる。
俳句も写真も、出来栄えそのものに良い悪いはないと思うが、読み手に鑑賞をゆだねて味わってもらえる作品という視点に立つと何でも良いというわけにはいかなくなると思う。

そんな中、「楽しいみんなの写真」という本でと出合った。
大山顕氏によるワークショップでのアプローチがとても面白い。
先ずは好きでもなんでもないものをひたすら沢山撮る。
被写体としての条件は、大きいものや漠然としたものではなく、窓、玄関チャイム、車止め等具体的に特定できるもの。
この狙いとして写真を撮ることが自分探しに陥ることを避けること、写真に介在する計らいをなくすことである。

https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784861007545

このアプローチに思わず唸ってしまった。まさに俳句のアプローチと重なるのである。
俳句も自分の感情や自我をものに託して、鑑賞は読み手に託す。
吟行もほぼ定点観測で季節は変わるが同じコースを回ることが多い。その中で何を発見するのか何を出合うのかは誰も予測ができないのだ。
俳句の場合もとるに足らない石ころや切り株や長靴や階段などが題材となり、代表の選や点数をもらうことを意識すると計らいが生まれて自分らしさがなくなっていく。

自分をなくしてただ出合うものを感じ味わっていくことで、そのとき、その場所との交流が生まれ、自分に出合うべくものと出合う。
俳句という作品が先ずあるのではなく、自分と出合ったものとの交流が先にあるという感じ。
なかなかそんな状態で吟行はできていないが、できるだけ自分の計らいが働かないようにぼっとする時間をもつよう意識している。

大山氏のワークショップを参考にして、家の椅子の脚等の写真を数枚撮ってみた。ふだん、あまり意識して見ておらず、撮りたいと感じたことはなかった。こうして椅子の脚に意識を当てて味わってみるとふだんは無意識に座っているがこれらの脚に支えられていたのだという感じが湧き上がってくる。


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普段、意識していないものや道具と写真を通して新しい視点で出合うということは素敵なことである。

撮りたくないものにレンズを向けるという発想はなかったが、自分が意識していないものと出合えるきっかけでもある。



以前から気になっていた「魂を撮ろう」という本を見つけて一気に読んだ。
ユージン・スミスに関してはほとんど知らなかった。
本書は、ユージン・スミスとアイリーンの生い立ちから始まり、水俣紛争の経過も含めて二人の水俣との関わりが語られている。

ユージン・スミスの以下の言葉(一部抜粋)が心に残った。


僕が写真を撮るのは、もはや撮ることの純粋な楽しさのためではなくなっている。僕の役目は人生の動きを捉えることになる。世間の中で生きることに伴うユーモアや悲劇を。言い換えれば、ありのままの人生だ。ポーズをとらない、現実のままの真実の写真だ。

彼は水俣に3年暮らし、水俣の海、山、人々との暮らしの中に溶け込んで最後の写真集「MINAMATA」を残した。彼はとても大きな身体ではあるが、写真の現場においては自分の気配をなくして空気のような存在になれていたと言われている。

自分の内側を虚にして、個人の自我や欲求を越えて撮られた写真からは普遍的なものが読み手に伝わっていくのだろう。
そのためには読み手に委ねるための余白が必要でり、これはまさに俳句とも一致する。

https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163914190



また、写真の教科書(岡嶋和幸著)も基本的なピントとは何か、レンズを活かすためのフットワーク、光と構図など具体的な写真をもとに語られており
つい機能的なミラーレスのコンパクトカメラを手にしたいという欲望もある中、先ずはスマホでこれらの基本を身につけていく必要があると感じた。  同シリーズでカメラの教科書も出版されており、スマホにはない機能はあるもののカメラの基本を学ぶにはとてもいい内容である。

https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784844361237



また、先日、古本屋で「気づきの写真術」石井正彦著という新書をみつけてぱらぱらとめくって響くものがあったので購入した。
「いつも心に写真機を」、「世界はレンズを待っている」、「良い写真って何だろう」という見出しが心に止まった。著者もカメラを持った芭蕉としていつも新鮮な目で俳句と同じような感覚でレンズを向けているとのこと。
今の私の感覚ととても近いので共有させていただきました。

https://books.rakuten.co.jp/rb/1350798/


背景は青空冬のダリアかな

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